プロローグ
王都魔術師育成第1高等学校に編入することになった立花グレン、そして教師には見覚えのある顔が・・・
一緒に暮らすことになった女性との誘惑とは一体?
「むかしむかし、太陽が昇っていたとされるほど昔、世界はある病気に侵されていた。魔力枯渇症、別名"魔女の暴食"だ。魔力と身体は深く結びついている。そのため魔力を枯渇すると身体に過度の負荷がかかり内蔵や脳などの繊細な器官は活動を停止し、やがて死に至る。この病気にかかると大量の魔力が延々と使われ続け、約13日で魔力を枯渇し、死に至る。初めて病気の死者が出た日から数年後、1億人ほど居たとされる王都の人口は半分ほどまで減った。しかし人口が大幅に減った理由は病気だけではなかった。魔女狩りだ。平民だった女性たちの多くは病気ではなく王都の民に殺されたのだ。そんな時13人の聖女が名乗り出た、彼女らは禁忌の魔法を使いこの病気に終止符を打った。だが何故だろうか13人のうち7人の聖女は赤く燃え盛り死んでしました。神はお怒りになりました。人の身でありながら禁忌の魔法を使ったことに激怒したのです。一難去ってまた一難、病気の次は太陽が昇らなくなりました。日を重ねる毎に気温は下がり、食べるものがなくなり、そしてまた人が死ぬ。そこで今度は民が声を上げた、
"もう一度禁忌の魔法を使え"
と。民たちは残った聖女8人を捕まえ禁忌の魔法を使わせました。太陽は昇らなかったものの段々と暖かくなり気温は元に戻った、そして植物たちは日光を浴びなくても成長し光合成をするようになったのです。しかし7人の聖女は赤く燃え盛り死んでしまいました。民たちはこれを希望の光だと言って残った1人の聖女を褒め称え祀ったのです。神はこの世界に愛想を尽かし去っていってしまいました・・・おしまい。」
そう言うと俺の隣にいる彼女は俺の頬にキスをした。
「おやすみなさい、また明日読んであげるわね」
彼女はそう言うとランプで薄暗く照らしていた部屋を後にした。
彼女の言う明日は来なかった。
彼女は誰だったのだろうか、そう何度も心に問いかけるがいつも途中で諦めてしまう。でも今となっては関係ない、彼女が母親であろうとなかろうと今は大切な仲間がそばに居てくれるのだから。
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「王都魔術師育成第1高等学校。ここは王都に住む民が魔術師になるための勉強や訓練を行う学校である、本校の入学試験に合格し通うことになった貴殿にはこの王都魔術師育成第1高等学校の生徒だという自覚と誇りを持ってー、あーもうめんどくせー、や〜めた」
分厚いパンフレットを机に投げ捨てて学校に行く準備をする。
「くそ、だいたいなんでいまさら俺が制服なんか着なきゃいけねーんだよ、あのデカ乳女には次会ったら文句言ってやる」
そう言いってコーヒーを飲みながら制服を着る。
「文句を言いながらもちゃんと制服を着ている君が私は好きだよ」
振り向くと胸がでかい女の人が空いた扉をノックした。黒く長い髪に見慣れた紋章の入ったロングコート、そして初めて履いているのを見たハイヒールにコートの中はスーツだ。こんなしっかりした格好の彼女は見たことがない。おいもしかして...
「今ノックしても遅いですよ、てか何しに来たんですか」
返事の内容はだいたい分かっているが一応聞いてみる。
「それはもちろん私もついて行くからな、なんせ私は君の保護者なのだから!」
彼女は大きな胸を張り仁王立ちする。
「はぁ、やっぱりそうでし...って!今なんて言いました!?」
驚きのあまり聞き返してしまった。いや、今のは聞き間違いだろう、きっと、多分、おそらく
「私もついて行く?」
彼女は不思議そうに言い直す。
「いえ、その後です」
「なのだから!」
そう言ってまた胸を張り仁王立ちする。
「いきすぎ!」
なんでそこやり直すんだよ、上手く決まった!みたいな顔するな
「私は君の保護者?」
「そうですよ!どーゆーことですか!聞いてませんよ?」
なんで1番大事そうなところが最後に出てくるんだ?わざとか、わざとだな。
「あれー?言ってなかったっけ?まーこれから一緒に暮らす仲なんだそんなことは気にするな」
そう言うとこちらに向かって歩き出した。
「言ってませんよ、だいたいあなたはって、また何か初めて知った情報が聞こえたんですけど、一緒に暮らすってどういうことですか」
「そのまんまだよ、私は君の保護者ということになっているんだ、一緒に生活してないと色々バレるかもだろう、はっ!まさかナイスバディのこの私と一緒に暮らすことに照れているんだな、まぁ、なんだ年頃だと言うことを踏まえてちゃんと君のことを理解しているからその・・・妄想の中ぐらいなら好きにしてくれて構わないぞ、」
彼女はかなり照れながらそんなことを言った。いや、そもそもこんなこと言う時点でアウトなんだけどね、妄想の中でってなんだよ、そもそもお前で興奮しねーよ!
