ジョードプルにてー鈴と2人、街を探訪する。
藤さんはこれから一仕事あるとのことで、18時に待ち合わせだ。
ぼくと鈴さんは荷物を整え、帽子をかぶるとメヘラーンガル城塞へ向かった。
鈴さんのお父さんは城塞で何枚も写真を撮っている・・・同じ場所が見つかるといいな。
期待を胸にぼくらは旧市街に入っていく。
城塞を左手に見ながら迷路のような青い街を歩いていく。
この青は暑さ対策とも虫よけとも言われている・・・つまり実用的な理由のようだ。
「でも、実用的な理由ならなんでジョードプルだけなんだろう?」
「本当、不思議ね。ブルーの壁に迷路のような路地。探検しているみたい。」
鈴さんはウキウキで歩いていく。
路地は細く日陰の為、気温程は暑く感じられない
そういっているうちに、時計塔の広場に出た。
朝は静かだった広場には市場が並び、多くの人でごった返している。
地元民半分、観光客も半分といったところか。
そこで、水を買いながら店員に城塞までの道を確認する。
市場を抜けて行くしかなさそうだ。
人に押され、はぐれそうになる鈴さんの手を引き、市場を進んだ。
市場には野菜や果物など日常品の他に、胴でできた太陽の顔の仮面や、お金のような飾り、イスラムっぽいお祈り用のマット、はたまたヤギらしき動物の角など、不思議な物が並んでいる。
「鈴さん、なんか、よくわからない物だらけですごいね。」
「もう、ほんとに・・・」
鈴さんと市場の雑貨を見ながら、旧市街を抜けて広場の先の大通りまででた。
大通りを駅と反対側に曲がり城塞に向かう。
こちらには店舗の店が並ぶ、街の中心だ。
「鈴さん、民族衣装の店だよ。」
ぼくと鈴さんは店を覗く。
「店中が布でカラフル。きれいね。こんな風に売ってるんだ。」
「城塞の後で来よう。」
「うん、ちょっと楽しみになってきた!!」
そう言う2人の前に象が歩いてきた。
背中には象使いが乗っている。
悠然と歩く象、その周りはそれが当然のように車やバイクが走り抜けていく。
「象って普通にいるんだね。」
「街に溶け込んでいるのがびっくりだ。」
歩く象を見送った。
ジョードプルの街を二人であれこれ覗きながら手を繋いで歩いていくと、いよいよメヘラーンガル城塞が見えてきた。
そのメヘラーンガル城塞へ続くのは岩山を何度も折れながら登る道だ。
それは、完全に登山道だった。
二人で苦道を登る。ここは日差しも当たり暑い。
「私、もう1本、水を買ってくる。」
鈴さんは道端のおじちゃんから水の所へ買いにいった。
ぼくは、日陰の岩場に座って、風を受けていた。
風が乾燥しているので、それだけでも涼しいのだ。
やれやれ、あと少しと道を見上げるぼくの肩の上で急にサヤの残像が溶け出す。
そして、再び形になって表れたのは
長鼻のキングバージョンをベースにしたサヤだった。
長いパチンコを持ち、短パン、ノースリーブのシャツの上にマントを羽織り、
背中にはサヤの黒い羽根が出ている。
特徴的なお面を側頭部にちょこんとつけていた。
~ふっふっふ、どうじゃ、弦よ。~
得意げなサヤの声。
「正直、ここまで気合を入れるとは思わなかった。」
ぼくは素直に驚いていた。
「ちょっとかわいい。」
~うむ。そうか、かわいいか。我も楽しむ方向で行くと言ったからな。これで気分も盛り上がるだろう~
サヤは上機嫌で胸を張ったのだった。
〜ところで弦。さっき、鈴と手をつないで歩いていたな〜
「え、いつから見てた?」
〜時計塔ぐらいからかのう〜
「それは・・・。人混みがすごくて必要だったから。」
〜まぁ、手をつないだ理由はそうかもしれんが。ずっと手を離さなかった理由にはならんのう?〜
「う・・・長鼻コスのくせに。」
〜ふっふっふ。さっきの仕返しじゃ。ただな、弦。〜
サヤは僕の顔を覗き込んでニヤニヤ笑って言った。
〜二人の手が離れなかったのは、鈴も手を離さなかったからだぞ〜