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ジョードプルにてーメヘラーンガル城塞

・・・・・・・・・・・・・・・・・・紗咲耶eyes


メヘラーンガル城塞の門は見上げるほど大きかった。


我は門の上までふわりと舞い上がった。




登山道から道は直角に曲がっている。


象の体当たりを防ぐ為だそうだな。


〜象の体当たりとは、こちらも派手な戦じゃな。〜


石畳の道は門を潜った後、城壁の間を右へ左へと登る急な坂道となっている。


道の両脇に見上げるような城壁、その上には王宮の壁と空へ空へと石壁が覆いかぶさるようにそびえ立っている。




「この通路は、上から攻撃する為かな。銃や弓、いろいろできそうだ。」


弦が周りを見渡しながら言った。


「それにこの通路を落石などで封鎖することも有効そうだ。」


~弦よ、何やら楽しそうだな。~


「男にとって、お城の醍醐味は戦闘シミュレーションなのだよ。」


~楽しそうなのはよいことだが、鈴にひかれないようにな。~




石畳を登っていくと更に両側の城壁は迫ってくる。


城壁の間というより、深い谷間を進んでいるようだ。


我は既視感を感じる。


〜ここは、何かがミューの城塞に似ている・・・レキ国の城壁に近いのか?〜


このプレッシャーを与えるような圧迫感は、岩山をくり抜いて作ったあの城に似ておるかもしれない。




鈴が城壁を見上げて言った。


「この高さ、圧倒されるね。岩で作られているからかな。」


「日本のお城とはスケールが違うというか。大砲で砲撃されても耐えられるようにってのもあるのかな?」

弦が呟く。


「大砲?」鈴が頭をかしげる。


「うん、戦闘で大砲が使われるようになると世界中で城の造りが変わるんだ。


大砲が使われる前は高い壁が有利だった。敵は高い方が登れないし、こちらからは相手の動きがよく見える。


でも大砲以降は堤防のような高い土壁に石で強化するようになったんだよ。


弾を撃ち込まれても地面にめり込むだけだからね。」


弦がドヤ顔で語っている・・・まぁ、おなごを前に格好をつけてみたいのだろう。




鈴は感心したように言う。


「そっか、大砲かぁ。大阪冬の陣はヨーロッパの大砲の砲撃で勝負が決まったんだよね。確か1614年。イギリスやオランダが東インド会社を作ったのもその頃・・・」


鈴が壁の年表を見て言った。


「1600年代、城塞をすごく増築をしてる。インドにもヨーロッパの大砲が入ってきたんだ。弦太さんの言った通り、大砲の影響ってすごかったんだ。」




鈴は弦を尊敬の目で見た。


笑顔でうなずく弦・・・何も言えないのだろう。


鈴よ。残念ながらそなたの方が弦より賢いぞ。








城壁の谷間の道を弦に合わせてふわふわと上がって行くと建物に囲まれた広場に出る。


宮殿の入口だ。


城塞の武骨な雰囲気から優美な雰囲気に変わった。


広場を囲う壁4面に緻密な透かし彫が入っている。




〜見事な透かし彫じゃな〜


ここまでの城塞の雰囲気は我が世界のレキ国という国に似ておった。


ドラゴンライダーが有名な山岳の軍事国家だ。


しかし、宮殿の造りからはレキ国の奴らのより、ずっと優美な感性を持っておるのが感じられた。




弦達は広場で2人、石段に座って水を飲んでおる。


ここまでの坂道はなかなかキツかったらしい。


2人の邪魔をするのも悪かろう、我は先に宮殿の中に入ることにしよう。




中は広い空間が広がっていた。


所々に王族の品々が展示されている。


室内全体は白い壁の上に色とりどりのタイルで飾られている。


それを縁取るように金色のラインが輝いていた。


複雑ながら精密に計算されてシンメトリーに形成されておる。



・・・おかしい。親和感を感じる。


ここは我にとって異世界であり、違和感が基本なのだ。。


しかし、この装飾は・・・




ふと思い立ち、我は天井まで跳ぶ。


〜これは・・・魔法陣?いや、結界か。〜


部屋の装飾は結界だったのだ。


金線と数々のタイルが魔飾となっている。


〜検知、監視・・・それと拘束?なるほど、ここは客がまず通される場所であったな。すると、ここを制御する部屋があるはずだ。〜


魔導回路は隣室のドーム上方に続いている。


我は一旦弦の元に戻ると、大きく息を吸い飛び上がる。



隣室は謁見の間でありうか。


高いドームの下に豪華な空間、そして王座が展示されている。


天井は大きな半円のドームになっており、観光客が見上げている。




ドームの中央には豪華なシャンデリアが吊るされている。


通常の展示品として扱われているが、しかし・・・


〜これは魔石か?〜


ドームを魔素反射とした場合、波動が集中する箇所にそれはあった。


周りの豪華な飾りに隠れた下からは見ることができぬように隠してあった。


紫水晶は魔素との親和性が強い。


この作り、ミューであれば魔素を集約し蓄える力があるが。




〜魔素が溜まった様子がない。魔石としては使用していないようじゃ〜


では、これは何であろうか?