「ちょ!何言ってんですか!そんなことしませんよ!!」
はぁ、想像してた答えより右斜め上どころかそっから急カーブしてキャッチャーの股間にヒットしてるよ
「そんなことよりそろそろ行かないと危ないんじゃないかな?転入初日に遅刻はまずいだろう?」
彼女が心配して問いかけてくる、時計を見ると確かに時間はあまりない、少し急ぐか
「あなたが余計な話ばかり、いや余計ではないですけど俺に言う場所と時間があと数日早ければこんなに驚かなかったし時間もかかりませんでしたよ!」
急いで身支度と歯磨きをして家を出る。
「いってきまーす!」
彼女は元気にそう言うと俺より早くに家を出る。気楽でいいな、ほんとに大人か?俺は電気を消し、鍵を閉めてやっと家を出る。
「いってきます。」
そう言って2人で門をくぐり道路へ出る。今日から学校か、退屈だなー...
「学校は楽しみかい?」
そう思った彼女に瞬間声をかけられる。
「いえ別に、そもそも俺が学校なんて行く意味あるんですか?」
そう、なんでこの俺が学校なんかに、
「しょうがないだろう、上がうるさいんだよ、だいたい君はまだ若いのに仕事ばかりだったろう?少しぐらい息抜きしたってバチは当たらないさ」
真っ直ぐ遠くを見る目はどこか悲しい目をしていた。どこを見ていようとしていたのかは容易に分かったがその事にはあまり触れないでおこう。
「息抜きねー、」
その言葉を最後にしばらく会話が途切れた。
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「ねーあの方って、」
「え、えぇ似てるよね?」
「てかあの服、」
「だ、だよね!凄い!どうしてここに!?」
「知るかよ、そんなことよりも隣で歩いてるアイツだれだ?」
「た、確かに誰だろう?うちの制服着てるみたいだけど?」
学校が近づいてきたのだろう、生徒の姿とこちらに向ける視線がチラホラと出てきた。
「おい、めっちゃ見られてるけどお前こんなところに居て大丈夫なのかよ」
いつも一緒だった為気にしてこなかったが確かに一般生徒達からすればこれは異様な光景なのだろう、もう少し早く気づくべきだった。
「大丈夫だろうよ、別に悪いことなんかしてないし、生徒が増えてきたってことは道間違えてないみたいだしね」
心配している部分が俺と彼女では異なるようで話にならない、どうしたものか・・・あ!
「なー、俺の学校生活初日からあんたと一緒に居たんじゃ俺怪しまれるだろ?だからここからは1人で行かせてくれないか?心配しなくてもここからなら道の間違えようもないしさ」
一か八かで聞いてみる。こんな怪しむような視線を向けられ続けるのは嫌だからな、
「そうだな、君の大事な学校生活を私のせいで台無しにしてはいけないからな、じゃあ気をつけて行くんだぞ」
納得してくれたようでその場で立ち止まり彼女と別れた。良かったぜ、目撃者も数人程度で済んだし学校に親と来てるなんて思われたら恥ずかしいったらありゃしないしな、
程なくして学校が見えてきた。ここが俺が今日から通う学校か、な、なんか緊張してきたな・・・そもそも学校なんて行くの初めてだし同年代の友達なんていなかったし、大人と喋る機会は何度かあったけど基本あのデカ乳女に任せて来たし、あれ?俺ちゃんと喋れるかな?友達できるかな?怖い人とかいないかな?いじめられたりしたらどうしようヤバい、どうしようどうしよう・・・
「ねぇ、君」
突然声をかけられる、声を聞く感じ女子だろう。
「はっはひぃ!」
だからこんな事になってしまった・・・
やってしまったぁぁ!!そう心の中で叫んだ、はひぃってなんだよ!箸?ぱぴー?パピーの方がまだ誤魔化せたよ、はひぃじゃ噛んだのバレバレじゃん!もうダメだよ童貞ってバレたよ第一声でバレたよ、だいたい朝からコーヒー飲んで大人ぶったからいけないんだよ、俺砂糖めっちゃ入れても飲めないのにブラックにしたのが間違えだったんだよ、自分に素直に正直に生きるとか思ってた時もあったのに学校行くのに少しワクワクしちゃって大人ぶってブラック飲んで俺の決心てそんなもんだったっけ?、もうダメだぁ終わったぁ学校生活での初女子の会話で俺の学校生活終わったぁー!
