62話
「ここが王都で、地図のこの場所がダンジョンです。王都から少し歩きますが、どうしますか? シュウトの瞬間移動で移動できるのですか?」
「そういってるだろう。だがお前を一緒に連れて行ってやるとはまだ言ってないぞ。それ相応の誠意というものが必要だな。なぁ、ネイス」
俺がそういい、ネイスの方をみると、心底呆れたような顔でみられた。
「何言ってるの? そんな子供みたいなことしないで一緒に行かないとダメでしょ。おいて行くなんてしたらまたダンジョンの前で待つことになるよ?」
「フフッ、ネイスちゃんは本当にいい子ですね。シュウトも少しはネイスちゃんみたいにいい子なら、後輩として面倒を見てあげたのですが……残念です」
大きなお世話だ。誰がお前に面倒見てもらう必要があるんだよ。いくら俺の方が冒険者としては後輩だといっても年齢はほとんど一緒だろうが。
絶対に俺の方が強いはずだ。一度実力差を見せつけて俺のことを尊敬させてやろう。ダンジョンのモンスターがビックリするくらい強かったりしたら嬉しいな。しかもアスリーが倒せないレベルのモンスターだったら完璧だが、そんなモンスターはそうそう現れたりしないだろうな。
「そうだよ、シュウトお兄さん。アスリーさんに助けてもらえたらこれからの冒険者生活がどれだけ楽になると思ってるの?」
「別に関係ねぇよ。俺の勝手だ、今回はネイスに免じて一緒に連れて行ってやるよ。さあ、俺に抱きつけ」
別に抱きつく必要はないが、見た目は可愛いのでこれくらいは役得だろう。いや、流石に躊躇されるか。
「シュウトに触れていないとダメなのですか? 案外不便なのですね。はあ、仕方ありません。これでいいですか?」
それだけ言うと、アスリーはなんの躊躇いもなく正面から俺に抱きついてきた。
うわうわ、顔がちけぇって。無駄に身長が高いせいで、顔が俺の肩らへんに来ている。なんで俺が動揺しなくちゃいけないんだよ。普通逆だろうが。てか、こいつ鎧着てるせいで本来柔らかいであろう場所が無慈悲なまでに硬い。地味に損した気分になってしまう……。
「ああ!! なにアスリーさんをだましてるの!? 私の時は服をちょっと摘まむだけで大丈夫だったよね? これは問題行動だよ」
ネイスにはバレてしまうのはしょうがないな。少し怒られても別に気にならないし構わない。だまされるほうが悪いんだ。俺にもこれくらいのご褒美はあってしかるべきだ。
「ネイスちゃん。何を気にしているのですか? 早くこっちに来てください。置いて行かれてしまいますよ?」
「え? ちょっと待ってよぉーー」
アスリーの言葉にネイスも俺の右腕に抱きついてくる。うむ、こちらはしっかり柔らかいな。これぞ、鎧という無駄なもの着用しているかしていないかの差だ。
「それじゃあ、行くぞ」
俺は、いつものように集中し地図の場所を感知で探す。前回の王都への移動で狙った方向へ感知を広げるのもお手の物だ。ほんのひと時でダンジョンの場所を特定し、そのすぐ前へと座標を指定。瞬間移動を発動した。
シュッ。
「へぇ、これは便利な魔法ですね。シュウト以外の使い手は見たことがありません。これは素直に褒めてあげましょう」
瞬間移動が終わると、特に動揺した風もなく、アスリーは俺から離れた。
ネイスが初めて瞬間移動を体験したときはもっと驚いて可愛かったんだがな。こいつにそういうのを求めるのは間違っているか。
「終わった? やっぱりこの感覚は何度体験してもなれないよぉ。もう少し、体に優しく移動できないの?」
「そこまで求めるのは贅沢ってもんだろう。……うーん、そうだ。防護魔法をかけてから瞬間移動すればネイスにも負担はかからないんじゃねぇか? アスリーは特に何も影響がないみたいだし、もしかしたら単純に体の強さが関わってるかもしれないぞ?」
我ながら名案だ。豪華すぎるか、いや、ほかの奴らにそこまでしてやるつもりはさらさらないがネイスだししょうがないか。
「どうしたのですか? ネイスちゃん気分が悪いのですか?」
「大丈夫です。すぐに治るので気にしないでください。こんなところでまで足を引っ張るつもりはないですから」
いい子だな、ネイス。やっぱり次からは防護魔法で完璧に守ってあげてから瞬間移動を使うことにするか。
「無理は禁物ですが、ネイスちゃんがそう言うなら私が守ってあげましょう。しっかり私の後ろについてきてくださいね」
「ありがとうございます。でも、私にはシュウトお兄さんがいますから大丈夫です。防護魔法お願いしてもいいかな?」
上目づかいでそんなことを言われたら断るなんて選択肢が脳裏をよぎることさえない。
一瞬でネイスに防護魔法を付与する。
ピカピカとネイスの周囲が発光し、付与が完了する。
「これが先ほど言っていた付与魔法ですか? これほど簡単に付与できて言った通りの性能なのですか? にわかには信じられませんね」
「気になるならネイスに一撃お見舞いして見てもいいぞ。絶対に怪我一つ負わせられないと俺が保証してやろう」
「私が嫌だよ。アスリーさんはSランク冒険者なんだよ。そのこの前倒したドラゴンよりも格上なんだよ?」
まだ、そこまでの信頼は築けていなかったようだな。少し悲しいが、効果の程はおいおい見せてやろうか。それじゃあ、ダンジョン攻略としゃれ込むか。