「男にとって、お城の醍醐味は戦闘シミュレーションなのだよ。」


先ほどの弦の言葉を思い出した。


その通りだ。


~我は男ではないがな。~


楽しくなってきた。少し思考を巡らしてみよう。




まず、ここには魔法を知る異世界からの転移者がいたようだ。


そして、敵対者・・・少なくても警戒が必要な相手にも異世界人が協力していた。




敵対者はどのようなものか。


我らはこの世界では魔法は使えず無力な存在・・・


できるとすれば、情報収集、スパイ的な仕事であろう。


召喚者が商人に扮したり、外交官なりで城塞に入ることさえ出来れば、異世界人がある程度の範囲を自由に動き回り情報を得ることができる。


この世界の人間に気づかれることはない。





では、そのスパイを排除したい場合、いったいどうする?


お互いに思念体同士、直接攻撃は出来ない。


他の世界では魔法による戦闘になるが、


先程の魔石の様子だと魔法の発動はやはり無理だったのだろう。




我ならどうするか?


ならば・・・召喚者との縁を切る事で精神世界に強制送還、であろう。


一度縁が完全に切ってしまえば、同じ縁を探すのは不可能だ。





〜では、どこで、どのように攻撃するのか?〜


ここ(シャンデリアの上)から、入ってきた敵に攻撃をする?


であれば、ここに攻撃する何かがあるはずだ。


しかし、周りを見渡すが攻撃に有利になりそうな物はない。


魔法陣も紫水晶も攻撃性はない。




それに、ここではすでに警戒されていて有利と言えない。


これだけの魔法陣を見せられては、敵も臨戦体制に入っているであろう。




常道であるなら・・・


敵が城塞に入った時点で察知し、敵に気付かれないように罠をはり、奇襲で始末する。


ここまで入られてはならないのだ。




となると、もっと入り口付近で監視機能があったはず。


・・・あの谷のような城壁に囲まれた道。あそこで感じた既視感はこれか。


あの城壁に感知の魔法陣があったに違いない。


あの狭くなる谷間であれば、魔素の波動を拾いやすいであろう。


この世界に魔素がない以上、反応があれば転移者だ。




谷間の魔法陣が拾った転移者の魔素の波動にここの紫水晶に反応する。


それにより、侵入者に転移者が憑いていることを察知する。


急ぎ排除に向かう・・・どこに?




〜仕留めるのは先程のロビーか。〜


客を装って来るのであれば、召喚者はロビーに通される。


そこで異世界人を拘束、攻撃をする。


先ほどのロビーに拘束の魔法陣はあった。


ならば、どこかに何だかの攻撃手段も準備されていたのではないか?


異世界人と召喚者の縁を切る攻撃手段・・・どのような物であろう。




~弦ではないがワクワクするのぉ。ここには確かに戦いがあったようだ~


何か、戦いの痕跡でも残っていれば面白い。




我はシャンデリアの上から続く金線の流れを追う。


謁見の間からロビーに戻り、上方へ登って行く。


なるほど、隠し部屋か。


天井裏に隠し通路が伸びている。


下からは見えなかったが透かし彫を通して部屋全体が見える。


透かし彫りはただの装飾ではなかったということだ。




通路はロビー中央の真上にあたる場所で部屋ともいえる空間に出た。


その部屋の中央には、魔法陣の上に虚ろに光る剣が一振りしつらえていた。




〜我は触れられるのか?〜


我が手を伸ばしても幻のように触れることはできない。


やはり他者の思念体が作った物には触れることが出来ない。




だが、その剣の発動基盤となる魔法陣は読み込むことができる。


手を触れ、意識を魔法陣に流すと剣の造りのイメージが頭に広がった。


〜うむ、構成は理解出来た。魔法名『シヴァの魔剣』縁切りの刃を作り出す魔法。これを作った者は天才じゃな〜




この魔素がない世界での思念体の異世界人同士の戦い。


それを過去に究めようとした者がいた。


世界は広いし面白いのう!










早速、魔法陣を展開しシヴァの魔剣を具現化してみる。


蒼く輝くタルワールが現れた。


輝く刃が美しい・・・


この刃は異世界人の干渉した縁の結び切る力があるようだ。


召喚時に結んだ縁を切られると、異世界人は切れた凧のように精神世界に飛ばされてしまう。


逆に、もともと異世界人の干渉を受けていない縁に影響を与えることはできないようだ。







美しい剣であるが、一つ問題に気づいた。


長鼻に剣は似合わないのだ。


長鼻コスは気に入っており、バランスを崩したくない。


~弦もこの格好は可愛いと言ってくれたしのぉ~


剣を見て考える。


さてはて、長鼻は剣や刀なんぞ持ったことはあったじゃろうか?


多少なら形も変えられるのだが。





弦からお呼びがかかった。


何であろう?


我は弦の元に飛び立った。








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