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デンさんが過去を語ったんですが?

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 今回の実地訓練は、前回行った森とは別の少し遠い森まで行くことになる。

 冒険者の移動手段として徒歩に次いで多い馬車での移動に慣れるためだ。

 本来なら乗り合い馬車に乗るのだろうが、あくまでも体験が目的であるため今回に限ってはギルドがチャーターしてくれている。

 高ランクの冒険者になると、自前の馬車を持っている場合や乗合馬車の組合と契約して常に自分の馬車を確保させていることもある。

 そんな一流気分を味わわせることで、向上心を刺激するのが目的だろう。


「お前は国が後見しているんだな」

「……えぇ、まぁ」


 俺の隣に移動してきたデンさんがそう言った。

 まったく予想していなかっただけに少しばかり驚いた。

 かく言うのも、今回の初心者コース参加者で俺とフィア、リングの3人はそれなりにコミュニケーションを取って仲良くやっている。

 デンさんだけが少し浮いているのだ。

 たしかに1人だけ年齢が離れているのも理由の1つだが、それよりも本人がまったく打ち解けようとしないのが原因だ。

 訓練の合間のちょっとした雑談にも参加しないし、話題を振ってもまともに返事を返さない。

 まるで俺たちと馴れ合うつもりはないとでも言いたげな態度で、壁を作られているのだから当然と言えるだろう。

 そんなデンさんが自分から話しかけるとは思わなかっただけに、驚いてしまった俺は悪くない。


「そうか……国は、ミウンのことをどう考えているんだ?」

「……はい?」


 誰? いや、何のことを言っているのかわからない。

 なんだか少し怒っているようだし、俺に言われても国の考えなんて分かりませんよ?


「国が見捨てたミウンだ!」


 立ち上がって今度こそ本当に怒声を上げたデンさんに馬車にいる全員の視線が集まった。

 顔を真っ赤にして仇でも見るような目で見られても困る。

 俺はそのミウンとやらを国がどう思っているのか知らないのだ。

 そもそも、その名前すらも初めて聞くのだから、知っているわけがない。


「いや、俺……」

「どうなんだ!」


 興奮したデンさんに胸ぐらを掴まれ無理矢理立たされる。


「しりま、知りません!」


 突然そんなことされて正直ビビった。

 慌てて叫ぶように俺がミウンとやらのことを知らないと大声で言うとデンさんも自分が興奮していることに気がついたのか、俺を離してドカリと脱力するように腰を下ろした。


「すまん……」

「い、いえ……」


 心底申し訳ないと思っているのだろう。

 言葉だけの謝罪などではなく、自分の行いを後悔するような顔をしているのは見て分かる。


「俺……俺は、国が後見してくれてますけど、つい数日前に理由があってドリンコ王国に保護されたんです。だから、政治的なこととかは何も知りません」

「……そうか」


 俺が改めて俺の立場を説明すると、デンさんは短くそう言って顔を伏せた。


「その……言いたくないなら構いませんけど、そのミウンってのがどうしたんですか?」


 正直なところ、ただの好奇心と言われれば否定できない。

 だが、勘違いもあったとは言え、自分の胸ぐらを掴まれて怒鳴りつけられるようなことなら、詳しく話を聞いておきたいと思うのはしょうがないだろう。


「…………ミウンは俺が暮らしていた村だ」

「はい……」


 どうやらデンさんも俺に迷惑をかけたのだから、説明はするべきだと思ったのかゆっくりと口を開いた。


「それほど大きな村ではない。俺はそこで衛士をしていた」

「衛士ですか?」

「あぁ……」


 衛士って何だろう?

 気になるけど、聞ける雰囲気じゃないから、後で誰かに聞いておこう。


「平和だったが、近くの森でオークやコボルトの数が増え始めた。日に日にその数を増えていく一方なのは目に見えていたから、俺は国に対策を求めた。だが、国は何もしてくれなかったよ」

「……はい」

「案の定、数を増やしたオークとコボルトはミウンの村を襲った。俺はなんとか救えるだけの人間を救い、近くの町に逃げられたが、仲間や村人のほとんどは殺されるか攫われていったよ」

「…………」

「増え始めた直後なら十分に対策が出来た。国が軍を派遣していれば、ミウンの村は無事だったんだ」


 それはなんとも……重い話だ。

 デンさんは国を恨んでいるのだろう。


「王都に来て、改めてミウンのことを訴えたがミウン以外に被害を受けた村もなく、ミウン以外で魔物が増えたという報告もない。国はそう言って俺の訴えを退けた。だが、たしかにミウンは魔物に襲われたんだ」


 おかしな話だ。

 そもそも、魔物に襲われていないというのならミウンの村は何に襲われたというのか?

 魔物以外にも盗賊とかは居そうだが、どちらにしろ村が滅ぼされるようなレベルの被害を受けているのだから、それに対応しないなんておかしいだろう。

 近くの村の警備を強化したり、原因究明したり、被害者に何らかの補填をしたりとやることはいくらでもあるはずだ。

 それなのにデンさんの訴えを退け、なにもしようとしないのは明らかにおかしい。


「俺は、国になんらかの思惑があると思っている。オークやコボルトが縄張り争いもせず、協力して人間の村を襲うのもおかしい。ミウン以外を襲わなかったこともな。俺は何らかの手段で人間が手を引いていると考えている」

「なるほど」


 だから、少しでも情報を集めようと国が何かをしていると知っているかもしれない俺を問い詰めようとしたわけだ。

 初心者コースの座学で習ったが、オークもコボルトもキングと呼ばれる上位個体が生まれた場合、その指示に従って組織的な動きを見せることはある。

 だが、それはあくまでも上位個体と同タイプの魔物に限られる。

 オークキングがコボルトを支配することはなく、コボルトキングがオークに指示を出すことはない。

 そうであるなら、まったく別の魔物が徒党を組んでいるのには何らかの手が加えられていると考える方が自然だろう。


「だから俺は、冒険者になった。高ランクの冒険者になれば、国も無視できない発言権を持てる。無駄かもしれないがな……」


 国が無視できないレベルとなれば最低でも3級くらいになる必要がある。

 高ランクまでトントン拍子に駆け上がっていく例もなくはないが、一般的な話で言えば3級になるには20年近くかかるだろう。

 それも才能ある人間に限られる。

 普通の人間が現実的なレベルで目指す最高位は4級だと言われているからだ。

 そんな貴重な人間であるからこそ、3級以上の冒険者ともなれば国もその言葉を無視できなくなるのだ。

 デンさんが40才だと考えれば、20年後には60才、身体は鍛えられているし普通の冒険者よりスタートは有利かもしれないが、年齢を考えれば3級に至るのは難しいと言わざるを得ない。


「……話してくれてありがとうございます」

「いや……話して俺も気が楽になった気がする。少し思い詰めすぎてたのかもな……お前にも悪いことをした」

「いえ、事情を聞いたらそこまで酷いことされたとも思えませんよ。胸ぐら掴まれただけですしね」


 デンさんは、ほんの少しだけ晴れやかな表情になった気がした。


デンさんに死亡フラグを立たせようとしているのにうまいこと立ってくれない。


あ、読者の皆さんはどうぞ今回のメンバーで誰が死亡するか推理しながらお楽しみください。

ちなみに作者の第1候補は主人公です(ぇ


まぁ、冗談は置いといて明日は更新できないかもしれません。

更新できなかったらごめんちゃい

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