37話
ギルドマスターは俺が瞬間移動を使えることを知らないからギルドで待ってくれとか言ってきたのだろうが、俺ならドラゴンの居場所を自分で見つけてすぐに倒しに行くことができてしまうんだよな。ああ、ここで待ってるのなんて退屈だ。勝手に倒しに行きたい、しかし、それじゃあ、また余計に目立つことになっちまうのは目に見えてるしなぁ。
「シュウトお兄さん今のうちに作戦を考えておこうよ。いくらシュウトお兄さんが強いからといってもドラゴンは強敵だよ。事前準備はしっかりとしておかなくちゃ」
「ネイス、お前は勘違いしてるぞ。俺にとって、リザードマンもドラゴンも大差ない雑魚だ。もう強さは確認しておいたが、特に苦戦する子もないだろうな」
「嘘? あの昨日の探知魔法? ここから山まで相当距離があるのに……適当なこと言ってないよね?」
心外だな。俺が嘘何てついたことないだろうに。
ネイスからしてみれば探知魔法で距離を広げるのは難しいことなのだろうな。
「嘘ついてどうするんだよ。俺の感知はいざとなればどこまでだって問題なく感知できるんだぞ。町の横の山なんて余裕で射程圏内だ。舐めんなよ」
「にわかには信じられないよ。探知魔法の範囲はせいぜい半径50メートルだって聞いたことがるけど、シュウトお兄さんは無制限に範囲を拡大することができるってこと?」
「ああ、そう言ってるだろ。もちろん、広げたからといって精度が落ちたりはないぞ」
ネイスは驚きを隠すことができないのか、表情が固まっている。
そこまで驚くことでもないだろう。瞬間移動だって使えるんだぞ。ほかにどんな魔法が使えようが不思議じゃないだろ。
「ちなみにほかにどんな魔法が使えるの? 一応聞いてもいい?」
「そうだな。使おうと思ったことがないから今の段階じゃ何とも言えないな。あ!! 空は飛べるぞ」
「飛行魔法? そんなの大昔に失われた魔法だよ? シュウトお兄さんは何者なの? 普通の人で済ませられるレベルを超えてるよ」
空を飛ぶのもこの反応か。やっぱりこの世界の人間は大したことないな。
「まあ、気にするな。それよりも今はドラゴン退治だろ? 流石にギルドマスターに待ってくれって言われたのを無視して単独で倒しに行くのはまずいと思うか? そっちのほうが絶対早いんだけど」
「ダメだよ。シュウトお兄さんは自信があるのかもしれないけど、探知機でSランクの反応を出すようなモンスターだよ。準備していかないと万が一シュウトお兄さんが死んじゃったりしたらどうするの?」
「そんな心配するほどじゃねぇんだけどな。俺の事前感知では、問題なく倒せるくらいのモンスターなんだぞ。それでもダメか?」
「だからダメだって。私がシュウトお兄さんを心配する気持ちもわかってよ」
これを振り切って一人で行くのもなんか気が引けるような気がする。
おとなしくギルドマスターの方の準備が整うのを待つとするか。ああ、移動も面倒だな。瞬間移動で行きてぇ。
「シュウトさん、ネイスさん準備が整いました。どうぞ、こちらへお願いします」
俺たちが話しながら待っていると、いつものお姉さんが呼びに来てくれた。
お姉さんは討伐に参加しないのかいつも通りの格好だ。
ギルドの職員だから戦闘もこなせるのかと勝手に思っていたがどうやら違うようだな。
「待ちくたびれたぜ。それで、具体的に何を準備したんだ?」
「はい、こちらで、シュウトさん用に武器と防具を準備させていただきました。急でしたので、最高級のものを集めることはできませんでしたがかなり高品質なものを選りすぐっているのでご安心しください」
「え? 俺の武器と防具を用意してくれたのか? それって緊急クエストが終わったら返却とか言わないよな?」
「もちろんです。討伐に挑む際に必要最低限のものをこちらで準備したまでです。これは前金代わりとでも思っておいてください」
緊急事態だとこんなおいしい思いをできてしまうのか。正直武器も防具も必要かと言われればいらないってなってしまうがなんか冒険者っぽくてかっこいいしな。ありがたく頂戴しようじゃないか。
「私には何かないんですか?」
「ネイスさんにはギルドからの支給はありません。ネイスさんが最前線に出るのは危険ですので、私たちとギルドで待機してもらいます」
「嫌です。私はシュウトお兄さんについて行きます。大丈夫だよね? シュウトお兄さんが私のことを守ってくれるよね?」
確かにネイスを連れて行くのは危険かもしれないな。
万が一、流れ弾が直撃するようなことになれば命の保証はないだろうしな。
居残りが確定しそうなネイスは俺の方を祈るように見ている。
なんだか、このまま置いて行くのも可愛そうな気がするし、俺が守って戦えば何も問題はないか。苦戦するほどの相手じゃないから、ネイスを抱えてでも勝てるだろうしな。
「そんな顔するなって俺が守ってやるよ。その代わりちゃんと言うこと聞けよ」
「うん。私も少しは役に立ってみせるよ」
「シュウトさん、ですが危険です。ネイスさんは今回のクエストに挑めるほどのランクではありません」
「大丈夫だって、俺が常に横について戦うからギルドに残るよりも安全だ」
お姉さんは納得がいかないという表情だが、俺がネイスを連れて行くと決めた以上これが覆ることはない。
「ありがとうシュウトお兄さん。私のこと絶対守ってね」
そんなニコニコするなよ。可愛いじゃないか。
守りたい、この笑顔。




