41話
「おい、ギルドマスター大丈夫かよ。どんどん顔色が悪くなってるぞ」
「すまないね。私にはこの魔力はどうやら耐えられそうにもない。皆の前でかっこつけて出てきてこのざまか。本当に歳は取りたくないものだ」
「大丈夫ですか? なんならシュウトお兄さんに防護魔法をかけてもらえまいいんじゃないですか?」
若いころなら大丈夫でしたアピールとかダサいからするなよ。
ネイスの奴いらんこと言いやがって。防護魔法をポンポンかけてたら俺の魔法のありがたみが薄れるじゃねぇか。まあ、ここでギルドマスターを放置しておくわけにはいかないだろうし、かけてやるしかないのか。俺としてはここでギルドマスターがへばろうが何も関係はないのにな。
「しょうがねぇな。後で追加報酬貰うからな。ほらよ」
俺がギルドマスターへ防護魔法をかける。
ギルドマスターの張り付くように光が現れ、吸収されるように消えていった。
「なんだいこれは? さっきまでのつらさが嘘のようになくなった。まったく魔力の不快感を感じないぞ」
「俺の魔法にドラゴンごときに魔力が貫通するわけないだろうが。もうギルドマスターもドラゴンの攻撃を受けても平気だぞ」
「ありがとう。これで私も少しは役にたてそうだ。援護射撃程度の魔法は使えるから安心してドラゴンとの戦闘に挑んでくれ」
援護射撃の必要性を感じないな。どうせ、大したダメージも与えられないだろうし。
しかし、山頂に近づくに連れて、周囲の景色が淀んでいるように感じる。
何というか空気が重いというか。これがドラゴンの魔力の影響なんだろうな。俺も常に魔力を垂れ流しにしてたらこんなこともできるんだろうか? 今度誰もいない山奥で実験してみよう。
「もうすぐだな。とりあえず俺が先行するから二人は後についてきてくれ」
「ああ、シュウト君に任せる」
「うん、シュウトお兄さんについて行くよ。私の魔法も必要だったらいつでも言ってね」
俺の感知によると、この先にドラゴンの反応があり、少し開けた場所になっている。戦うには持って来いの場所だな。
俺は一切の躊躇もなくドラゴンが待つ山頂へ坂を登り終えた。
そこには俺が想像していたドラゴンよりも禍々しいオーラを放つものが存在していた。
俺の想像だと蛇のように長い龍を想像していたが、こいつは羽が生えて四足歩行タイプのようだな。それに、鱗が真っ黒に染まっていて、普通のドラゴンではないかのような風貌だ。
「ふーん、見てくれは悪くねぇじゃん。強そうな雰囲気は出てるぞ」
「なんだあのドラゴンは!? あんなどす黒い鱗に包まれているドラゴンなんて聞いたことがない。気を付けてくれシュウト君。どうやらあいつは強化種かもしれないぞ。危険度は優にSランクを超えている。くっ、こんなモンスターを昨日冒険者になったばかりのシュウト君に任せなければならないなんて流石に……わが身の力不足が憎い」
ますますいいじゃねぇか。強化種だって? じじいの討伐命令の水準もクリアしていることだろう。でもあのドラゴン結構カッコいいな。見た感じからして強そうだし、倒して俺のペットにでもするか? なんかテイム系の魔法作ってみようかな。
「ガアァァァーーーーー!!!!」
俺たちの存在に気が付いたのかとんでもない咆哮をこっちに向かって浴びせてきた。
うるせぇなぁ。やっぱり飼うのはやめよう。散歩するときにこの鳴き声を出されたら俺の耳がもたない。もう少しおとなしい奴にしよう。俺の最強ペット発掘計画は少しお預けだな。
「なんて圧力だ。シュウト君の防護魔法がなかったらと思うとぞっとする」
「びっくりしたぁ!! やばいよ、あのドラゴン。絶対強いよ。大丈夫シュウトお兄さん」
姿を見るまでは強気だったネイスも流石にドラゴンを見たら、おびえた表情を浮かべている。
空の雲もドラゴンの影響を受けているのか黒く染まっている。雷の音もしているな。天候すらもわがものにしてしまうのは素晴らしいな。今度俺も天候操作魔法作ってみよっと。
「しょうがねぇな。ちょっと見てろよ。俺の魔力でビビらせてやるから」
俺は普段何気なく抑え込んでいる魔力の半分程度を解放した。
俺の周囲に魔力の柱が形成される。
今回は後ろにはいかない用に調整しているので、前と上に向かって俺の魔力が吹き荒れる。
「ガアァ、ガアァァァァーーー!!!」
俺の魔力にあてられたドラゴンがその場で耐えるように力を入れているのがわかる。しかし、耐えられるはずもなく少しずつ後ろへと追いやられている。
「一体何が起こっているんだ? シュウト君、君は何をしている?」
「見てわからないのか? 魔力は垂れ流しにしてるだけだ。言ったろ? こんなやつ俺の敵じゃないって」
「はあ、私は君という存在を過小評価していたようだ。君はSランク冒険者にもまったく引けを取らないどころかその上位にすら手が届いてしまっているだろう。私も安心だ。完全にシュウト君にこの場を任せよう。私の援護など不要だな」
おっと、危ない。このままじゃドラゴンを吹き飛ばしてしまう。
解放していた魔力を抑え、俺は戦闘に備えるよう、足を肩幅に開いた。
「いつでも来やがれ。一回くらい攻撃させてやろう」




