44話
絶賛帰り道の途中だが、今回の緊急クエストに参加したほかの冒険者たちは完全にへばってしまっていた。
最初こそ、俺やギルドマスターに絡んできていたのだが、少し歩いたくらいから急に静かになり、今では一言もしゃべらない歩くだけの機械へとなり果てている。
「ネイスが無駄に盛り上げるからだぞ。こいつら全員疲れ切ってるじゃねぇか。これじゃモンスターに襲われた時俺が対処するしかなくなってるねぇかよ」
「あれはしょうがないよ。あの状況で盛り上がらないなんて無理に決まってる。町が滅ぶかもしれないほどのモンスターをシュウトお兄さんは倒したんだよ? そんなの冒険者の人たちも興奮するよ。なんてったって、Sランク級のモンスターだったんだから」
でもあいつを倒せるような人間が俺のほかにいるのか? 俺が生命力感知でかなり広範囲を探ったがドラゴンよりも強い反応何てなかった気がするんだが……いやいや、あの程度のモンスターが倒せないようじゃとっくの昔に人類滅びてるよな。俺もまだ見ぬSランク冒険者たちはもっと強いことを期待しておこう。
「てことは俺はSランク冒険者なるのか? ちょっと出世が早すぎてどうかと思うんだが、いざこうなるとリザードマンみたいな雑魚モンスターを狩って小銭を稼いで生活していくのも割と楽しかったんじゃねぇかとか思っちまうな」
「お金は持ってるに越したことはないよ。でも、これでSランク冒険者になれるかは微妙だと思うな。だって、今回はシュウトお兄さんは身分を隠して討伐したんだよ? それじゃ、シュウトとしてSランク冒険者にならなくちゃいけないよ? 」
「言われてみればそうだったな。まあ、ギルドマスターは俺のこと知ってるし、Aランク冒険者くらいにはしてくれるだろ」
目立つのを避けるのとほかの冒険者たちの不安感をなくすために身分を偽ったわけだが功績を上げたときのことまで考えていなかったな。ドラゴンなんて倒せて当たり前だからな。そこまで頭が回らなかったんだろうな。
瞬間移動で帰りたいという気持ちを何とか抑えてやっとの思いで俺たちは町へと戻ってきた。
実に往復で12時間は要しただろう。これもこいつらのペースに合わせていたせいなんだよな。俺一人だったら5分くらいで終わったことに一日のほとんどの時間を割いたと思うと複雑な気分だ。
「みな、お連れであったな。これからの事後処理は我々冒険者ギルドに任せて今日のところはゆっくりと休んでくれ。また明日報酬について話そう。では、緊急クエストにはこれにて完了だ」
「「「「おおぉぉーー」」」」
これまでは大歓声を上げていたはずなのに、声がまったく出ていないな。ここで元気を取り戻すこともできないほどに疲れているのか。まあ、道中山登りに加えてモンスターの討伐もしてたもんな。体力が普通の人間にはかなりこたえるだろう。
「これでやっとすべて終わりだね。うう、明日の報酬が待ち遠しいよ。私も結構活躍したから、かなり期待しててもいいよね?」
「どこでネイスが活躍したんだよ。ドラゴンと戦って泣いてただけじゃねぇか。それと、ドラゴンの魔石を持ち帰ったぐらいか? モンスター一体も倒してないよな?」
「私だって頑張ったよ。ドラゴンとの戦闘にも参加してたよね。あれは泣いてないって言ってるでしょ。炎を熱さのせいなんだから!! 私だって役に立ったんだからね」
このやりとり早くも二回目だな。そんなに泣いてたのは認めたくないのか。でも、まあ、ネイスが居なかったら俺はこの緊急クエストには参加していないしそこは評価されるべきなのか? いや、そんなこと冒険者ギルドからすれば関係ねぇか。
「今日はほんとにご苦労だったシュウト君。君にはたっぷり報酬を用意するからね。明日もしっかり冒険者ギルドに来てくれよ。それと、私が腰をぬかしてたことはトップシークレットで頼むよ。これでもギルドマスターとしての立場があるからね。それじゃあ」
「ああ、わかったよ。また明日楽しみにしとく」
魔石を回収に来ていた冒険者ギルドの職員たちと共にギルドマスターも町の中へと消えていった。
これで俺はギルドマスターに何個も貸しを作ったことになるな。何か起きたときは今日の話で脅して助けてもらうとするか。
「私たちも帰ろうよ。もうみんないなくなっちゃったよ。はあ、お腹空いちゃった。帰ってすぐにご飯食べないともう持たないよ」
「そうだな。今日は宿の飯を食って風呂に入ってすぐ寝るとするか」
俺たちも今日はどこにもよらずにまっすぐ宿に向かうことにした。
飯と風呂を済ませ、俺たちは部屋へと戻った。
「はあ、今日はほんとに疲れたね。まさか緊急クエストが発令されて参加することになるなんて夢にも思わなかったよ。昨日までの私が今の私を見たらどう思うかな? 死を覚悟してのにこんなにいろいろな体験ができるなんてほんとに最高だよ」
「俺に感謝しろよ。おっと、そうだ。臨時収入は入ることだし明日はパーっと金を使ってやるか。ネイスは何かほしいものとかあるか?」
「うーん、服はこの一着しかないからもうちょっとほしいかも。でも、私は別に一着でもいいから。シュウトお兄さんが好きなように使ってよ」
俺も服はもっておきたいからついでにネイスの分も買ってやるか。一着でずっと過ごすなんて無理だしな。
「そういえば今日はお金貰えなかったね。危なかったよ。昨日服もただで貰えてたからよかったけど服のお金も払ってたら今日泊まるお金が足りてなかったね。それに、一人部屋にしてよかったよ」
「ほんとだな。金が足りなくて後払いで泊めてくれるか交渉する羽目になるところだったな。ネイスの運のよさのおかげだ」
「そんな褒めても何もあげないよ。というか何も持ってないけどね」
他愛ない会話をしてすぐに眠りについた。




