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〇〇に幸あれ。短編集

アオハルに、幸あれ。

作者: 七吉

「陰キャ、陽キャに幸あれ。」の続編です。

そちらからご覧頂けると幸いです。

仲良し男女3人のうちの1人が突然、彼女を作り、そいつのことが好きだった3人のうちの1人が失恋をすることはなきにしもあらずで、さらにその失恋した少女を好きだった残された1人が慰めるのもなきにしもあらずで。


そんなこんなで俺、蒼は、失恋したんだと実感した。


***

陽葵が慎之介に失恋し、俺が陽葵に失恋して、時は流れて俺たちは、1学年上に上がっていた。

夏はすぐそこまで来ていた。


「蒼って結構モテるよね。私もそろそろ蒼離れしなきゃね。」


そんなことを陽葵が言ったのには理由があった。

今日の昼休みに俺は女子から告られた。


「好きです」


顔を真っ赤にしていた。同じクラスの子だった。


「ごめんなさい。」


「それは、陽葵ちゃんの事を想って?」


陽葵が慎之介を好きだったのはクラスで結構有名だった。

だから、慎之介に陽葵じゃない彼女が出来た時、慎之介はニブくて気づいていなかったけど、陽葵が失恋したことは広まっていた。


俺が陽葵が失恋してもずっと傍にいたからか、陽葵は俺に執着しているなどというウワサが流れてしまった。


そのため、俺が告白を断ると、必ずと言っていい程、陽葵のせいと言われるのだ。


「俺が陽葵を好きなだけなのに。」


「え、?」


俺はいつの間にか陽葵の前で口にしてしまっていた。


「え?」


気づいた頃には遅かった。

俺は必死に陽葵から逃げてしまった。

陽葵も何かを言いかけていたけれど。


***

『俺が陽葵を好きなだけなのに。』


蒼は顔を真っ赤にして逃げてしまった。

私が返事を言う隙もなく。


「私だって好きなんだけどな…」


そんな事を呟いたけどきっとこの声は届いていない。

すごい勢いで逃げてしまったから。


2年生になって、私と蒼はクラスが離れてしまった。

離れてしまったせいなのか、蒼は私に去年よりも優しく、甘く接してきた。

本人はきっと気づいてないけれど。

優しく、甘い蒼を好きにならない理由はなかった。

この気持ちは恋だと実感している。


「今度は後悔しないように告白しないと。」


私は蒼を探すことにした。


***


「蒼見なかった?」


陽葵が俺を探しているらしい。

俺は今、慎之介の元にいた。


「お前もさ、言っちゃったんなら、素直に告れば?」


慎之介は自分の事には疎いくせして、俺のことには鋭い。


「俺は陽葵もお前のこと好きだと思うよ」


「それは絶対にない。」


陽葵が俺を好きな可能性はないだろう。

だって今もきっと慎之介を想っているはずだ。

俺がまだ陽葵を好きなように。


恋というものは儚いくせして、どろどろだ。

散るのははやい。だけど皆、恋に対して盲目になる。

俺もそうだった。


「そういえば、お前っていつから陽葵のこと好きなの?」


「それはー…」



***

それは中学生になったばかりの頃。


クラス替えでバラバラになってしまった俺と慎之介は

一緒の部活に入ろうか悩んでいた。

慎之介が野球部に入りたがっているのを、知っていたから俺は合わせようとした。

本当はサッカー部に入ろうとしていたのにたも関わらず。

だけど陽葵は俺がサッカー部に入りたがっていたのを感づいて俺が野球部に入るのを止めてきた。


「絶対に絶対に蒼はサッカー部じゃないとだめなんだからね!!」


(やっぱり陽葵には敵わないな。)


陽葵の後押しのおかげで俺は元々入りたかったサッカー部へと入部した。

そこまではよかったのだ。


「なんで私がサッカー部のマネージャーになったかって?そんなの決まってるじゃない。蒼はいつも頑張りすぎちゃうから私が見守らないと。まあ私、もともと入りたい部活なかったからさ。」


人に合わせようとしたら文句言ったのに、自分は人に合わせて入ってしまう陽葵はアホなのかと思ったが、俺のためを思ってくれたのが嬉しくて俺はにやけそうになるのを堪えるので精一杯だった。


陽葵は口だけじゃなかった。サッカー部の練習で自分でも気づかないうちに疲弊していた俺に休めと止めたり、俺だけじゃなく周りの人にもきちんと目を向けてマネージャーらしかった。


そんな俺はいつからか陽葵を自分のものにしたいと思ってしまっていた。


陽葵は物じゃないのに。


一度だけ陽葵が熱を出していたときにこっそりとキスをしてしまうほど俺は陽葵でいっぱいだった。


恋は盲目だと俺は確信したのだった。


***

「そういえばそんなこともあったな」


「慎之介も覚えてたんだ」


「陽葵はそういうやつだなって改めて思ったときだったからな。」


帰りの支度を終え、慎之介は迎えに来てくれた彼女と帰ろうとしていた。


「じゃあね、慎之介」


「じゃあな。あ、お前も陽葵も人に合わせすぎだからもっと自分を大事にしろよな。」


「…」


「返事」


「はい」


そして慎之介は彼女と仲良く帰っていった。


1人残された俺は陽葵を探すかと教室を出た時だった。


どんと何かにぶつかりそのまま

ぎゅーっと抱きしめてきたそれを俺は見る。


そこには見慣れた陽葵の姿。


「蒼…。私もう平気だよ。蒼が傍にいたくないならいつでも離れられるよ」


…っ。


それは俺にとって世界が終わるほど辛いことだった。

やっぱり俺の方が陽葵に縋っている。


…何もせず離れるくらいなら、言ったほうがマシか。



「陽葵。俺、」



「陽葵が好きだ」

「私、蒼が好きっ」



それは、同時だった。



俺は陽葵がなんと言ったか理解するのに時間がかかった。

それを察したように、陽葵はもう一度答えた。


「信じられないかもしれないけど私は蒼が好き。

沢山慰めてくれて、ずっとそばにいてくれてありがとう。」


信じるまで時間がかかる俺に何度も好きと陽葵は言ってくれたおかげでようやく俺は陽葵の言葉を信じれた。


「蒼が大好きです。」


それは俺がずっと陽葵に言われたかった言葉だった。


「えっ、あ、蒼?!泣いてるの?!」


ずっと言われたかったその言葉を聞いて俺は涙を流していた。


「ありがとう、陽葵。俺を好きになってくれて。」


「こちらこそだよ。ずっとありがとう、蒼。」


ー夏の少し前、こうして俺と陽葵はお付き合いを始めたのだった。



「陰キャ、陽キャに幸あれ。」投稿1年記念として今回の作品を書かせていただきました。1年越しに陽葵と蒼が結ばれて私はむちゃくちゃ嬉しいです。

次は慎之介の話も書きたいけど、それはまたどこかで。最後までお読みくださりありがとうございました!

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