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56/57

締まらない理由なんですが?

55

「どこでその魔物を?」

「エンペラーオーガは王都ここのすぐそばの森で私が、オークキングは隣国の森で彼が倒したわね」


 スッと目を細めて、なんというか緊張感のある声音で言った時屋さんの言葉に武蔵は何でもない風に答える。

 いったいなにがどうなっているのか……

 この王都に来てからわからないことだらけで嫌になる。


「武蔵、どういうことだ?」

「簡単なことよ。通常ならそこにいるはずのない魔物がこの国からそう離れていない場所で二度も出た。そしてこの城の門は人間の敵であるはずの魔物が守っている。導き出される答えなんて、彼が魔物を操っている以外になにがあるの?」


 そんなこともわからないのかと言いたげながらも、武蔵は順序立ててどうやってその結論に達したのかを説明してくれた。

 言われてみればその通りだ。

 時屋さんに魔物を操るアビリティがあるのか、もしかしたらまだ俺が会っていない時屋さんの仲間がそのアビリティを持っているのか。

 どちらにしろエンペラーオーガとオークキングのことは時屋さんが関わっている可能性が高い。


「そうか……君たちが俺の計画を邪魔してくれたのか……」


 うつむいてしまった時屋さんの表情は伺えない。

 平坦な口調で話しているので、彼が俺たちにどんな感情を向けてくるのかと身構える。


「はぁ…………なんというか酷いすれ違いだね。君たちに怪我はなかったかい?」

「え? いや……怪我はしてないですけど……」


 何とも予想外の反応だった。


「まさかねぇ……そんなことになるとは思わなかったよ。でも、エンペラーオーガとオークキングを倒せるんなら君たちは随分強いんだね」

「あの……なんであんなところに魔物を? って言うか、魔物を操れるんですか?」


 時屋さんのやろうとしていることがまったくわからない。

 百歩譲ってエンペラーオーガは王都を襲わせようとしたんだと理解できるが、オークキングの方はこの国とは関係がない隣国の話だ。

 まさか自国を守るために戦ったドリンコ王国の人間に友人たちの敵だと八つ当たりしたかったのか?


「俺のアビリティは魔物使いだからね。エンペラーオーガは王都を攻撃する前の嫌がらせで、オークキングはなぜかエンペラーオーガがやられたから、大急ぎで代役にできるようゴブリンを狩って育てようとしたからだね」

「はぁ……」

「でもひどくないかい? エンペラーオーガはともかく、オークキングまで倒すなんて……せっかくドリンコ王国の協力者に使う予定がない森の場所まで確認したっていうのに、わざわざ倒しに行ったの?」

「え!?」


 なんというか少しだけ原因が自分たちにあったと言われてうろたえてしまう。

 だけど、こっちは偶然遭遇しただけで、わざわざ倒しに行ったわけじゃない。


「いやいや、こっちも冒険者ギルドの初心者コースで行った森の外で襲われて、自衛のために仕方なく戦っただけです」

「え? そんなはずないよ。貴族領の森なんだから、ギルドが初心者コースで使うはずない」

「いえ、ギルド管理の森でしたよ?」

「…………だとしたらそれはこっちのミスだよ。ごめん。でも、オークキングには自分から人間に攻撃しないよう言っておいたはずだよ? そっちから攻撃してきたら自衛のために戦うのは許可したけど」


 …………え?

 もしかして、教官から手を出したのか?

 そうすると俺がやったのは正当防衛した相手を理由も聞かずに殺したってことか?

 いやいや、少なくとも俺たちの場合はオークキングから手を出してきたんだから、こっちが正当防衛だ。

 フィアは即死じゃなかったけど致命傷になるような怪我を負わされたんだから手は出されてる。

 なんでだ?

 あぁ、俺たちも自分に攻撃してきた教官の仲間だと思われたのか?

 間違いじゃないけど、なんというか不幸な事故だ。

 …………いや、そう考えるのは時屋さんの言っていることが事実だとすれば、だ。

 もしかしたら嘘をついているのかもしれない。


「そう。事故だったわけね」

「武蔵?」

「どうやらあなたもきちんと考えてその結論に達したみたいだけど、大丈夫よ。彼に敵意はないわ」


 俺の目つきなんかから俺が時屋さんを疑っているとわかっているのだろう。

 武蔵は俺にそれは取り越し苦労だと否定する。

 武蔵なら表面上は取り繕っていても、ほんの些細な視線の動きや手足の微細な動きから敵意を見抜くなどお手の物なのだ。

 その武蔵が大丈夫だと太鼓判を押すのだから時屋さんの言っていることは事実なのだろう。

 だとすれば教官は本当に無駄死にしたことになるな、合掌。


「ウガッ! ウガッ!」


 俺が心の中で教官に合掌していると乱暴に扉を開けて一匹のオーガが部屋に駆け込んできた。

 ドリンコ王国でも王様と話している最中に人が駆け込んでくることはあったけど、あの時駆け込んできたのは人間で、今回駆け込んできたのはオーガだ。

 なんというか、両方の光景を知っているとこの光景はなんともシュールである。


「あの……どうしたんですか?」

「ユーハを確保したらしい。これで元の世界に帰れるよ」


 そう言って時屋さんはにっこりと笑みを浮かべた。

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