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10話

 十分な睡眠時間を確保したのだろうか? 勝手に目が覚めてしまった。前世の俺ならばこんなことは一度たりともなかったというのに不思議だ。俺はいつも目増し時計のうるさい音で起きていたタイプなので朝の目覚めは最悪だった。しかし、今回はどういうわけか自分から目を覚ましてしまっているのだ……もしかして丸一日寝てたとかか? でも時計もないし今が何時なのか、そもそも俺が寝た時間すらわからない。気にするほどのことでもないか。


 普通の人間だったらここで寝るのは不可能だっただろう。えぐれて凸凹になっている地面、いまだ燃え続ける炎。逆になんで俺はこんな場所でもぐっすり眠れているのだろうか? やはり細かいことが気にならないほどに体が強化されているのだろうな。炎に近づいても暑さすら感じない。これは絶対におかしいよな。違和感はすごいのだが、便利なことには違いないのであらためてじじいに感謝しておく。


「こんなに最強の力をくれたあのじじいには俺の最大限の感謝、1礼2拍手3礼を送っておこう」


 ペコリ、パンッ、パンッ、ペコリペコリペコリ。


「これでいいだろう。あのじじいも神様ワールドで俺の礼を尽くした態度に感謝感激雨あられ状態になっているだろうな」


 それにしても時間がわからないのはいささか不便だ。俺のおやつの時間もわからないんじゃ、俺は一体おやつを食えばいいんだよ? なあ、じじい教えてくれよ。

 本当に困ったことになってしまった。一刻も早く時計を入手せねば、俺の明るいおやつ生活はおしまいだ。このままでは俺は一生おやつを食べることができない。好きな時間に食えばいいと思うってか? そんなものは断じておやつなどではない。おやつは3時に食べるからおやつになるわけで3時以外に食べるおやつなど存在しないのだ。いくらお菓子を食ったところでそれは間食でしかない。本物のおやつは3時にしか現れない一日一回のレアモンスターと同じだ。


「腹は減らないし、おやつを食べたくなるかは置いておいていざとなった時におやつが食べられないんじゃ生きている価値がない。それは生きながらにして死んでいるのと同義だ」


 声高らかにそう宣言した。

 俺にとっておやつとは人生の半分以上を占めているといっても過言ではないほどの大きい存在だ。それが、失われている今の状況は半身を失っているということだ。何としても俺の半身を取り戻さねば!! こうしてはいられない、すぐに町へ行き、時計を入手するミッションを発令しよう。全俺よ、約束の時は来た。町へ向かい、時計を手に入れるのだ!!


 とりあえず、昨日飯を食う予定だったラッキータウンまで行くことにした。

 飯屋こそ途中で断念したが、あの町はかなりの規模だったので、時計屋もあるだろう。なかったらそれはラッキータウンが滅びる時だ、なにも心配はいらない。


「今回も騒ぎを起こすことが目的じゃないから路地裏にひっそり瞬間移動しようかな。時計を手に入れるまでラッキータウンを滅ぼすことはないんだし」


 目を閉じ、一度瞬間移動したラッキータウンの路地裏の座標を脳内で思い描く。

 これで、目的地に一直線だ。ホレッ。




「よっしゃ今回も成功だ。誰にも見られていないよな?」


「え? なんで、急に人が? こんな路地裏なんてめったに人が通らないのに……」


 まずい、誰かに目撃されてしまった!! すぐに殺さないと!!

 驚き、声のしたほうを見ると、みすぼらしい姿をした少女がおびえた表情でこちらの様子をうかがっていた。


 なんだこの子は? ぼろっちい服にぼさぼさの髪の毛、それに服からのぞく手足は栄養失調を思わせる程にやせている。


「君は、こんなところで何をしているんだい? お父さんやお母さんのところに戻らないと怖い人に見つかっちゃうよ」


「ヒッ!! 私に父も母もいません。ずっと町の外れにあるスラム街で生活してるんです」


 ほう、スラム街か。この世界にはそんな場所もあるんだな。前世の俺にはあまりにも関係がない場所なので、いまいちピンと来ないが、この子のように貧しい人々が暮らしているのだろう。


「それで、君はなんでこんな路地裏にいるんだ?」


「私は、おなかが限界で……食料を探してさまよってたんです。そういう貴方はスラムでは見ない顔ですが、どうしてここへ?」


「俺か? そりゃこのあたりが人通りが少なくて目に付かないかと思ったからだ。それ以外に理由なんてない」


 この子は空腹に耐えかねて、食料を探しているのか。かわいそうだ、俺で力になれることがあれば力に……うん? まったくかわいそうとか思わないぞ。前世の俺ならこんな子を見れば同情の一つや二つはしたはずだ。それにいままで俺はどうして無意味に人を殺したりしていたんだ? 罪悪感を微塵も抱かずに、何も疑問に思うこともなく大勢の人たちを殺していたんだ? いや、なにもおかしいことなどないか。人を殺そうが、何をしようが俺の勝手だ。おかしいことなんてなにもないじゃないか。


「お兄さんは悪い人なんですか? 私に食料をくれるいいお兄さんじゃないんですか?」


「残念ながら、俺も食料はもってないな、金もなければ腹も減らないからな」


「すごい、お兄さんおなか空かないの? 羨ましいなぁ、私なんていつもおなか空いてるんだから」


「それは気の毒にな、俺が腹が減らないようにしてやろうか?」


「ほんとに!? お願い、私もう無理。これ以上空腹には耐えられない、本当に死んじゃう」


 うるさいガキだな、俺が空腹から救ってやろうじゃないか。死というすべての終わりをもって。


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