55話
冒険者ギルドの本部というだけあって、冒険者の数がとてつもない。俺たちが今までいた町のギルドでも冒険者たちで賑わっていたが比じゃないなこりゃ。それに、ちらほらとマシな奴らがいるのが気になる。おそらくAランチ以上の冒険者なんだろう。冒険者たちの質も高そうだ。
「すごいね、シュウトお兄さん。一階だけじゃなくて二階もあるよ。受付もたくさんある」
「あんまりはしゃぐなよ。田舎者だと思われるだろ。自重しろよ」
ネイスがはしゃぐ気持ちも少しはわかるが、ここにいる奴らに田舎者だと侮られるのは癪に触る。
しかしまあ、何と豪華な建物なんだろうか。外からの時点で金がかかってそうだということはわかっていたが中に入るとよりすごいな。
こんなに豪華な建物をたててるぐらいだし、俺は一つの町を壊滅する危機から救ったんだ、ギルドの本部から特別報酬とか貰えても別に構わないんじゃないだろうか? まあ、これ以上金を貰ったところで使い道に困っちまうんだろうけどな。もういっそ宿をやめてマイホームでも購入するか。いや、でも今の宿の飯かなり気に入ってるんだよなぁ。悩ましい。
「シュウトお兄さん、どこに行けばいいの? 受付で聞いてみたらわかるかな?」
失念してたぜ、ギルドマスターに着いたらどこに行けばいいか聞いておくんだった。受付の人まで俺のことを聞いてたりするのか?
「そうだな。とりあえずそうするしかないよな。面倒だが、受付で聞いてみるか」
こんな時いつものお姉さんなら背後から背中をツンツンしてきてくれるんだろうが生憎ここにはあのお姉さんはいないからな。
受付に並ぶ時間を最小限に抑えるために俺たちは一番列が短い受付の列に並ぶことにした。
今来たばかりなのでどの列がなんの業務を担っているかもわからないのが不安だが、どこで聞いても同じことだろうし、気にしてもしょうがない。
「ギルドマスターが今日行くって言ってくれたみたいだし、話が伝わってるといいんだけど……」
「俺たちが向こうを出発してどれくらい時間たってるんだ? まだ一時間とかだよな? そんなすぐに全員に情報が共有されるもんかな」
「難しいかもしれないね。それにシュウトお兄さんのことはあまり大人数に伝えるべきことじゃないよね」
知らないって言われたら本部のギルドマスターの部屋に案内してもらえるよう聞いてみるしかないな。
「お疲れ様です。冒険者カードの提示をお願いします。今回はどういった理由でクエストをリタイヤするのでしょうか?」
「え? リタイヤ何のことだ?」
やっと俺たちの順番が回ってきたと思うと、受付のお姉さんからクエストのリタイヤについて質問された。
「あら? ここはクエストを途中でリタイヤするための窓口ですよ。もしかして間違えて並びましたか?」
「悪いな。さっき着いたばかりでどこに並べばいいかわからなかったんだ」
「そうでしたか、通りで初めて見る顔な訳ですね。それでどういったご用件でしょうか?」
この人全員の顔を覚えてるんだろうか? いやいや、俺が見ただけでも相当な人数がいたしそりゃないか。ぼんやりと見たことある顔だなとかそういうレベルだろうな。
「冒険者ギルドの本部から呼び出しをくらっててな。今日はそれで来たって訳だ。シュウトって言うんだけど何か話を聞いてたりしないか?」
「シュウトさんですか? うーん……直近で誰かが訪ねて来るという話は聞いてないですね。確か、一週間後くらいに誰かが来るって言う話は聞いてるのですが」
やっぱり知らないか。でも一週間後位って言うのは俺たちが普通の移動手段できた時の日数位じゃないんだろうか。
「ギルドマスターの部屋に案内してくれ。そっちには話が言ってるはずだ」
「わかりました。確認してまいりますので少しお待ちください」
そういうとお姉さんは受付から姿を消した。
「伝わってなかったね。でも、これで大丈夫そうで安心したよ」
「ああ、本部のギルドマスターには話がついてるはずだしな。ネイスはついてきたらダメだって言われたらおとなしく待ってるんだぞ」
「ええ!! そんのずるいよ。私も絶対ついて行くんだからね。シュウトお兄さんと私はパーティーなんだから」
そんなことで一緒にいけるとは思えないんだが、まあ、初めてきた場所に一人取り残されるのが不安だって言う気持ちはわからなくもない。俺も少しくらいは聞いてみてやろう。
「すいません、お待たせしました。ボメリさんこちらの方々です」
ただでさえ、クエストをリタイヤしないといけないという状況なのにさらに列が進まなくてイライラしだしている冒険者たちの視線が痛くなってきたタイミングでお姉さんは戻ってきた。
「貴方がシュウトさんね。私はボメリ、ギルドマスターの秘書のような仕事をしています。案内するのでこちらへ」
「へえ、よろしく」
受付のお姉さんが連れてきたボメリというおばさんに案内され俺たちはギルドマスターの部屋へと向かった。
行く途中、お姉さんが大して誰も並んでいなかったはずの列が俺たちのせいで無駄に長くなっており、忙しそうに対応しているのが目に入った。ちょっと申し訳ないことをしてしまったな。頑張ってくれ。




