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68話

 紫に変色してしまっていたアスリーの腕がみるみるうちに肌色を取り戻していく。適当に念じてみただけだが、案外いけてしまうのが俺のすごいところだろう。これで治っただろうな。


「腕が、私の腕が……さっきまで肘から先の感覚がなくなっていたのに……ありがとうございます、シュウト」


「まあ、俺にかかれば治しようのない怪我もちょちょいのちょいだわ、ガハハッ。Sランク冒険者は聞いてあきれるぜ」


「悔しいけど反論できない。今回ばかりは足を引っ張ってしまいました。ネイスちゃんも私の前に立ってくれててありがとうございます」


 そういえばネイスは俺の防護魔法をいいことにアスリーの盾として前に立ちふさがっていたな。あれ、危ないからやめてくれよな。


「あんな骸骨の攻撃何て防いでくれるって、私はシュウトお兄さんのことを信じてましたから。困ったときはお互い様ですよ」


「しっかり一回喰らって防げるか確認してただろ。しかも、あれわざと喰らったわけじゃないよな?」


「何のことかわからないや、私は防げるってわかったから当たってみただけだよ?」


 もう、そういうことでいいよ。二人して俺の後ろにいた癖に逃げ遅れただけじゃないか。ほんとこいつらは俺がやられてたら全滅していてもおかしくない状況だったってことを思い知った方がいいかもしれないな。もちろん、俺がいるから、絶対安全だったってのはあるんだけど。俺も、敵の攻撃をちょっと受けてみようなんて思わずに防いでおけばよかったのか。この前はドラゴンのブレスをよけて、後ろにいた二人に直撃させてるもんな。戦闘の際はもっと仲間の位置も頭に入れておいた方がいいかもな。


「とりあえず、これでおじさんからの試験はクリアってことでいいんだよな? もうここにはようはないだろ。さっさと王都に帰ろうぜ」


 念のため、骸骨を完全に葬ったか確認するために感知をしてみたが、周囲にそれらしい反応はなかったのでもう大丈夫そうだ。ダンジョン攻略っていうよりもただの討伐クエストって感じだったな。俺の瞬間移動あってのことなのだろうが、今度はもう少し不自由を楽しんでみるのもありかもな。


「私がこの目で討伐する瞬間を見届けたからもう大丈夫です。戻ってギルドマスターに報告すればシュウトもSランク冒険者の仲間入りですね」


「はあ……シュウトお兄さんばっかりずるいや。私だって、Sランク冒険者になりたいよ」


「ネイスちゃんも今後努力を続ければきっとSランク冒険者になれますよ。そんなに落ち込まないでください。まだ、冒険者になったばかりなのですから」


 思っていたよりも時間をかけてしまったが、これでこのダンジョンにも用はない。


「それじゃ、俺は先に瞬間移動で帰るから。後からゆっくり追いかけてきてくれ。さらば!!」


 シュッ。


 俺は瞬間移動で一人だけダンジョンの外へ脱出したと見せかけて、二人の後ろへ移動した。もちろん、気配は完全に断っているので気づかれることはないだろう。


「えーー!! うそでしょ。シュウトお兄さんが消えた!!」


「ちょっと待ってください。シュウトはいつもこんなことをしているのですか?」


「いや、置いて行かれたのは今回が初めてです。え? ええぇ!?」


 ネイスが面白いほどにパニックになっている。まさか俺が瞬間移動で一人帰るとは思いもしなかったのだろうな。一瞬の油断が命取りになるのだよ。でも、アスリーがそれほど驚いていないのがいただけないな。慌てて転んでくれたりしたら最高だったのに。


「どうしよう。帰ったらシュウトお兄さんを正座させるのは決定としても……ダンジョンって、ボスモンスターを倒したら勝手に入口に返してくれたりする便利な機能は備わってないですよね?」


「うーん、それはないでしょうね。厄介なことに、来るときにはシュウトの瞬間移動で全部ショートカットしてるので、まったく構造がわからないのですよ。私たちの力だけでこのダンジョンから帰ろうと思ったら短くみつもっても数時間はかかると思います」


 おうおう、ようやく俺のすごさがわかってきたか? 俺が居なかったらこのダンジョンは相当めんどくさいんだぞ? すべて、俺の感知と瞬間移動がなせる技なのだよ。


「そんなの無理だよぉ。絶対帰ったら説教してあげるんだから」


「是非私も参加させてください。夕飯は奢って貰いましょうね」


 このままじゃ、俺のご飯タイムがピンチだ。そろそろ悪ふざけをやめて出て行ってやろうかな。まだ冗談でしたで済まされるレベルだろう。


「わーー!!!」


「ひぃ!!」


「何事ですか!?」


 無駄に大声をあげ、後ろからおどかす。


 ネイスは完璧なリアクションだったが、アスリーの方は何とも可愛さに帰る反応だな。もう少し素直に驚けよ。


「二人とも俺が本当に帰ったと思っただろ。いくら何でもそんなことする訳ねぇじゃねぇか。ほら、さっさと帰るぞ」


「アスリーさん。これは本気で説教しなくちゃいけませんよね?」


「うん。でも、まずここから出てからにしましょうか」


 あれ? 何をそんな怒ってるんですか? 二人とも顔が怖いですよ。


 俺を逃がさないと言わんばかりに両方の腕をがっちりつかまれたまま、ダンジョンの入口へと瞬間移動した。

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