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尻を蹴られれば痛くて涙が出るんですが?

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 ユーハが確保された。

 それはつまり諸々の問題が全て解決したということだ。

 クラスメイトは1人もかけることなく洗脳から開放され、元の世界に帰るために必要なユーハも捕らえた。

 これ以上ないほど見事な結末だ。

 しかし、この王都に来てから予想外のことが続いて、自分の考えていたことから外れすぎた結末に何とも実感が湧いてこない。

 だけど、ぼんやりながらもこれで元の世界に帰れるのだとの考えに至り、ほっと胸をなでおろす。


「そうだ……柳野くん。君以外のクラスメイトたちとは話し合ったんだけど、ユーハに復讐したいかな? 王都にはユーハたち王族の非情な行いを宣伝して、王都の権威は失墜させてある。どうなるのか見られないのは残念だけど一刻も早く元の世界に帰ろうって話になってるんだけど?」

「あ、はい。それで構いません」

「そうか。よかったよ。それじゃあ、ちょっと失礼するね」


 時屋さんはそれだけ確認するとオーガを伴って部屋を出ていってしまった。

 そうか、本当にこれで元の世界に帰ることになるんだ……

 ようやく家に帰れることに安堵するが、ふと疑問に思うことが会った。

 元の世界に帰ったらアビリティってどうなるんだろう?

 元の世界に帰ったら使えなくなるのか、それとも普通に使えるままなのか。

 そこまで考えたところでハッとして武蔵と華佗に目を向ける。

 いや、そんなことよりも俺が元の世界に帰ったら2人はどうなるんだ?

 俺がこの世界からいなくなったら消えるのか?

 そうだとしたら死ぬってことか?

 それはあまりにもひどすぎる。

 いや、どうなるかなんて俺にはわからない。

 時屋さんなら知ってるだろうか?


「大丈夫よ」

「え?」

「元の世界に帰ったら私達がどうなるのか心配なんでしょう?」

「あ、あぁ」

「それなら安心なさい。少なくとも私達はこの世界に1人の人間として認められているわ。あの老人はあなたがこの世界からいなくなれば消えるでしょうけど、私達はそのまま残ることになるでしょうね」


