26話
「もうあれだね。シュウトお兄さんには私の常識なんて通用しないんだね。探知魔法の精度もとんでもないけど、まさかモンスターの種類まで判別できるなんて……ほんとにシュウトお兄さんに助けてもらってよかったよ」
「そんなに褒めても何も出てこねぇぞ。俺からしてみれば当たり前のことを当たり前にこなしてるだけなんだからな」
こうやって面と向かって褒められるのは慣れていないのでなんだかこそばゆい気分になる。
ネイスを助けてまさか俺もこんな冒険者なんてものを始めるなんて思ってなかったからな。ただ適当に飯を食わせて幸福を味合わせた後に殺すだけの存在でしかなかったはずなのに、いつの間にか平然と一緒に行動するようになっているのが不思議だ。一体、俺にどのような心境の変化があったって言うんだ?
「あ、あっちのリザードマンが目視で確認できます。シュウトお兄さんのいう通り2体いるけどどうする?」
「向こうはまだこっちに気が付いてないな。どうだ? ネイスが魔法で倒してみるか? もしも、倒せなかったときは俺がカバーしてやるよ」
「え? でも魔力の能力値が高かっただけで、魔法なんてまだ使えないよ」
何じゃそれ。冒険者カードの能力値は潜在的なものまで測ってるっていうのか? 流石にそれはないだろ。今現在の能力値に決まっている。そうでなければ俺は一生知力はDで、運はEってことになるんだぞ。ネイスの魔力も今の時点でSランク相当のレベルということのはずだ。魔法の1発や2発朝飯前で打てなきゃおかしいだろ。
「気にするな。適当になんかイメージして使ってみろ。なんとかなるはずだ」
「いや、そんな漠然としたことを言われても……」
「だから、俺みたいに炎をイメージしてぶっ放すか、水、氷だってなんでもいいんだ。イメージしてそのまま打ってみろ」
俺は完全にイメージしたまま魔法を使っている。
少々特殊な例ではあるが、魔法の使い方としてはそこまで間違ってはいないんじゃないか? だって、魔法出たし。
「そんな簡単に魔法って使えるもんなの? とりあえず、1回やってみるよ」
ネイスは左手を前にだし、肘のあたりを右手で支える。
左利きなのか? 俺だったら、まったく逆に構えるから多分そうなんだろう。ひとまず、構え自体は申し分ないな。
「それじゃ、行くよ。それ!!」
ネイスの掛け声と共に、左手からサッカーボールと同じくらいのサイズの氷が生成され、かなりのスピードでリザードマンへ向かって飛んで行った。
ガンッ!!
氷がリザードマンの肩を撃ち抜き、右腕が後方へ飛んだ。
うわ、グロ。リザードマンが隻腕になったぞ。むごいことするな。俺だったらせめて苦しまないように、一発で仕留めてやってるぞ。
まあ、最初にしてはいい威力なんじゃないか? 照準も頭に合わせられてたら仕留められていたはずだ。
「ちょっとずれちゃった。やばいよシュウトお兄さん、リザードマンが血走った目で私の方見てる!!」
「あわてるな、まだ十分に距離はある。落ち着いてもう一発お見舞いしてやれ。それでとどめだ」
「わかった。うりゃ!!」
同じように飛んで行った氷は見事にリザードマンの頭を吹き飛ばした。
おお、やればできるじゃないか。この魔法はアイスボールと名づけよう。少々安直な気もするが、一瞬でわかるしいいだろう。
「やった、一匹仕留めたよ。シュウトお兄さん」
「ちゃんと見てたぞ。ほら、もう一匹も来るぞ」
同朋が目の前で殺されたもう一匹のリザードマンは、怒り狂い、鳴き声を上げている。
しかし、依然として俺たちとの距離は遠いままだ。リザードマンが一瞬で詰められるような距離ではない。ならば、魔法という飛び道具を持っているネイスに軍配が上がるだろう。
「今回はいっぱいお見舞いしてあげる。それそれそれ!!」
言葉の通り、連続でアイスボールを放ち、リザードマンをハチの巣にしてしまった。
ハチの巣というには一つ一つの穴がでかいが、ほかの表現は俺にはわからないのでしょうがない。
この魔法がアイスボールを連続で打つから、アイスボールマシンガンと名づけよう。もちろん、俺が勝手にいっているだけなので正式な名前は別にあるのかもしれないが。心の中で楽しむのは自由だよな。
「やったなネイス。正直、まったく期待してなかったらビックリだ。これからもこの調子で俺に楽をさせるんだぞ」
「一言余計だね。素直に褒めてくれればいいのに、もう」
「すごかったぞ、初めて魔法を使うとは思えないレベルだったと感じたけどな。俺に比べればそりゃ才能の違いは歴然だが、いい線いってると思うぞ」
「だからそういうのが一言余計なんだってば、シュウトお兄さんがすごいのはわかってるからさ。私はスラムで育っただけの普通の女の子なんだよ。もっと褒めてくれてもいいじゃない」
確かに俺はあのじじいの儀式によって強化された力だからな。この世界の一般の人間であるネイスは相当なレベルなのかもな。
「そうだな。ネイスはほんとにすごいぞ。改めてあの時助けてよかった。これからも頑張れよ」
「うん、頑張る!! もっともっと魔法を覚えてシュウトお兄さんに魔法だけでも勝てるようになりたいな」
「それは大きく出たな。生半可な努力じゃ俺には追いつけないぞ。まあ、追いつかせる気もないけどな。ほら、早く、リザードマンの魔石を取って来いよ。町に戻るぞ」
「わかったから、置いて行かないでよ!!」
こうして俺たち二人は無事に初クエストを終わらせて町へ帰路につくのだった




