36話
朝という冒険者ギルドの混雑する時間というのもあるんだろうが、一か所に集まると壮観だな。
みな、武器や防具を身に着け、ギルドマスターの話が始まるのを固唾を飲んで見守っている。
「どんな緊急クエストが発令されるのかな? 町に被害が出るレベルだろうけど、あんまり強いモンスターはやめてほしいかも……」
「おいおい、稼ぎ時だって盛り上がってるのに、強いモンスターを期待しないとかどういうことだよ。もう、人類滅びるくらいのモンスターが出てきてくれた方がうれしいまであるぞ」
「人類が滅びるようなピンチだったら、もっと大騒ぎでパニックが起きてるからね? それに、ほかの冒険者ギルドから大量の助っ人を招集してるはずだよ」
まあ、俺もそこまでは期待してないからいいんだけどさ。せめて、少しはましなモンスターであってくれ!!
「みんな、よく集まってくれた。今回の緊急クエストは、ゴレウン山に突如として現れたドラゴンの討伐だ。我がギルドの管理区域に設置してあるモンスター探知機が反応をキャッチした。反応の強さからしてもかなり強力な個体であることは確かだ。詳しいことはまだわかっていない。心してかかってくれ」
なんだよ、ドラゴンごときで騒ぐんじゃねぇよな。どうせ、探知機もしょうもないレベルの反応でも過剰に反応するんだろ? どれどれ、俺が生命力感知で周囲を探ってやろうじゃねぇか。
ひとまず、周囲の強力な反応がないか確認してみる。
え? なんだこの反応? 昨日リザードマンを狩りに行った山の方角にとてつもない反応を感知した。このレベルの反応はかなり珍しいな。これなら、じじいの指令の水準のモンスターの強さを超えてるんじゃねぇか?
「探知機の反応は危険度Sを超えていた。もちろん、周囲の町の冒険者にも招集をかけているが、到着にはまだ時間がかかるそうだ。一番近くのSランク冒険者にも連絡を入れてある。いつドラゴンが町に下りてくるかわからない状況だ。我がギルドは全力を持ってこのドラゴンを討伐する。報酬に目がくらんで命を捨てるようなことは絶対にするんじゃないぞ!!」
それにしてもこのレベルの反応が急に現れるのは不自然だな。俺がこの前感知を広げたときには引っかからなかったのにおかしいぞ。
ドラゴンだし飛んできたとでも言われればそれまでだが、モンスターの移動速度なんてたかが知れてるだろうし。
「緊急クエストに参加する方はこちらにお願いします。Bランク以下の方は上位の冒険者が安全にドラゴンのもとへ迎えるように道中のモンスターを討伐していただきます。よろしくお願いします」
「Bランク以下は露払いってことかよ。それじゃ、俺たちの出番はなさそうだな。どうする、ネイス?」
「そうだね、道中のモンスターを討伐するだけでも報酬は貰えるだろうし参加したほうがいいと思うよ。緊急クエストだから通常クエストよりも報酬は上乗せしてくれるはずだしね」
せっかくのチャンスなんだが。冒険者とか関係なしに俺個人として討伐して、モンスター退治の功績に仕様かな。でも、急に目標が消えたとなると、冒険者ギルドのほうもいろいろと調べたりしそうだな。
「ちょっと、シュウトさん来てくれるかな? 今回の緊急クエストの件でギルドマスターが話があるみたい」
「なんで俺なんだ? 緊急クエストの件ってことは本部へ連絡するって言った件とは別口だよな?」
「ごめんね。そっちはまだ返事が帰ってきてないみたい。ひとまずは今日のほうからかたずけないといけないからね」
昨日のお姉さんから急に声を掛けられ、俺たちは再度ギルドマスターの部屋へと通された。
「もしかしてシュウトお兄さんにドラゴンを討伐してほしんじゃないかな? 絶対、この町に今いる冒険者の中で最強なのはシュウトお兄さんだから。きっとそうだよ」
「流石に俺もそうなんじゃないかと思ってたところだ。やっぱりそれしか考えられないよな」
何も考えずにお姉さんについて歩いていたが、ネイスから耳打ちされてその可能性に思いいたる。
とっさに考えていた風に返したが、まさかそんなことで呼び出されているとは夢にも思わなかった。てっきり、クエストは危ないからとかそんな注意でも受けるもんかと。
「すまない、昨日に引き続き今日も呼び出すことになるとは。来てくれてありがとう。シュウト君」
「ああ、別に構わないぞ。どうせ、俺たちは、道中に現れるモンスターを狩るだけの簡単な仕事だしな」
「そのことなのだがね、君にはドラゴンの討伐をお願いしたいんだ。急にこんなことを言ってすまない。無理を言っているのはわかっているんだ、しかし、この町にはSランク冒険者はいない。現状、あのドラゴンを討伐できる可能性を秘めているのは君だけなんだ。どうか、お願いできないだろうか?」
ネイスの予想が当たっていたみたいだな。でも、この状況は俺には好都合だ。報酬を稼げて、さらにはじじいからの指令もクリアすることができる。願ったりかなったりだな。
「話を聞こうじゃないか。俺も呼び出しを受けた時点でそうなんじゃと思っていたからな。それで? 報酬はいくらもらえるんだ?」
「そのあたりのことはまだ決まっていないが、君が納得する金額を用意することを約束しよう。だが、ドラゴンについては本当に詳しいことは何もわかっていないんだ。探知機の反応がとんでもないレベルを記録したことくらいでドラゴンの種類すらも不明だ」
「そんなことはどうでもいい。俺には関係ないからな。いいだろう。今回のモンスターは俺が討伐してやる。報酬を準備して待ってろ」
「ありがとう。それじゃあ、こちらでいろいろと準備をするから君はギルドで待っていてくれ」
やったぜ。これで大金ゲットは確実だ。よっしゃ!! サクッとドラゴンだかなんだか知らねぇがかたずけてやるよ。




