58話
Sランク冒険者をサポートにつけてくれるってことは、そいつの実力を確認できるってことか。現役のSランク冒険者とやらのすごさを見せてもらおうじゃないか。
「それでおじさん。俺に同行してくれるっていうSランク冒険者ってのはどこにいるんだ? ここには呼んでないようだけど」
「後で紹介するから、そう焦る必要はない。さっきも言ったことだが現在は人員不足でな。シュウトにもできるだけ早くこのテストを終わらせてほしい。君には特別な移動手段があるのだろう?」
瞬間移動のことか。そういえばさっきおばさんには説明仕様としたけど、後にしてくれって言われたんだったな。
「瞬間移動だ。俺は自由に好きな場所へ行き来できるんだ。場所させ教えてもらえれば壊滅した町にだって一瞬でいけるぞ」
「ある程度とんでもない魔法が来るとは予想していたが、まさか瞬間移動なんて馬鹿げた魔法が飛び出してくるとはな。一体どこでそんな魔法を取得したんだい? 皆目見当もつかない」
普段馬で移動しているような人たちからしてみれば俺の瞬間移動は化け物じみているかもしれないな。
しかし、どうやって習得したかと聞かれても、使おうと思ったら使えたとしか答えられないんだよなぁ。適当に誤魔化しとくか。
「俺の実家に伝わる秘伝の魔法なんだ、詳しいことは教えてやれないな。まあ、教えたところで俺以外に使いこなすことはできないと思うがな」
秘技、実家の秘伝!! これで誰も追及することができなくなる。一子相伝とかもっと盛大に持っておけばさらに効果は増していただろうが、今回はこの程度で勘弁してやろう。
「ふむ、そうか。シュウトはその瞬間移動という魔法だけでも計り知れない価値を持っているな。Sランク冒険者にして前線に出すには惜しい位だ。後方支援の方が合ってるんじゃないか?」
「それは俺の戦闘能力が低かったらの場合だろう? 俺はどんなモンスター相手にでも負けない程の能力を持ってるからな。どこにでも一瞬で移動できる最強の冒険者なんだよ。むしろ、ほとんどのモンスターは俺一人いれば事足りるな」
さっき冒険者カードを見せてやったってのに、寝ぼけたこと言いやがって。俺が後方支援なんてするわけないだろうが。宝の持ち腐れにもほどある。せっかくの俺という戦力を後方で待機させておくことは人類の損失でしかない。
「一応、私もシュウトお兄さんがドラゴンを倒してるのを見てますからね。実力は相当なものだと思いますよ。重力魔法でぺしゃんこにしちゃってましたから」
「重力魔法か、モンスターを押しつぶすことができるほどの使い手は俺も聞いたこともないな。これも是非機会があれば拝見させてほしいな。で? ほかにも魔法のレパートリーはあるのか?」
「逆に使えない魔法がないくらいだな。一度みればまあ、使えるだろう」
これは決して適当に言っているわけじゃない。実際に俺は使おうと思って使用できなかった魔法なんて一つもないし、できなかったことも何一つとして存在しない。故に俺に不可能はないのだ。
「ハハッ、こいつは大きく出たな。聞いたか? ボメリ。君はいくつ魔法を使えたっけ?」
「私で200程度でしょうね。これでも人類最高レベルの魔導士として名をはせたつもりでしたけど、まさか使えない魔法はない人が現れるとは予想外ですね。試しに私が使った魔法をコピーしてもらいましょうか、マスター?」
「やめてくれ、こんな部屋で使えるような魔法、君にはないだろう? 簡単な魔法をコピーしても意味はないからな。これはアスリーに任せるとしよう。シュウトがどんな魔法を使ってモンスターを討伐してくれるのか今から楽しみで仕方ないな」
二人で盛り上がってるところ悪いんだが、そんな大量の魔法を使う機会なんてないと思うんだが……どうせ今回のモンスターも一発で仕留めて終わりだ。披露することができる魔法は一つということになるな。
「アスリーが魔導士じゃなくて残念だな。シュウト、君に同行するSランク冒険者は王国最強の剣士と名高い子だ。歳も君と同じくらいだろう。才能溢れるいい子だ。もし危なくなってもすぐに助けてくれるだろう」
へぇ。最強の剣士と来たか。そりゃ楽しみだな。近接戦闘最強クラスの冒険者ということか。それも俺と同年代で。思わず才能に嫉妬しちまいそうだ。俺もじじいの強化がなければただの一般人だったからな。
「Sランク冒険者の中での強さはどれくらいだ? 何人いるか知らないが最強っていうくらいだ、もしかして一番か?」
「中堅ってところだろうな。彼女は強いがまだ若い。これから伸びていけばもしかするとSランク冒険者の頂点まで昇り詰める可能性もあるかも知れないな」
まだ上がいるってことか。まあ、一番強いやつを調査に行かせないでここで待機させておくのもおかしなことだ。ほかの奴らについてはまた今度聞けばいいか。
「それじゃあ、モンスターが居るっていう場所を教えてくれ。すぐに行って倒してくるから。五分もあれば戻ってくる」
「ちょっと待て。まだ、アスリーが来ていないだろう。君があまりにも早く到着したから急いで呼び出しているところだ。もう少し待ってくれ」
まさかこんなところに思わぬ落とし穴があったとは。逆に早く来すぎて待たされるパターンだ。開店前から並んでしまった客の気分だぜ。
「ったく、しょうがないな。少しだけ待ってやるよ」
こんなことになるんだったらネイスの言う通り早くいくなんて言わずに王都で観光でもすればよかった。