 老人ってのは板垣さんのことだろうな。

 そう言えば、ドリンコ王国の王都に何千人もの板垣さんを残してきたまんまだ。

 そうか、あの板垣さんたちは消えてしまうのか……

 なんで武蔵にそんな事がわかるのかなんて思うこともない。

 武蔵がそうだというのならそう言うことなのだろう。

 武蔵の知識ってのはそう言うもんだ。

 板垣さんのことは残念だけど、仕方がないことだと諦めるしかないだろう。

 少なくともきちんと会話ができるこの2人は消えてなくなるってわけでもないようなので、安心だな。




 それからはもうトントン拍子に事が進んだ。

 ユーハも俺たちが洗脳されてない以上、復讐されることを考えれば送り返してしまった方がいいと判断したのか特に抵抗することなく送り返すことに同意したそうだ。

 召喚された時最初にいた部屋に案内され、クラスメイトたちとの再会を喜び合っている間に元の世界に帰る準備は終わっていた。


「やっと帰れるんだな」

「地球はどうなってるんだろう? ニュースとかになったのかな?」

「なったんじゃないの? 2週間以上クラスがまるまる行方不明になったんだもの」

「マジで!? じゃあ、帰ったら俺たちインタビューとかされるんじゃないのか?」

「そうかも!?」


 口々に帰った後のことを話し合うクラスメイトたちの輪から抜け出して、俺は1人武蔵と華佗の下へと向かった。


「武蔵、華佗……ありがとう。本当に2人のおかげで助かったよ」

「あらあら、私はほとんどなにもしてないのよ? 頭を上げて」

「私も自分でそうすると決めたんだから頭を下げる必要はないわ」

「それでも、だ。ありがとう」


 2人にとってはなんてことのないことしかしてないとしても、俺が2人に感謝しているのは事実だ。

 俺は一度顔を上げても、もう一度深く頭を下げた。


「でも……俺が2人をこの世界に呼出しておいて何だけど、これから2人はどうするんだ?」

「別に……旅でもするわ。元々あなたが新しい護衛を召喚したらそうするつもりだったんだもの」

「私はどうしようかしらねぇ? 病院でも開いてのんびり暮らすわぁ」


 2人ほどの実力があるならこの世界で生きていくことなどどうとでもなるだろう。

 俺が心配することもないのか……


「一緒に来るつもりはあるかな? この世界より安全だし、快適な生活ができると思う」

「けっこうよ。平和な世界で私は生きられないわ」

「私もいいわぁ。この世界のほうが私の力を必要としてると思うの」


 素気なく俺の誘いは断られてしまった。

 武蔵なんかは自分で言っていたとおり、自分に敵う相手がいないとしても戦争とは違う、命を賭けての闘争がない世界には来ないだろうと思ったが、華佗にまで断られるとは思わなかった。


「でも……俺にできる恩返しなんて何もなくて……」


 せめてこの世界で世話になったことの感謝を形にしたいが、俺にできるようなことはなにもない。

 俺が顔を伏せると武蔵が呆れたように溜息を零した。


「後ろを向きなさい」

「え? あ、あぁ」


 言われたとおりに後ろを向けば、準備万端でこちらを見ているクラスメイトのみんなと目があった――と、そう思った直後に俺の尻をものすごい衝撃が襲った。

 ゴロゴロと転がってクラスの輪に戻ると痛む尻を押さえながら立ち上がり武蔵の方へと振り返る。


「何すんだよ!」

「あなたが私に恩返しなんて百年速いわ。顔を洗って出直しなさい」


 俺を蹴り飛ばした足を下ろし、武蔵は笑みを浮かべながらそう言った。

 あいも変わらず伊織ではない俺に武蔵は辛辣だ。

 痛みのあまり・・・・・・涙が出てくる。


「あぁ、そうかい! ありがとうよ!」


 涙を流しながら俺がそう言うと武蔵と華佗が笑みを浮かべる。

 ソレを合図に俺待ちだった元の世界への帰還が始まる。

 来た時とは違って帰る時はほとんど一瞬だった。


「帰って……これたのか?」


 召喚された時と同じ場所、自分の席に座った状態だったクラスメイトたちは、予想を遥かに上回るほどあっさりと元の世界へ帰ってこれたことに戸惑っている。

 立っていたのに帰還したら座っているというのはどうなっているのか疑問だが、そんなこと以上に帰ってこれたことが嬉しいのだろう、クラスの皆が口々に喜びの声を上げる。

 そんな中、俺は1人机に突っ伏して涙を流していた。


「あぁ……ケツがいてぇ」


 誰もいないはずの教室から歓声が上がっていることに気がついて教師たちが駆けつけても、クラスが喜びの渦にいる中で俺だけがいつまでも涙を流していた。


エピローグを入れようかとも思ったのですが打ち切りですし、これで完結とさせていただきます。


エピローグも見たいと思う方がいらっしゃったら感想やメッセージ機能などでお知らせください。

希望者が3人以上いたらエピローグも入れさせてもらいます。


清書版(下書き版打ち切りに合わせて改題予定)は、カクトー王国陥落の知らせを受けた所(清書版では2章終了時点)からストーリーが分岐します。

打ち切りではないきちんとした続きが読みたい方はそちらをお読みいただけると幸いです。

ちなみに、下書き(打ち切り)版とは大筋は変わらないもののストーリーに変更部分もあり、キャラクターの増減、各種名前の変更などありますので、清書版2章の終わりに下書き版との差異の記載を入れたキャラクター紹介を掲載しますので、清書版を読み直すのが面倒だという方は、キャラクター紹介で情報を補填していただければよろしいと思います。


では、ここまでお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。

よろしければ清書版の方で引き続きのお付き合いをお願いいたします。

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