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54/57

口は災いの元なんですが?

短め

53

「え?」

「俺だよ! 柳野」

「柳野!?」


 フードを取って顔を顕にすると片井くんはひどく驚いたようだった。


「柳野、お前どこ行ってたんだよ。お前だけいきなりいなくなったからみんな心配してたんだぜ?」

「いろいろあってさ……でも何も問題……なくはなかったけど、こうして無事だよ。片井くん、王都は魔物に襲われたって言うけど、みんなは無事なの?」

「そうか……そりゃよかった。みんなも無事だよ。あのクソったれのお姫様もいなくなったから城でゆっくりしてる」


 今度は俺のほうが驚いてしまった。

 なにせ片井くんが屑姫をクソったれ扱いしたのだ。

 洗脳が解けていなければありえない言葉になぜ洗脳が解けているのか見当もつかない。

 俺がそう思っていることなど知りもしない片井くんの方も何か失言に気づいたような表情を浮かべた。


「いや……あの……あれだ。落ち着けよ柳野、信じられないかもしれないけど、俺たちはこの世界に召喚された時に洗脳されてるんだ」


 どうやら片井くんは自分が屑姫をクソったれ扱いしたことに憤ると思ったようだ。

 洗脳されていた時なら間違いなく怒っただろうが俺の洗脳はとっくに解けているので、むしろその評価に同意できるんだけどソレに気づいた様子はない。

 むしろ俺はなんで片井くんの洗脳が解けているのかの方が気になってしまう。


「大丈夫。俺の洗脳はもう解けてるよ。むしろ片井くんの洗脳が解けてるほうが気になるんだけど……」

「そうなのか? じゃあ、柳野も時屋さんに会ったのか?」

「ときや?」


 誰?

 片井くんの話しぶりからどうやらクラスの皆の洗脳を解除してくれた人みたいだけど、いったい何者だろうか?


「違うのか?」

「俺はたまたま英霊召喚で召喚した武蔵に解除してもらったんだけど……」

「は? だって武蔵ってあの浮世絵そのまんまの雑魚だろ?」

「あ、バッ!」


 バカなことを言うなと忠告する前に片井くんの後ろに回り込んだ武蔵が彼の首筋にヒタリヒタリと刃を当てる。

 片井くんは後ろに誰もいなかったのに突然後ろから襲われたように感じたことだろう。


「っな!? 『硬化』」

「武蔵、ダメだ!」


 片井くんのアビリティは体が金属のように固くなる硬化だったはずだが、そんなもので武蔵の刃が防げるはずがない。

 まさか本気ではないだろうが、慌てて武蔵を制止する。


「冗談よ」


 刃を引いた武蔵は興味なさそうにそう言うと烏丸を鞘に収めて馬車に戻った。

 片井くんは首筋に走った線のような傷からたらりと流れた血を指で拭う。

 硬化のアビリティで防御力を飛躍的に高めたはずだと言うのに、いとも容易く傷をつけられたのが信じられないのだろう、片井くんは指についた血を見て腰が抜けたようにその場に座り込んでしまった。


「あれが武蔵だよ。いろいろあったんだ……」


 放心した様子の片井くんに詳しく説明することもできず、これから俺はどうすればいいのかと考える他になかった。


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