56話
「まさか本当に今日中に来るとは思ってなかったわ。どんな魔法を使ったのかしら? 興味深いわね」
「うん? ああ、瞬間移動を使っただけだ。どんな距離でも一瞬で移動できる優れモノだぞ」
「ごめんなさい。理解が追いつかないわ。また、後でギルドマスターも交えて説明してもらえると助かるわ」
これが普通の反応なのだろうか? それよりも問題なのはここでもギルドマスターという呼び方についてだ。俺の中でギルドマスターと言えばあのおじさんのことなのだ。混ざって混乱してしまう。もっと別の言い方はないのかよ。本部のギルドマスターっていちいち言うのもおかしいし、冒険者ギルドで一番偉い人なんだろう? 何か特別な呼び方で呼ばれるようにしとけよ。
「この部屋よ。さあ、入ってちょうだい」
おばさんに案内され部屋へと入る。
シュン!!
かなりのスピードで振るわれた剣が俺の目の前で寸止めされた。
「なんだこれ? もしかして俺の実力を試そうとか考えてたりするのか? もちろん、俺もやり返して構わないよな」
内心少しビビったが、動揺を隠しながらそう答える。
いきなり何てことするんだよ、完全に油断してたわ。スピード自体は別によけられないことなどなかったのだが、もろにくらったところで剣のほうがダメになるだろうしよけなかったが普通にビックリしたぞ。
「タイムタイム。何も本気でやりあおうって訳じゃないぞ。俺の剣を真正面から受けて目も瞑らないとはな。やるじゃないかシュウト」
俺に剣を向けてきたおじさんがやる気はないアピールをしてくるが、一発お返ししてやりたい気分なんだよなぁ。でもネイスに怒られるかな。
なんかなれなれしいのがうざいなこのおじさん。いきなり呼び捨てにしてくるとは。
「あんたがギルドマスターか? 気合いの入った挨拶だな」
「そう怒りなさんな。俺もシュウタを試しておかないといけないんだ。これくらいのことはわかってくれないかね。ひとまず第一段階はクリアということだ。おめでとう」
「今の私だったら死んでましたよ。危ないです」
いやネイスが先に入ってたらギルドマスターも仕掛けて来なかっただろ。それくらいは考えてくれてると信じたいな。それに寸止めだったじゃないか。
「この子は誰だい? ……確か二人で来るってあいつが言ってたか。お嬢ちゃんは付き人ってところかな?」
「私はシュウトお兄さんのパーティーメンバーのネイスです。一緒にクエストをこなし来た仲間ですよ。付き人なんかじゃありません!!」
そうだな、一応一緒にクエストをクリアしてきたもんな。最初のリザードマンなんかの時は結構頑張ってたし。
「マスター、そろそろ本題に入りましょう。はるばる王都まで来てもらってるのよ」
「すまない、ボメリ。俺もついついからかいたくなっちまうんだ。聞いてるだろボメリも、シュウトは過去に前例がないほどの能力値を叩きだした男なんだぞ。一体どんな奴か試したくなる気もわかってくれよ」
試すためにしたことだから許せと? せめてちゃんと謝れよ。何がすまないだ。
「シュウトお兄さん、なんだか顔が怖いよ。そんなに怒らないで、ギルドマスターも悪いと思ってるみたいだからさ」
「どうだか、第一印象は最悪だな」
俺が以前のままの気性だったら王都はすでに地図から消えているところだ。ネイスに感謝しとけよ。
「それで? 俺をSランク冒険者にしてくれるんだよな。条件って何なんだよ」
「それより先に冒険者カードを確認させてくれないか? 俺も一応この目で見ておきたいからな」
まあ、実際に見て貰ったほうが口で説明するよりも早く済むか。
大ギルドマスターに俺の冒険者カードを渡した。
「ハハハハハッ!! こいつを見てみろよボメリ、出鱈目だぜこりゃ。完全に人間をやめてやがる」
「何なのこれ。いくつSをつければ気が済むのかしらね。この能力ならSランク危険度のモンスターを討伐したって言うのも頷けるわ」
すごい嬉しそうに話してるな。おじさんなんて無茶苦茶笑顔だぞ。でも、おばさんのほうは普通に引いてるような気もするな。そうだ、大ギルドマスターとか長いからおじさんでいいやこいつなんか。
「納得したかおじさん」
「おう? おじさんってのは俺のことか? ハハッ、俺におじさんなんて言ってきた奴はシュウタが初めてだ。これでも俺もボメリも元Sランク冒険者なんだぜ?」
「へぇ、そいつはすげぇ。せっかくだし俺の実力を測るついでに勝負しないか?」
元Sランク冒険者か、通りでやたら強いエネルギーを発しているわけだ。俺が見てきた人間の中ではダントツで最強だなこの二人は。いや、受付のお姉さんも負けてないかも。いつも俺の背後を簡単に取ってたしな。
「やめておく。ギルドマスターとしての威厳を損ねかねないからな。シュウタには別の方法で実力を証明してもらう予定だ」
実力は測るのかよ。用はこのテストに合格することができればSランク冒険者になれるということか。サクッと終わらせてマイ宿に帰るとするか。目にものを見せてやるからな。




