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こうなれば特訓するしかないんですが?

こうした方が面白いと思いついたことがあったので、あらすじを微妙に修正しました。

ざっくり言うと、追放→脱走です。

05

 とっぷりと日は暮れて夜になった。

 夕食はさすがはお城と言えるほど豪華で、みんなでそろって舌鼓をうったが俺の気分は晴れない。

 それぞれに用意された個室から出て気分転換に城を見て回っているが、それもなんら効果は得られずにいる。

 結局、練兵場でお姫様に事の次第を話すしかなかったのだが、役立たずになってしまった俺にもお姫様は優しかった。

 英傑のことをこれからでも学べば、次に召喚する時はより強い状態で召喚できると励まされたが、この世界では俺の召喚できる2人を詳しく調べる術がない。

 異世界なのだから、インターネットも使えないし、地球の歴史書が存在するわけもない。

 クラスメイトから知っている限りの情報を得ようとしたが、言っていることに食い違いがあったり、うろ覚えであったりで詳しく知ることも出来はしない。

 やはり俺は役立たずになってしまったのだ。

 お姫様の考えでは、この世界の英傑であれば資料を揃えることも容易なので、詳しく調べられた英傑を召喚するようにするつもりであったようだが、俺が考えなしに上限である2人の召喚をしてしまったため、計算が狂ってしまった。

 召喚を繰り返せば、召喚できる人数も増えるらしいので時間をかければ大丈夫だと言われたが、かなり時間がかかるらしい。

 せっかくお姫様の役に立てると思ったのに残念――っ。


「あ……ぐぅ……」


 今までよりも一際酷い頭痛に襲われ、思わず膝をついた。

 なんだよこれは……キツすぎる。

 痛みが引くことはなく、上から何かが纏わり付いているかのように身体が重い。

 部屋に戻って横になろうとなんとか壁に捕まって立ち上がろうとしたところで、くるりと壁が回転した。


「は?」


 我ながら間の抜けた声だとは思うが、本当にそんな言葉が思わず出てしまうぐらい驚いた。

 全体重を壁に預けようとしていたので、壁が回転してしまえば体重を支えるものがなくなってしまうと言うことだ。

 つまりどういうことかと言えば、壁の向こう側に落ちてしまった。

 滑り台というか、スロープというか、俺はごろごろと転がって薄暗いどこかに辿り着いた。


「どこだ……ここ……」


 先ほどの頭痛と倦怠感は、多少残っているがかなりマシになっている。

 これならなんとか普通に歩けそうだ。

 立ち上がって服に付いたほこりを払ってから周囲を見回すが、ここがどこだかは見当も付かない。


「お城だし、隠し通路とかそんなのか?」


 さすがの俺でも、お城には王様とかが逃げるための隠し通路が存在することぐらいは知っている。

 俺は偶然そこに迷い込んでしまったようだ。

 歩いていればそのうち出口に辿り着くだろう。

 そう考えて、当てもなく薄暗い隠し通路をさまよい歩く。


「広いな……出口どこだよ……」


 右へ左へ風の吹くまま気の向くままに歩いて行くが、出口には一向に辿り着けない。

 しばらく歩き続けていると、もしかしたら俺はここから出られずに死んでしまうんじゃないかという不安が頭をもたげるが、立ち止まったところで未来はない。

 どうしたものかと考えながら角を曲がると、薄暗い通路に光が差し込んでいる場所があった。

 壁の一部から光が入ってくるってことは、どこかの部屋とつながっているのだろう。

 喜び勇んで壁に近づくと、なにやら話し声が聞こえて思わず足を止めた。


「それで? 使えそうなのはどれかしら?」


 お姫様だ。

 よかった。

 彼女なら、部屋に入ることや隠し通路に入ったことも、訳を話せば怒ったりせずに許してくれるだろう。


「そうですね。大半は兵卒としてしか役に立たないでしょう。何人かは有用なアビリティを確認できましたが、一番期待できたあれが使い物にならなくなってしまったので……」

「ほんとよ! せっかく英霊召喚っていう使える駒だと思ったのに! これだから馬鹿は使えないのよ」


 お姫……様?


「戦えないアビリティでも使い道はいくらでもあるけど、戦いのためのアビリティを戦いに使えなくしたら何の役にも立たないじゃない! ねぇ? あの役立たずにはどんな使い道があるの?」

「どうにもならないのでしたら、処分も考えねばならないかと……理由はいくらでもつけられます」

「そうね。召喚系のアビリティだと、こっちの細工に綻びが出る可能性もある。役立たずが使えないだけじゃなくて害になったら大変だもの……特別な訓練と称して隔離はしておきましょう」

「かしこまりました」


 英霊召喚って事は俺のことだよな?

 そうだよ。

 いくら優しいお姫様だって、本音ぐらいあるよな。

 俺が使い物にならないのは事実なんだ。

 お姫様を悲しませてしまった……

 特別訓練なんてお姫様達の手を煩わせるわけにはいかないな。

 幸いにも隠し通路って事は外に通じているはずだ。

 自分で特訓してお姫様が喜んでくれる俺になろう。


「ぐ……ぅぅっ」


 また頭痛が……

 だけど、俺はやるぞ。

 壁を支えにしてなんとか歩き出す。

 目指すのは外だ。

 俺はまたここに戻ってくる。

 俺がお姫様を喜ばせるんだ。

 必死で自分に言い聞かせるようにその言葉を反芻しながら歩き続ける。


 そして俺は、外へと辿り着いた。


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