カクトー王国に向かうんですが?
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カクトー王国の王都が陥落したと言う知らせを受けた翌日、俺はさらなる情報を求めて王様の元を訪れた。
昨日は歩き詰めで王都に帰ってきた矢先にあのような話を耳にし、周りが心配するぐらいに顔面蒼白になったらしい。
昨日は、どうなったのかさらなる情報を集めるのに時間もかかるから、と王様に勧められて部屋で休んだので体調は万全だ。
「来たか……」
王様の眉間には深いシワが寄っている。
どうにも状況は芳しくないらしい。
「我が国の密偵から届けられた情報によれば、王都が陥落したのは間違いないようだ」
「そう…………ですか」
クラスメイトたちがどうなったのかすぐにでも問い詰めたいが、俺の気持ちぐらい王様だってわかっているだろう。
王様に詰め寄ったところで事態が改善するわけでもないので、前に出そうになる足を意志の力で必死に抑え込む。
「先に言っておこう。お前の仲間がどうなったのかはまだわからん」
「え?」
「王都を襲ったのは魔物の大群だったそうだ。確認できた範囲でもオーガやトロール、ミノタウロスといった強力な魔物と大量のオークなどの二つ星の魔物の集団だったようだな」
初心者コースでも習ったが、オーガやトロールと言えば、単体でも三つ星や四つ星の魔物だ。
ミノタウロスはエンペラーオーガより強いんじゃなかったかな?
しかし、魔物の大群とは……
「王都を囲む壁の一部を破壊して侵入した魔物は、周辺の人間を襲いつつまっすぐ城を目指したそうだ。城の前では激しい抵抗があったようだが、抵抗虚しく城の内部に魔物が入り込み主要な施設が破壊された。しかし、王都の民への被害は非常に少ないようだ」
魔物が襲ってきたのに民間人への被害が少ない?
ゴブリンやオークと言った魔物は数多の物語でも語られる通り、人間をさらう性質がある。
人間を捕食する魔物も珍しくないのだから、被害が少ないっていうのはとても信じられない話だ。
「城に被害は出ているが人的な被害がどの程度なのかはわからん。城でも死人はほとんどでていないようだが、お前の仲間がどうなっているのかまでは報告がない」
「わかり……ました」
民間人への被害が少ないからと言って、クラスメイトの皆が無事だという保証はない。
人的被害が少ないなら可能性は高いかもしれないが、覚悟はしておかないといけないかもしれない……
「あの……王族はどうなったんですか?」
元の世界に帰るためには屑姫が必要だ。
もしも少ない被害者の中にあの女が含まれていたならクラスメイトの皆が無事でも元の世界に帰れないなんてことにもなりかねない。
「詳細は不明だが、どうやら城を捨てて逃げたようだな」
「はい?」
逃げるって……いや、他所の世界から軽々しく誘拐なんて馬鹿な真似をし、簡単に命を捨てるような洗脳まで施すような屑なのだからありえないはなしではないか。
だがしかし、逃げられたのだとしたら少しばかり困ったことになった。
今まではクラスメイトも屑姫もカクトー王国の王都にいるという前提で全てを考えていた。
まだ具体的に何も決まっていたわけではないが、その前提が崩れてしまうとクラスメイトを救い出し元の世界に帰るという目的の達成が難しくなるのは間違いないだろう。
何よりもまず最初に解決しなくてはならない問題はクラスメイトたちの安否確認だ。
救出の目処が立っているのに予想もしていなかった犠牲者が出てしまうなんて冗談ではない。
まぁ、その目処も今回のことで幸先が不安になってしまったが、少なくとも洗脳を解除してこの国まで来ることができれば、元の世界に帰るまでの安全はある程度確保される。
「………………すいません。ちょっと武蔵に話したいことがあるので失礼します」
「なにかしら?」
「………………」
王様の前を辞して武蔵を探しに行こうとしたら、俺の後ろに武蔵が立っていたでござる。
驚きのあまり目が点になってしまった俺は至って普通の反応をしたと思う。
「なんだ? ミヤモトは最初からお前の後ろに着いてきていただろう?」
いや、王様……そんなこと知りませんでした。
ジト目で武蔵を見ると、武蔵はいたずらが成功したことが楽しいのかクスクスと笑っている。
「それで? 相談って何かしら」
「お前との約束を破ったけど、まだ俺に協力してくれるか?」
「…………心外ね」
「……ごめん」
そうだよな。
武蔵は仕方ないと3人目に華佗を召喚したことは認めてくれていたのだ。
その言葉を信じられないと言われれば心外と言われてしまうのも無理はない。
「武蔵、頼む。俺をカクトー王国の王都まで連れて行ってくれ」
「いいわよ」




