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30話

「ふうぅ、我ながらいい仕事をしたわ。ネイスちゃん、今度はまた髪を整えてきてくれたら最高よ。それで、服は全部お買い上げでいいかしら?」


「そんなお金ありませんよ。シュウトお兄さんに払わせるわけにはいきませんから」


「えー? どれもすごく似合ってたわよ。もったいないじゃない。ちょっとあんた買ってあげなさいよ」


 こいつ似合ってたのには同意するが、全部買わせるなんていくら何でも横暴だ。俺たちの全財産は4000ゴールドなんだぞ。借金して買うなんて嫌だしな。


「ちなみにいくらか聞いてもいいか? 割引してくれるんだろ?」


「そうね、ネイスちゃんの可愛さ割引で200000ゴールドでどう? 定価の半額近い額よ。出血大サービスよ」


「高すぎだろ。それじゃ元値だと大体400000ゴールドってことだよな? いやいや、高級な服ばっかり着せただろ」


 さらっととんでもない値段を言われ、目ん玉が飛び出そうな程ビビってしまった。

 今日俺たちが稼いだ金額の100倍だぞ。正気の沙汰とは思えん。命をかけたクエストを100回こなしたらこの服が帰るってことかよ。割に合わないと思ってしまうのは俺だけか。


「すいません。いろいろ着させていただいたのに……払えそうにないです」


「しょうがないわね。私の着せ替えタイムに付き合ってくれた俺に一着だけプレゼントしてあげるわ。その代わり、また来るのよ」


「本当ですか? ありがとうございます!! シュウトお兄さんどれがいい?」


 マジか、一着くれんの? そういうことは最初からいっておいてくれよ。まさかの服代ゼロとかでかすぎるだろ。


 えーと、どれがいいかな? 明日からもクエストに行くことを考えると、機能性を重視したところではあるな。ここで動きにくいフリフリの服なんて選んだら、邪魔になるだけだからな。


「これなんていいんじゃないか? 動きやすそうだし、似合ってたから」


「それじゃ、これにします。お姉さんいいですか?」


「Tシャツとスカートのセットね。無難なところに来たわね。まあ、悪く無いと思うわ。どうぞ。もう着て行っていいわよ。今の服はこっちで回収しておくわ」


 ネイスは選んだ服をお姉さんから貰い、試着室に着替えに入った。


「今回だけの特別サービスよ。あの服だって本当はセットで50000ゴールドはするんだから。これからも贔屓にしてくれないとダメよ。定期的に来なさいね」


「ああ、ありがとな。いつまでもあの服を着せておくのは不憫だったからな。マジで助かった。それで、予算2000ゴールドだったら服は買えてたのか?」


「服を舐めないでよ。激安のシャツですらもう少しするわ。ましてや上下なんだからもっとお金は用意しておくべきね。どんどん稼ぎなさい」


 ここの店に入ってなかったら服をゲットするのは無理だったってことか。俺の運は悪いがこりゃたぶんネイスの運は相当いいんだろうな。たまたまこの店を見つけてて、来店したらサービスとか普通ありえないだろ。


「お待たせしました。お姉さんありがとうございます」


「うん、よく似合ってるわ。また来てねネイスちゃん。待ってるから」


「はい!! 今度はお金を貯めてから来ます」


 こうして俺たちはネイスの服をゲットした。


 あとは今日の目標は宿の確保だな。4000ゴールドが丸々残っているのもあるので、泊まる分には心配いらないだろうな。

 でも、ネイスと俺で二部屋借りるってのもばかばかしいな。ネイスを外に寝かせる訳にはいかないから。俺だけ外で野宿しようかな。昨日のあの環境で熟睡できたんだどこだろうと大差ないだろう。


「とりあえず宿を探すぞ。俺は野宿でネイスには部屋を借りてやるから。また、見つけてたりしてないか?」


「ううん、宿は私たちが通った道にはなかったと思うよ。シュウトお兄さんが野宿するってどういうこと? お金の心配してるの?」


「なんか二部屋借りるのはもったいないかと思ったんだよ。俺なら、外でも平気で寝れるからな」


「ダメだよ。私だけで寝るなんておかしいよ。シュウトお兄さんと同じ部屋で問題ないから野宿なんてやめて」


 同じ部屋でいいと言われてもな。俺が困るんだよな。ネイスが幼く見えるからと言ってもほとんど同じような年齢の女の子と一緒の部屋なんて緊張しちゃうだろ。今の俺なら何も感じず行けるのか? 人を殺すのになんのためらいも覚えないのに、こんなことでためらいを覚えるなんておかしなもんだな。きっと、今俺がなんとなくそう思っただけで、実際は特になにも感じないのかもしれないな。


「ネイスがいいんなら、そうしようか? ほんとにいいんだな?」


「何がダメなのか私にはわからないよ。シュウトお兄さんが野宿するほうがよっぽどダメだよ。早く一緒に探そう?」


「わかった。それじゃ、今日通ってない道を探してみるか。通った道にはなかったんだよな?」


「うん、間違いないよ。私、道を覚えるのは得意だから。今日はまだあっちのほうには行ってないかな」


 大した記憶力だな。俺なんてどこに何があるかどころかどこを通ったのかすら怪しいぞ。

 なんて頼りになるんだ。ネイスについて行こう。

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