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これが俺の奥の手なんですが?

06

 お姫様の部屋を後にしてからも散々迷ったが、なんとか無事に外へと辿り着くことが出来た。

 隠し通路は森の中にある洞窟につながっていたようだ。

 城下町などではなく、直接外に出ることができたのは行幸だな。

 振り返ってみると、少し離れた高い位置に木々の上から高い壁が覗き、その向こうにはお城の上の方がチラチラと見える。

 けっこう距離があるのか?

 まぁ、それは置いておこう。

 ずいぶん時間がかかった気はしたが、月は空の高い位置にあることから日の出までずいぶんと時間がありそうだ。

 さすがに朝が来るまでに3人目を召喚できるようになるとは思えないが、少しでも早くお姫様の力になりたいからほんの僅かな時間も惜しい。

 さっそく特訓に臨むとしよう。

 練兵場でアビリティを実際に使った後、夕食までの間遊んでいたわけではない。

 講堂のような場所に集められ、この世界のことやアビリティのことなどを座学で学んでいたのだ。

 その時に教えられたアビリティをより強くするために必要なのは、アビリティを使うことはもちろんだが、何よりも効率がいいのは実戦をこなすことだ。

 鑑定玉で見たステータスは情報量が少なく、レベルのような表記こそなかったが、説明を聞いていた限りでは鑑定玉では見ることができないマスクデータにレベルのようなものがあるんだと思う。

 レベルという概念こそこの世界には存在しないが、積み重ねられた歴史から推測をたてたのか、本能的に察しているのかはわからないが、魔物と戦うことでアビリティを強化できるというのだ。

 そう、魔物である。

 お姫様が俺たちを呼び出した理由である人類の危機、その原因となる魔族が人類に嗾けている生物兵器とも言えるのが魔物なのだ。

 代表的な魔物はゴブリンやコボルトなどゲームなどでよく見かけるものと同じらしいのだが、物語に登場する魔物と同じ存在がこの世界にいるというのはなんともおかしい。

 俺は学者でも研究者でもないから、その類似性? 一致? まぁそんな感じのものが俺たちの世界とこの世界にどんな関係性があるのかは分からないので放っておこう。

 重要なのは、魔物と戦うことでレベル(仮)を上げることだ。


「さて……幸いにもここは人の手がほとんど入っていない森みたいだから、野生動物もいるだろうし魔物だっているだろう……」


 お城がある王都の周辺は騎士団が定期的に魔物狩りを行っているので危険な魔物はほとんどいないらしい。

 それでもゴブリンやコボルトなどはそれこそゴキブリのように涌いて出るそうなので、いくら魔物を狩ったところでいなくならないのだそうだ。

 つまり、この森の中にもゴブリンやコボルトのように比較的危険の少ない魔物が存在しているはずだと言うことである。

 周囲を警戒しながらゆっくりと森の中を進む。

 藪が震えたことに驚きながら身構えていると、リスのような小動物が出てきて胸をなで下ろしたのはビビってるみたいで誰にも言えないな。


「…………いた」


 しばらく歩き続けると木々の間から幼児のような大きさのゴブリンを見つけた。

 棍棒――と言うよりも少し太めの木の枝を手に持ち、キョロキョロと辺りを見回しているが、こちらに気づいた様子はないのでこのまま行けば不意を打てそうだ。

 1匹だけだなんて好都合だな。

 ゴブリンは大人ならば1匹ぐらいは素手でもなんとか倒せるぐらいの強さなのだそうだ。

 武器でもあればより安全性は高まるのだろうが、生憎と衝動的に城を飛び出したので武器なんてものは持ち合わせていない。

 しかし、俺には武器はないがアビリティがある。


「…………ふぅ。よし、いくぞ」


 深呼吸して気を落ち着かせてから決意を固める。

 バレないように木の陰に隠れながらゴブリンに近づくと俺はアビリティを発動した。


「行け! 板垣退助! 板垣退助! 板垣退助ぇぇぇっ!」

「ギョッ!?」


 突然夜の森に光が溢れたかと思えば、同じ顔をした男が何十人も並んでいるのだからゴブリンも驚くというものだ。


「必殺! 板垣タイダルウェイィィィッブ!」


 説明しよう!

 板垣タイダルウェーブとは、魔力値の消費が少なく100人でも1000人でも召喚できそうな板垣退助をひたすら召喚し続けて物量で押しつぶす板垣退助の津波である!


「ギョ!? ギョアァァァ!」


 完 全 勝 利 !

 無事にゴブリンは板垣の渦に飲み込まれていった。

 そう、俺の召喚できる板垣さんが弱いと言えども、魔力値の消費は少ないので何人でも召喚できる。

 弱いなら数で押せばいいのだ。

 戦いは数だよ兄貴ィ! とどこかの独立を目指した公国のお偉いさんが言っていた通りなのである。

 俺は板垣退助を召喚し続けるだけの簡単なお仕事なのに結果は見ての通りだ。

 ゴブリンは、殴られ、蹴られ、のし掛かられて反撃する暇もなく事切れている。


「よし、次だ次!」


 その後も1匹か2匹のゴブリンを見つけてはタイダルウェーブで押しつぶしていく。

 まだまだ3人目を召喚できるようになるには時間がかかりそうだ。

 しかし、20匹近いゴブリンを簡単に倒してしまったのだから調子に乗ってしまったんだろう。


「実は今のままでも強いんじゃね? もっと強いやつに会いたい……なんてな! はっはっは」


 まさかこれがフラグになるとは思ってもみなかったのだ。


評価&ブクマありがとうございます

まだの方はしてくれてもいいんですよ? |ω・`)ちら

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