69話
瞬間移動を終えた俺たちはダンジョンの入口へ戻ってきた。
ダンジョンの主的なモンスターを倒してもダンジョンはこのままここに残り続けるのだろうか? 迷惑だな。モンスターがダンジョンから出てくるとかは知らんが、ここにずっとあることで危険が身近にあるって王都のやつらはならないのか? まあ、俺には関係ないことか。
「よっしゃ、ダンジョンからも脱出したことだしな、ギルド本部へ帰るか」
さっさと帰って報告しないと、俺のSランク冒険者昇格が一瞬でも遅くなってしまうのである。
「アスリーさん、なんだかシュウトお兄さんがさっきのことをなかったことにしてる気がしますけど……」
「そうですね。でも大丈夫ですよ、ネイスちゃん。私たちがシュウトの腕をつかんでることを忘れてはダメですよ。こっちが優勢ですからね」
「悪かったって、俺もつい出来心でやっちまっただけなんだ。ちょっと面白いかなとか思っちゃっただけなんだって。許してくれよ」
何もなかった感じを出していたが、俺の両腕は二人につかまれていたので明らかに無理でしたね。現在進行形で腕を拘束されている奴が何事もなかったかのように冒険者ギルドへ帰還するのはどう考えても不可能だったわ。
「アスリーさんこんなことを言ってますけどどうしましょうか? 同じ思いをしてほしいけど難しいんですよね」
「ネイスちゃん。諦めるのはまだ早いですよ。世の中には魔法を封じる便利なアイテムが存在していると聞いたことがあります。それを使用すればシュウトにも置いて行かれる側の気持ちをわからせてあげることができるはずです」
ちなみにこの作戦会議のようなものは俺をはさんで行われている。俺は自分がこれからどういう目にあわされるのか間近で聞かされながら待たされるという恐怖体験をしているのだ。まあ、瞬間移動を封じられたところで俺の移動速度はレベチだからな。特に問題はないんだろうな。
「そんな怖いことしようとするなよ。実際に置いて行った訳じゃねぇだろ。それは過剰すぎる制裁だ。断固抗議する」
「えー? シュウトお兄さんは私たちが帰るのに数時間かかるダンジョンに取り残されたと思ってどんな思いをしたかわからないよね? もう途方にくれるしかなかったんだから」
「そうです。腕を治して貰った後だったからまだ何とかなるかと思ったりもしたけれど、あそこからネイスちゃんと二人で戻るのは至難の技ですからね」
しつこすぎる。俺だって謝ってるじゃねぇか。それをこうもぐちぐちと、ここに置いて行ってやろうか……いや、腕をつかまれてるから無理だったわ。流石に腕を振り払ってまでして置いて行くのはやりすぎ感が漂っちまうな。
「アスリーは腕を治してやったんだからこれくらいは大目に見てくれよ。もう治らないって諦めモードだったのを治してやったんだぞ? 普通に俺は冒険者生命の恩人だと思わないか?」
「それはもちろんそうですけど、感謝はしていますよ? それを台無しにするほどのことをシュウタはしてしまったのです。とはいえ、今日のことはまたお礼をしますよ。だから、やり返しても問題ありませんよね?」
「わざわざお礼をされるようなことはしてねぇよ。俺にかかればあの程度の怪我なんて軽く治せる程度でしかなかったからな。まあ、俺と一緒に行動していたことに感謝してればいいさ」
これがもしアスリー一人で討伐に来ていたら、もっと大事になっていたことだろう。剣で戦うアスリーと魔法専門のあの骸骨ではかなり相性が悪かったはずだ。ギルドマスターも強い反応を検知したとこかどうのこうのいうだけでどんなモンスターがダンジョンの中にいるとかは何もわからないって言ってたし、相性の良し悪しなんて気にしてもしょうがないことだ。単に運が悪かっただけだろう。そうも言ってられないのがSランク冒険者なのかもしれないがな。
「それでは私の気がおさまりません。後日、しっかりお礼をさせていただきますから。そのためにもここでシュウトの罪を清算しておかねばなりません。後腐れのないようにしておかないといけませんから」
もうおかしいって、そこまで俺に感謝しているならば笑って許してくれていいところだろう。
さっきからしゃべれないネイスの方をチラッと見ると、何やら考え込んでいる様子だ。
「アスリーさん、私から提案があるんですけどいいですか?」
「どうしたのネイスちゃん。いい仕返しでも思いついたですか?」
「いいえ、アスリーさんがシュウトお兄さんに恩を返したいと思ってるなら、一緒にパーティを組んではどうかなと思ってですね。Sランク冒険者のアスリーさんとパーティが組めるなんてすごいことだなと」
なんで俺に恩を返すのにネイスが決めてるの?
「ちょっと待てよ、俺たちはこれが終わったらあの町へ戻るんだぞ? でもアスリーの活動拠点は王都なんだよな? どう考えても無理があるだろ」
「うーん……シュウトは王都にとどまらないといけなくなると思いますよ? 今は人手不足だってギルドマスターがいつも嘆いてますから。私はいつもソロで活動をしていたのでパーティを組むこと自体には問題はありませんね」
おいおい、それは聞いてねぇって。俺たちには借りたままにしている宿だってあるんだぞ? 王都にとどまれなんて横暴だ。




