紗咲耶研究員の異世界講義vol3ー転移者の姿と具現化について
本編にはほとんど関係がありません。最期にまとめを作っていますので、うざったい方はそこだけ確認ください。
今回は転移者の姿と具現化について話である。
先に魔素が存在する通常の世界での説明をしよう。
異世界より転移した時、転移者の姿は不定である。
転移者は己の魔素をまとった精神体であり形はないのだ。
そのまま形が不定であると存在まで不安定になってしまう。
そこで、魔素に己のイメージを投影し形を作るのだ。
その際、イメージさえ固めることが出来ればどのような姿にもなることが出来る。
弦の世界でいう幽霊のような存在だ。
元の姿にもなれるし、死した時の姿にも、人外の姿にもなれる。
本人の希望のままだ。
但し、イメージがはっきりしないとぼやけてしまう。
転移での姿を元の世界の自分の姿に似せることが多いのだが、これにはメリットとデメリットがある。
元の姿に近いイメージするメリットは、明確なイメージを簡単にすることが出来る。
自身のイメージが明確であれば明確であるほど安定した存在になれる。
更に少しだけ変形を加えることで、元の自分にはない能力を手に入れる者もいる。
因みに我は元の世界の姿を縮小した姿で存在している。
弦の肩や頭に乗って移動しやすいようにじゃ。
よく初心者でスケベ心を出して異性の姿になろうとする者もいるのだが、大概は失敗する。
異性の体を正確にイメージするのは難しいのだ。
元の世界の姿に似せるもう一つのメリットは『動きやすいから』である。
仮に人間の身体を持つ者がタコの身体をイメージしたとしよう。
その場合、8本足の操縦がなかなかうまく使えない。
2本が手になり2本の足で立ち上がり、タコ人間のようになる。
そして、残り4本は使い切れないことが多い。
自身の感覚にない物、この場合、残り4本の足を使うにはかなりの訓練を要する。
つまり元の姿と離れる程、動き辛いというデメリットがあるのだ。
では、皆が人型を選ぶかというとそうでもない。
幻獣形態、例えばドラゴンの姿などは人気も高い。
このような実際の身体と異なる場合、身体の詳細までイメージすることができなければならず、動きにも訓練が必要だ。
それでも、力の放出をイメージしやすく、強力な攻撃を身に付けやすい。
例えば人間の身体とドラゴンの身体、山をも砕く攻撃を想像しやすいのはどちらであろうかということである。
人間でもできなくはないが、それができる者は本体でもできる者だろう。
本体のイメージを基に身体を作ると、本体を超えた力は発揮しづらいのだ。
幻獣等、高威力の攻撃方法を持つ身体のイメージが出来れば、その姿に見合った高威力の攻撃をしやすい。
元の人間の肉体よりも強力な攻撃も可能なのだ。
但し、最初から強力な身体のイメージを持つのは不可能であり、転移後、ドラゴンの身体の具体的なイメージを深めては、より安定し強力になるまで作り直してゆくことになる。
しかし、それでも高威力攻撃をどの程度で撃てるかは元々の肉体の魔素量による。
水鉄砲で例えるなら、イメージで形を作れる身体の形は銃身の形であり、魔素量は水の量だ。
その根本となる魔素量は元の肉体の魔力の強さによる。
精神世界に魔素以外は持ち込めない以上、全ては魔素の量により実力が決まるのだ。
さて、姿、形が自由ということは服装や持ち物も自由ということだ。
自身の装備や持ち物をイメージし作り出す事を創造という。
例えば、長鼻のコスをしようと思えば、服装を詳細にイメージするだけでその姿になれる。
この衣装や装備は転移者とその召喚者しか触れることが出来ない。
我の創造物には我と弦しか触れられないのだ。
転移者同士であっても、相手の創造物を利用することはできない。
魔法攻撃による破壊は可能である。
転移者の同士の争いは、基本的にはこの魔素によって創られた装備や姿を魔法によって破壊し合い、破壊された方は精神世界に戻されてしまうことが常となる。
この創造物だが『機能』が必要になった場合、その原理もイメージができなければいけない。
タイムマシーンなるものは創造しようとしても、原理を理解していないと動かない。
車の形や引き出しの中身の形を作れても、過去には行けないのだ。
では、我が持つデジカメはどうか。
実はこの世界の『デジカメ』の原理は解っていない。
これは我が弦のデジカメを見た時に理解出来たところと、不明なところをミューでの知識で補完して作った。
ミューでの知識で『水晶に映る』『それを記録する』『後から視る』の3点を補完し、カメラの形やフラッシュやズームの機能はこちらの世界の技術をイメージした。
それにより、写真が写る具体的なイメージができたことで、写真の撮影が可能なわけだ。
理が分かることで発動するのはある意味、魔法と同じともいえる。