31話
ネイスの後ろをついて歩くこと数分。
あまりにも簡単に宿にたどり着いてしまった。ネイスは運がよすぎる気がするが大丈夫かこれ? なんか変な力が働いてたりしないか?
「シュウトお兄さん見てよ。あそこに宿があるよ。あ、あっちにも、向こうにもある」
「ああ、俺にも見えてるぞ。ほんとにこっちであってるとはな。毎度すげぇよ。この調子で道に迷ったときは頼んだぞ」
「うん。私に任せて。もしかしたら、私には道に迷わないスキルでもあるんじゃないかって自分でも驚いてるよ。ちょっと都合よすぎる気がして怖いね」
ネイスも俺と同じような事を考えていたんだな。
ひとまず、どこの宿に入るか決めるため、このあたりをぐるっと一周してみる。
予算が限られていることを考慮しないといけないので、できるだけ安そうな宿にしないといけない。
4000ゴールドもあれば、大抵のところは泊まれるだろうとか甘く考えているんだが、大丈夫だよな?
「あそこなんてどう? すごい普通な感じしない? 私の予想だと2000ゴールドくらいで二人とも泊まれそうだよ」
ネイスが指さした宿を見てみると、特にこれといった特徴のない宿だった。看板があるので宿だということは間違いないはずだが、看板がないと宿ってわからないんじゃいか? そのくらい普通の民家と変わらない作りだ。
「今日は一日ネイスの勘が冴えわたってたからな。今回もネイスを信じてやろうか。それじゃあ、ここで決まりだな」
「中に入ったらものすごい豪華で予算オーバーしても怒らないでよ?」
「そのくらいで怒るほど器の小せぇ男じゃねぇよ俺は。それにこんなに宿があるんだ、ここがダメでもほかに行けばいいだけだろ?」
「うん、そうだね。ここは私から先に入るよ」
そういうと、ネイスは入口のドアを開け、宿の中へ入る。
ドアが閉まりきる前に俺も手でドアを止め、一緒に中へ入っていった。
「いらっしゃませ!! ようこそ我が宿へ」
受付のような場所にいたおばさんがこちらへ声をかけてきた。
部屋の内装は外観通りの一般的な家そのものだった。
自分の家でも改造して宿を始めたのだろうか? それともこの世界では宿は普通の家みたいなのか? まあ、とりあえず泊まれりゃなんでもいいか。奥の方を見たら、しっかり部屋はそれなりにありそうだしな。
奥へ続く廊下の方を見ると、一定の間隔でドアがある。
玄関の右手には階段もあるので、結構な部屋数があるのだろう。
「ご予約はされていますか?」
「いえ、してないです。部屋はまだ空いていますか? 一部屋で大丈夫なんですけど……」
「はい。空いております。お二人で一部屋でいいということですね? 二人部屋でよろしいでしょうか?」
よかったな。まずは部屋が空いているだけでオッケーだろう。これで、予算さえクリアしてしまえばここで終わりだ。正直なところ何件も回るのはめんどくさかったんだよな。ほんと、ネイスの運は最強だな。
「ちなみに値段を聞いてもいいですか?」
「二人部屋でのご飯付きで2500ゴールドです。一人部屋に二人でっていうのは狭いのでお勧めしませんが1500ゴールドでございます。3人以上用は我が宿にはございませんので、こちらの二つからお選びください」
なんで、一人部屋の金額なんていう必要があるんだ? 普通に二人部屋に決まってるだろ。そりゃ狭いに決まってる。
「シュウトお兄さんどうする? 節約するために一人部屋にしたほうがいいかな?」
「ここで節約する必要あるか? 二人部屋でいいだろ」
「大丈夫? ここで2500ゴールド使っちゃったらあと1500ゴールドになっちゃうよ。明日またクエストに行くとしても結構厳しくならないかな?」
クエストでまた稼げばいいんじゃないかと思うんだが、何かネイスの中で引っかかるのだろうか?
ネイスがいうならいう通りにしてたほうがいいのか? ほんとに、今日一日はネイスのいう通り行動してたおかげでいろいろよかったのは間違いないんだよな。でも、男女二人で同じ部屋なのに、さらに一人部屋ってどうなんだよ。俺は大丈夫なのか?
「おばさん、もちろん一人部屋だとベットも一つだよな」
「そうですね。一人部屋ですので、ベットは一つです。二人部屋でしたらベットは二つございますよ」
「だってよネイス。二人部屋にしてた方がいいだろ?」
「ベットが一つだと何か都合悪いの? 一緒になればいいだけだよね?」
なんでだ? スラムで育ったからこういうことに無頓着なのか? それとも、俺は男と思われてないのだろうか?
何言ってるのみたいな顔で見られても困るんだよ。こっちがその表情になるところだぞ。
「シュウトお兄さん節約は大事だよ。お金がなくちゃ何もできないんだからね。ここは、堅実に行こうよ」
「正気か? 本気で言ってるんだよな? 俺をからかってるだけか?」
「どういうこと? 私がシュウトお兄さんをからかったりするわけないよ。スラムで育った影響かな。お金を大事にしてしまうんだよね」
もういいか。俺だけ気にしてるのもばかばかしい。どうせ、何も感じないんだ。平気だろ。
「じゃあ、おばさん。一人部屋で頼む」
「かしこまりました。では、二階の203号室をお使いください」
おばさんから部屋の鍵を受けっとった俺は部屋を目指した。




