紗咲耶研究員の異世界講義vol2ー転移について
紗咲耶の講義2回目です。
本編の中に説明を組み込めなかった設定です。
まどろっこしい方は一番下のまとめをご覧ください。
私は師匠の指示の元、異世界ミューより弦を媒介にこの世界に転移してきた。
目的は異世界の探索し魔法や技、術を持ち帰ること。
今回は転移について解説することにしようと思う。
異世界転移の方法はいくつかあれど共通しているものがある。
元の世界から一旦は精神世界に転移し、そこから異世界に再転移するということだ。
精神世界はイメージ的には夢の中に近い。
世界で共有する夢の世界と考えればよかろう。
つまり共通の精神世界を持つ世界=広い意味での人間種族の文明世界に転移することになる。
また、精神世界を経由する為、肉体を含め物質は持ち込めない。
魔力は精神体に付属する為、通常は持ち込みが可能である。
つまり通常は転移先でも魔法が使えるのだ。
因みに我が身体はミューに存在しており、今も繋がっておる。
もしこの繋がりが切れてしまうと私は形を維持できず精神世界に溶けてしまう。
そして身体から繋がりが離れても大丈夫なようになるのが肉体分離であり、
その技が完成した場合、文明は終着点に向かう。
ミューには肉体分離して精神世界で形を維持する術はまだない。
さて、私は精神世界にたたずみ再転移先を探すこととなる。
ここで異世界より漂ってくる転移者を求める「縁」の糸を探し我の縁と結ぶ。
縁の糸口は召喚者により糸口の色や香りが異なる。
転移者はこれを便りに自分に合う召喚者を探すのだ。
この縁はいくつか種類が存在する。
一番強い力も持つのは『集団から発せられる縁』。
主に国や宗教等で神や救世主を求める集団意識などがある。
現地の住民の魔力の取り纏め役になる。これに応じる規模によっては大量の魔力や生命力を得ることができる。
だが、面倒なことになることも多い。
最も危険なのは求められる縁が多く強すぎて帰還出来なくなることだ。
そこで転移者は無理やり理由を作り逃げ帰るのだ。
殉教して死んだ。
人々を救う為に人柱なった。
兄弟げんかをして岩戸に隠れた。
求婚されて困り、有りもしない宝を求めて、誰も持ってこれない事を理由に月へ帰ることにした者もいる。
尚、ミューには『転移帰還術』という魔導書の中にこれらの帰還マニュアルが書かれている。
魔導書とはこういうノウハウの集合体である。
次に『個人から発せられる縁。』
召喚魔術師などがそれに当たる。
召喚者、転移者の双方が強い力を持ち、良い契約が結べると英雄譚が生まれる事がある。
しかし、召喚者、転移者のどちらかが不利な条件で契約を結んでしまうと、転移者が奴隷のように使役されたり、召喚者が魂を取られたり肉体を乗っ取られることもある。
但し、個人契約の場合は、契約者と自分を縛ることでその世界に存在する。遠くまで離れることは難しい。行動範囲がひどく縛られてしまうのだ。
最後に力のある『場所や物と結ぶ縁』。
例えば、世界樹や万物のモノリスなどである。
有名な世界樹になると力は莫大で縁を何人とも結べたりする。
悠久の存在となるので文明変化の考察など長期間の探索する者が好む。
この場合、時間魔法を併用し異世界での時間を加速させる者が多い。
もう一つメリットがある。
縁を何人とも結べるので、結果的に色々な世界から来た転移者が同居となり情報交換ができるのだ。
さて、最後に弦との話しをしよう。
我は再び精神世界で漂っていた時、非常に私と気になる縁の糸口を見つけた。
召喚に具体的な意思の色や香りがない透明とも言えるものだった。
熱意や、やる気といったものがないとも言える
我はこの変わり者に興味を持ち縁を結んでみた。
そこにいたのが、弦だった。
弦はとの契約には2つ問題があった。
1つ目は弦に召喚していた自覚がないこと。
後で判明したのだが、妄想のみで精神世界に縁の糸口を飛ばしたのだ。
2つ目はこの世界が魔素ゼロ世界世界であること。
通常、転移者は力を提供する代わりに召喚者より魔力の提供を受ける。
ところが、この魔素ゼロ世界では私は魔法を使えず、弦は魔力を持っていない。
取引に例えれば商人に商品がなく、客にお金がないようなのだ。
何の関係性も発生せず、契約も結びようがない。
そこで契約内容は次のようになった。
◎その都度相談する。
◎ウソはつかない。
◎嫌なら帰る。
以上である。
異例の契約とも言えない契約である。
が、お互いに商品がない以上、どうしようもないのだ。
......................................まとめ
1.私の本体は異世界にある。
2.この世界では魔法は使えない。
3.弦とは全て相談で決める。
4.お互いにウソはつけない。