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42話

 別に俺の意図を汲み取った訳ではないのだろうが、ドラゴンがこちらに向かってブレスをかまして来ようとしていた。

 口を大きく開け、そこに炎が集まっていくのがわかる。


 どういう原理になってるんだろうなあれ。炎を体の中から生成している感じでもないし、周りから集めているといった方が近い気がする。魔法の一種なのか? モンスターが魔法なんて使えるわけもないと思っていたが、魔法に近いものならできるということだな。


「いいじゃねぇか。開幕一撃目の攻撃としちゃ悪くねぇ」


 ゴォォォォーーー!!!!


 ドラゴンが放った爆炎はまっすぐに俺に向かって飛んできた。


 しかし、致命的な程に速度が足りていない。これじゃよけてくれといわんばかりだ。ここは、喰らってやってもよかったのだが、これを喰らうのはあまりにダサい。


「よっと」


 大きくジャンプをし、炎を回避する。


 ――直後、寸前まで俺が立っていた場所が炎に包まれる。


「うおぉぉぉーーーー!!!」


「きやぁぁぁーーーー!!!」


 燃え盛る炎を中から聞き覚えのある悲鳴が聞こえた。


 しまった……俺は簡単によけられたが、ギルドマスターとネイスには無理だったか。完全に失念していた。マジかよ。この炎の中じゃ二人とも丸焦げだ……よくもネイスを、俺が助けた労力を無駄にしやがって!! このくそトカゲが絶対に許さん。


 俺はジャンプで飛び上がったまま、空中に浮遊した。

 そこから、ドラゴンへ狙いをつけ、重力魔法を展開した。


「ガガァァァーー!!!」


 上から押しつぶされる感覚がわかったのだろう。ドラゴンは断末魔を上げ、ぐしゃりと潰れた。


 今の一瞬でドラゴンにかかったGは100程度だろうか。自分の体重の100倍の質量に潰されたのだ、苦しむ間もなく一瞬だっただろう。もっと、苦しめて殺してやってもよかったが、モンスターを苦しめたところで俺の気持ちが晴れるわけもない。


「ネイス、ギルドマスター、お前らのことは忘れねぇからな。きっちり敵を取ってやったぜ。ああ、くそ。俺の防護魔法を……うん? そうだ。あの二人には俺が防護魔法をかけてたんだ!! それなら、あれくらいの炎で死ぬはずがない」


 俺はいまだ燃え盛る炎の元へ急いで近づいた。


「きゃぁーー!! 助けて!! シュウトお兄さん!! 炎で何も見えないよぉ」


「焦るんじゃないネイス君。幸い私たちはシュウト君の防護魔法のおかげで無事だ。この炎の中からさえ出てしまえば助かる」


 ネイスとギルドマスターが炎の中でもがいている声が聞こえてきた。


 ふっ、俺はこうなることも見越して二人に防護魔法をかけておいたのだ。しかし、危なかったな。もし防護魔法をかけていなかったら二人は間違いなく丸焦げでお陀仏だった。


「外では何が起きてるの!? おっきな音がしてから静かになったけど大丈夫? もう駄目だよぉ。私このまま死んじゃうんだ……」


「シュウト君を信じるんだ。あれほどの魔力の持ち主がそう簡単にやられるわけがない。きっとドラゴンを倒して私たちのことも助けてくれるはずだ」


 なんだか、二人の会話を聞いてるのも楽しいかもしれないな。本当に外の状況が見えていないようだ。既にドラゴンはぺしゃんこの肉塊と化している。跡形もなく消し去りたかったが、高威力の魔法を放つとこの山自体がもたないからな。


 そろそろ助けてやるか。

 俺がパチンと指を鳴らしたら目の前で燃え盛っていた炎は何もなかったかの如くきれいさっぱり消えてしまった。


 中から、座り込んで泣いているネイスと四つん這いになり、どうにか炎を中から抜け出そうとしているギルドマスターが現れた。


「二人とも大丈夫だったか? わりぃな。後ろに二人がいるのを忘れてて普通によけちまったよ」


 急に炎が消えたのがまだ飲み込めていないらしく、二人は目をパチクリさせながら周囲を見渡している。


「うわーーん!! シュウトお兄さーーん!!」


 俺の姿を見つけたネイスが泣きながら抱きついてきた。

 おいおい、そんなに怖かったのかよ。まあ、いくら何ともないとはいえ、炎に飲み込まれるような体験は俺もできればしたくないな。


「悪かったって、早く泣き止んでくれよ。ほら、今日は大量に報酬が入るから、町で美味いものたらふく食わしてやるから」


「え? ほんとに? ぐす……でもそれくらいじゃまだ許さないからね。ほんとうに怖かったんだから。あれ? ドラゴンはどこに行ったの?」


「ああ、それならそこでぺしゃんこになってるのがそうだぞ。我ながら少し大人げないことをしてしまったかもしれないな」


 腰が抜けているのかまだ四つん這いのままのギルドマスターとネイスが俺から離れ、ドラゴンだった肉塊の元を確認しに向かった。


「一体これは? シュウト君がやったんだよね? まさか魔法かい?」


「魔法で上から押しつぶしたんだ。あっけなったなた」


「まったく君はさっきの魔力といい、この魔法といい規格外にも程があるんじゃないかい?」


「俺の力はまだこんなもんじゃねぇぞ。今度はもっと強いモンスターを用意しておくんだな」


 戦闘も終わり、ひと段落だな。

 俺たちはドラゴンの魔石を拾い、山頂を後にした。

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