54話
流石に人が多いな。これが王都か。心なしか通りを歩いている人たちも活気に満ちている気がする。何というか雰囲気が明るいな。
「うわぁ、すごい人だよ。私がいた町じゃこんなの考えられないよ」
「何て言ったって王都だもんな。国の中心なんだから必然的に人も集まってくるだろうさ」
でもこれじゃあ、誰かの後をついて行く作戦は使えないな。ネイスの勘も役に立つかわからないし、どうしようか。
「どうやって冒険者ギルドの本部へ行けばいいんだよ。ギルドマスターに詳しい位置を聞いとけばよかったな。一回、瞬間移動で聞きに戻ってもいいか?」
「こんな人通りの多いところで使ったら人がいきなり消えたって騒ぎになりかねないよ。やめておいた方がいいと思うな。それに、誰かに聞けばきっと教えてくれるよ」
いくら俺でもここで使おうとは思ってなかったんだけどな。
目の前を歩いていた人が突然消えたらそりゃビックリもするわな。俺でも動揺しない自信はないな。何事かと思うわ。
「金があるから、何か食べ歩きできるようなものを買うついでに聞いてみるって言うのはどうだ? 俺は聞かないからネイスに任せるけど」
「お昼にはちょっと早いから食べ物は遠慮しときたいかも。今食べちゃったらお昼食べれなくなっちゃうよ」
「それじゃ、適当な人に聞いてみるしかないか。それかあえて誰にも聞かずに探してみるか? いい暇つぶしになると思うんだがどうだ?」
「シュウトお兄さんが途中でめんどくさいとか言わないなら私はそれでもいいよ。せっかく王都に来たんだし、いろいろ見て回りたいしね」
俺がすぐに文句をいう奴みたいに言うのやめろよな。本当にめんどくさいと感じているとき以外は文句何て言わないぞ。
「わかった。大丈夫だ。今回は何も言わないって誓おう」
ネイスにそう宣言し、俺たちはいつも通りネイスの勘を頼りに冒険者ギルドの本部を探して歩き始めた。
「冒険者ギルドの本部って言うくらいだから相当大きい建物だと思うんだよね。大きい建物が門のすぐ近くにあるとは思えないからきっと中心の方だと思うな」
「いい推理だ。おおむね同意見だ。最初は中の方へ向かって歩いてみるか」
適当にネイスの意見に同意し、王都を中へ中へと進んでいく。
通りにはたくさんの屋台が出ていて、食材やサッと食べられるような料理、装飾品など様々なものが売られている。いいにおいがしてくるものだから毎度足を止めそうになるのをグッとこらえて進む。
空腹を感じない体でよかった。これで腹減ってたりしたら匂いにつられて引き寄せられていたところだな。
「おいしそうな匂いが漂って来るね。誘惑が多くてつらいよ」
ネイスも誘惑と戦っているみたいだな。俺は耐えられるが、つい先日までスラムという過酷な状況で過ごしてきたネイスには食に対する誘惑はかなり刺さってそうだな。
「後で昼飯食うんだろ。我慢しろよ」
「わかってるよぉ。でもいいにおいがしてくるんだもん。少しくらいつられちゃうのはしょうがないと思うな」
屋台に寄りたいとか言い出さないだけましか。俺が同じ状況だったら我慢できそうもないからな。
少し進んでいくと大きい建物が立ち並ぶ通りへとやってきた。
「ここはなんだか怪しくないか? このあたりに冒険者ギルドの本部ありそうだぞ」
「これはなんの建物なんだろうね。あれ? あそこ見てみて」
ネイスが指さした方向を見ると、一際大きい建物がそびえ建っていた。
少し遠いが俺の視力なら問題なく看板も読めるな。
冒険者ギルドって書いてあるじゃねぇか。やるなネイス。読み通りじゃないか。
「あれが冒険者ギルドの本部みたいだな。ネイスには見えてるかわからないけど看板がある。お手柄だな」
「ふふふ、やっぱり私の勘は当たるんだよ。今回は勘というよりも考えてみた結果みたいなところはあるけどね。思ったよりもすぐ見つかっちゃったね」
「別にいいだろ。どうせ、中に入ってからまた話をしないといけないんだ。時間もかかるだろ。できれば昼飯を食う時間には終わらせてほしいところだな」
冒険者ギルドを見つけてしまったので、もうそこへ向かって歩くだけだ。まっすぐの道なのでもう迷うこともない。
「冒険者ギルドの本部だから、もしかしてSランク冒険者の人たちもいたりするのかな? 一回会ってみたいかも」
「Sランク冒険者くらいいるだろ。王都なんだぞここは。活動拠点をここにおいている冒険者は多そうだけどな。とりあえず行ってみればわかるだろ」
Sランク冒険者か、俺もどの程度の実力か見てみたいところだ。せめて、ドラゴンよりも強くあってほしいな。人類最高戦力みたいなもんだろうし、大したことないなんて悲しいもんな。
目の前までやってくると遠くからでもわかる程の大きさが余計に大きく見える。
俺たちが通っていた冒険者ギルドの倍以上いや、そんなレベルじゃないな。こりゃ中も広そうだ。
「流石冒険者ギルドの本部だね。圧巻だよ。儲かってる証拠だね」
「羨ましい限りだな。俺にも分けてほしいくらいだ。まあ、とりあえず中に入るか」
期待を膨らませながら俺たちはギルド本部の中へ入っていった。




