28話
冒険者ギルドを出た俺たちはひとまず、ネイスの服を買うために服屋を探すことにした。
「金あんまりないから、そんなにいい服は買ってやれないからな、そこはちゃんと理解しとけよ」
「ありがとう。私からしてみれば服を買ってもらえるだけどすっごいうれしいよ。ほんとに、シュウトお兄さんに助けてもらってよかったよ」
すごい嬉しそうに笑うので悪い気はしないな。
ここで、なんで安い服なんて着ないといけないの? とか言われてたら思わず手が出るところだ。もちろん、ネイスがそんなこというような奴じゃないのはわかってるけどな。てか、どんな神経してたら助けてもらっていてそんなことが言えるんだろうか? 普通に生きていた人はそんなこと言わないか。
「それで、問題の服屋はどこにあるんだよ。また、探すところから始めないといけないのか? くそ、冒険者ギルドを探すときに一緒に探しとばよかったな。俺としたことがぬかったぜ」
「こうなるだろうと思ってね。実はさっき歩き回ってるときに見つけておいたから。私はできる子なんだよ。見直した? シュウトお兄さん、こっちだよ」
「おお!! 流石だな。それじゃ、ネイスについて行くから道間違えたりしないでくれよ。ここで道を忘れたとか言ったら台無しだぞ」
「そんなこと言わないよ。心配しないでもしっかり覚えてるから。私についてきて」
俺の少し前を歩くネイスの後ろをはぐれないようについて行く。
人通りも多いせいか、人の間を縫うようにして歩かないといけないのがめんどくさいが、このくらいのことは朝飯前だ。この人ごみのなか早歩きのようなペースで誰にもぶつからずすり抜けていく。
ネイスもスラム育ちの影響か、するすると間を歩いている。
「シュウトお兄さんはぐれてない? ちょっと早く歩きすぎたかな」
「馬鹿言うなよ。俺が置いて行かれるわけないだろ。俺を置いて行こうと思うんならせめて光よりは早くないと話にならないな。まあ、それでも俺を振り切ることはできないがな」
「え? 何か言った? ほら、早くこっちだよ」
「おい、聞こえてないのかよ。もう一度行ってやろうか?」
そこまで距離はなかったはずなのだが、ネイスの耳には俺の話は届かなかったらしい。
なんか、一人で自慢げに話していたと思うと恥ずかしいな。
誰かに聞かれていたかもしれない。ここにいる奴ら全員消しておこうか?
「何立ち止まってるの? 私を見失って立ち尽くしてたのかな? フフッ、置いて行ったりしないから大丈夫だよ」
ネイスはそういうと、俺の手を取って再び歩き出した。
いきなり手を取られて、少し戸惑ったが、俺はしっかりとネイスの後ろをついて行く。周囲の人間を消し去るか考えていたらまさか足が止まっていたとは……不覚だ。それにネイスに手を引かれて歩くなんて。はたから見たらこっちのほうがさっきの独り言よりも恥ずかしいかもしれない。
「着いたよ。ここが私が見つけてたところ。早速、入ってみようよ」
「ああ、そうだな。あんまり安い服をおいてあるようなところには見えないが大丈夫か?」
「外から見ただけじゃそんなことわからないよ。とりあえず入ってみないと、もし予算オーバーだったら見るだけ見て出ればいいんだからさ」
それもそうか。見るのは自由だもんな。好みのものが見つからなかったら、誰だって服を買わないで次の店を目指すだろう。俺たちもそういう雰囲気をだして、次の店を探せば問題ないな。金がないことなんてこっちから言わない限りバレるはずもないことだ。
ネイスが、俺よりも先行して店のドアを開けた。
ガラガラッ。
ドアについてあった鈴がなり、ドアが開閉された合図のように店内へ響いた。
「いらっしゃいませー」
おそらくこの店の店主であるだろう少しおしゃれな感じのお姉さんが奥から現れた。
服のセンスというものは俺にはわからないのでものすごいおしゃれなお姉さんっていう可能性もあるがわからないし、どうでもいいか。
お姉さんは俺たちの方を来た途端、驚いた様子でネイスのことを凝視していた。
なんだなんだ、ネイスのこと知ってるのか?
もしかして知り合いなのかと思った俺はネイスの方を見てみたが、ネイスも困惑した表情で固まっているだけだった。これは完全に知り合いではないな。
「あの? 私そんなに汚いですか? あんまり見られるのは恥ずかしいです」
困り果てた様子のネイスは自分の恰好のせいで目を引いたのかと予想したようでお姉さんに確認している。
「ううん、そんなことないわよ。気にしないでちょうだい」
ネイスに返事をしたお姉さんは今度を俺のほうへ視線を向けてきた。
そして、ネイスと俺を交互に見ること数回。
「君、もしかして、この子の保護者? いいや、それにしては年齢が近いわね。一体どういう関係なの?」
「は? いや、ネイスは俺がスラムから連れてきたんだけど。それがどうかしたか?」
「このあほたれがーーー!!!」
パシーーン!!!
お姉さんが俺の右ほほに渾身のビンタを叩き込んできた。




