ジョードプルにてー旧市街をゆく
<ジョードプルにてー旧市街をゆく>
朝7時30分、列車はジョードプルに到着した。
駅前は朝から大きな荷物を背負った乗客や、夜を駅前で過ごした乗客などでひしめき合い喧騒に包まれている。
大道りには三輪タクシーが並び客引きに声を張り上げている。
ぼくらは大通りを渡り旧市街を目指す。
ガイドブックの地図に書かれてる古い時計塔が見えてきた。
~うむ、あれがウワサの時計塔か。確かに似ておる。ただ、大砲を置くのは無理じゃな。~
サヤが頭の上に立ち、嬉しそうに言った。
「何に似てるって?なぜ、時計塔に大砲?」
小さな声でサヤに聞く。
しかし、サヤからは返事がない。
サヤは、何故かものすごく満足気に時計塔を見ている。
~弦よ、時計塔に向かうのじゃ~
「まぁ、言われなくても向かってるけど・・・なんで?」
その時計塔を目印に進む。
時計塔の広場に出た。
周りの建物が途切れ視界が広がった瞬間、高い岩山の崖の上に圧倒的な城塞が現れた。
デカイ。
直立する岩山の上に、更にそびえたつ城塞。
130mの岩山の上に30mはある城壁が立つ。
日本の城とは概念が違う存在。
もしあれを攻めろと言われれば無理ですと誰もが答えるだろう。
今まで見た建築物のどれよりも威圧感が違った。
~うむ、すごいのう。まさに難攻不落じゃ。~
サヤは更にご満悦である。
「あれが、メヘランガール城塞・・・写真では大きさは分からないものね。」
鈴さんは茫然と眺める。
お父さんの写真の中にも何枚も城塞の写真があった。
鈴さんのお父さんもこの城砦をぼくたちと同じように眺めていたのだろう。
「さて、ゲストハウスを探そうか。早く宿を見つけてあの城砦にいこう。」
ぼくたちは旧市街の細い路地を進む。
この街の家の壁は青い。
ブルーシティと呼ばれる所以だ。
青いレンガの壁が続く迷路のような路地はエキゾチックだ。
角を曲がるとロバの引く荷車とすれ違う。
まるで、国だけでなく時代も違う世界に来たようだ。
ぼくは少しワクワクしながら一つ一つの角を曲がる。
いくつかの角を曲がり、階段を登った所にゲストハウスはあった。
青いレンガ厚壁の6階建ての建物。
入り口にはインドらしい模様のが描かれている。
日も高くなり強烈な明るさの空と対照的に室内は暗く感じる。
ドアは開けっぱなしで、中からひんやりとした空気を感じる。
「ここが弦太さんの予約したホテル?」
中を伺うように鈴さんが言う。
「そうだよ。ランクは決していいホテルではないけど。でも評判はよかった。
こういうところでも大丈夫?」
鈴さんは、もちろん、うなずいた。
「この青壁の旧市街に泊まれるのは楽しみ。でも、空いてるかな。泊まれるといいな。」