「ふふっ面白い方ね、そんなに頭を抱えてしゃがまなくてもいいのに、もしかして転入生かしら?」
微笑む彼女を見ると少し心が落ち着いた。でもどうして、
「そ、そうですけどどうして分かったのです?」
「あら?この門をくぐれなくて悩んでいたのではなくて?」
門をくぐるのに悩む?どーゆーことだ?
「この門はですね、このように女子生徒にはネックレス、男子生徒にはピアスに反応して通れる仕組みになっていてこれがないと通れないって、あなたピアスしていてるのになんで通れなかったのかしら?」
へぇ、そんな仕組みがあるのかこの門には
「え、あぁ何故でしょうね?ははは」
こーゆー時は笑って誤魔化しましょう。
「そ、そうね・・・ところで転入生って事だけど前はどの学校にいたの?」
そう問いかけてくるが前も何もここが初めてだし、
「もしかして第2?それとも第3?あ!分かったわ第7でしょう!」
だからそんなこと言われても・・・少々沈黙し考えていると、
「そう、秘密ってわけねまぁ、転校なんて稀ですし他校の戦術や体術を漏らすのは暗黙の了解で禁止されてますから仕方ないわね」
自分で聞いてきておいて自分で納得するとはなかなか変な奴だなこの女、とりあえずここはそーゆー事にしといて
「は、はいそんな感じでございます」
よし!なんかよく分かんないけど緊張も紛れたし、そろそろ教室行くか!と、その前に校長に挨拶か
「そ、それじゃあ俺行くから」
ボロが出ないうちに退散、退散と
「えぇではまた話す機会があった時はお話しましょうね」
彼女はそう言って俺を見送った、友達と待ち合わせでもしているのだろうか?
さぁ今度こそ学校に入るぞ!とりあえず女子と会話出来ただけいいスタートと言っていいだろう!噛んじゃったけど・・・とりあえず最初に校長に挨拶か、デカ乳女がバレるとか何とか言ってたから校長は俺の正体を知らないはず、バレないようにパパっと終わらせよう。
廊下をひたすら真っ直ぐ歩き校長室と書いてある部屋の前まで来る。大人の人なら大丈夫全然会話できるはずだ安心しろ大丈夫だ、
少し間をとってノックをし扉を開ける。
「失礼します」
さっきの失態を忘れるために少しでもカッコイイ声で言う。
「あぁ、君か転入生というのは」
重くずっしりとした声、なるほど校長というのは肩書きだけではないようだ。
「はい、本日より本校に転入してきました。」
こりゃ俺の心は見透かされてるかもな、でも何故だろうかこーゆー奴の方が俺もやりやすくて助かる。
「挨拶が本日に遅れたことお許しください、また転入させて頂いたこと感謝致します。」
社交辞令だが、一応謝っとくか
「よい、そもそも挨拶などせずとも君の情報は全て私の耳に入ってくる。この私に興味を持たせたいのならば挨拶よりも他の教師達からの評価や実績で示せ」
校長だからって上から目線な奴だなー、興味を引きたくて来たわけじゃねーよ、
「分かりました。では失礼します。」
そう言って校長室を後にした。今度こそ教室に行くか、
階段を上り廊下を歩いて俺のクラスの前へと来る
「ふぅ」
息を吐き緊張を逃がす。校長に会うよりやっぱりこっちの方が緊張する。
「入りたまえ」
中から担任の教師と思われる人の声が聞こえる。
「よし」
そう言いながら扉に手をかけゆっくりと開ける。
さぁ、今から俺の学校生活が始まる!
「失礼します」
全員目線が俺に向く。しかし俺だけは正面を見たまま動かなかった。
「どうしたんだい?さぁこっちに来たまえ」
教師の女はニヤッと笑いながら俺に言う。俺は胸の大きい女の言う通り教卓の横ぐらいまで歩いていく。くそこの女また大事なこと俺に言わないで、
「では自己紹介を」
俺の背中を叩き1歩前へ出させる。
「立花グレンです。よろしくお願いします」
よし、噛まずに言えた。とりあえずこれで第一印象はバッチリだろう。
「ということで1日に新しい顔が2つも増えるというのはみんなも少し戸惑うだろうが仲良くしてやってくれ」
そしてこの女、デカ乳女が生徒全員を見回して言った。
あぁ、俺の学校生活スタートから1歩踏み出したら2歩下がったよ、この先どうなっちまうんだ・・・
こんにちは、干し芋です。まずはこの作品に目を通して頂きありがとうございます。これからも投稿していくのでよろしくお願いします。