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期待外れもいいところなんですが?

03

 アビリティの確認を終えた俺たちは、自分のアビリティがどんなものなのか見てみたいだろうと城にある練兵場へと案内された。

 練兵場、早い話がグラウンドである。

 召喚された部屋からここに来るまで歩いた廊下を見てもそう思ったが、お城だ。

 練兵場から見上げる建物は完全に西洋のお城である。

 東海デスティニーランド(TDL)のシャンデリア城をさらにスケールアップした感じとでも言えばいいんだろうか?

 練兵場の方は学校のグラウンドと大差ない広さだから特に感想もない。


「左には近衛騎士、右には宮廷魔術師が並んでおりますので、聞きたいことがありましたらそれぞれの方へ向かってください」


 先生役まで準備しているなんて至れり尽くせりだな。

 戦闘向けのアビリティだったらしいやつらは我先にと練兵場の奥にある丸太みたいな的に向かって走り出す。

 残っているやつらは戦闘には向かないアビリティだったのかな?

 周りにいる人間と自分がどんなアビリティだったのかを話している。

 聞こえてくるアビリティは調理やら鍛冶といったサポート以外には使えなさそうなアビリティばかりだ。


柳野やなぎのくんはどんなアビリティだったの?」


 奥へ向かおうとしない俺に話しかけてきたのは、クラスのマドンナ(死語)だった河合かわい 伊子いこさんだった。

 この世界に来る前だったら彼女に話しかけられたらどぎまぎとしてしまっただろうが、ぜんぜんそんな風にはならなかった。

 可愛らしい見た目で、この世界に来るまではクラスで一番可愛い女子と言われていたが、どうにもお姫様を見てしまった後だと普通の子にしか思えない。

 きっと他の男子も同じ感想を抱くだろう。


「俺は英霊召喚ってアビリティだったよ」

「えぇ? なにそれ?」

「昔の英雄とかをこの世界に召喚する能力なんだってさ」

「すごいすごい! そんなアビリティだったらきっと活躍できるね。どんなアビリティなのか見せてみてよ」

「ああ、俺がこの世界を救うん……だ……っ」


 また違和感を感じたかと思えば、頭が割れるように痛む。

 だが、先ほどと同じようにすぐに痛みは引いた。


「どうしたの? 大丈夫?」

「ああ。大丈夫。どんなアビリティか試すんだったよな」

「うん。見せてよ」


 さて……

 アビリティなんてものが使えるのか疑問だったが、鑑定玉で自分のアビリティを確認した時からなんとなくだが使い方は分かるようになった。

 召喚したい英霊に呼びかけ、その名を呼べば俺の前に現れてくれるはずだ。

 しかし、問題は誰を呼ぶのかと言うことだろう。

 生憎と歴史が嫌いなので、英霊なんて言われてもピンとくる歴史上の人物に心当たりがない。

 そう言えば、この世界に来る直前の授業は歴史だったな。

 習ってた人物は……そう――


「板垣退助」


 名前を呼ぶと目の前に俺たちがこの世界に召喚された時のような紋様が地面に広がる。

 かと思えば、あっさりとその人物は俺たちの前に現れた。

 立派な髭を蓄えた老齢の男性、歴史の教科書に載っている姿そのものの板垣退助だ。

 けっこう歳はいってるみたいだが、背筋はピンとしていてなんとも言えない強そうな佇まいをしている。


「おぉ……」

「板垣死すとも自由は死せず」


 思わず声を漏らした俺に板垣退助はあの名言で答えた。

 正直、板垣退助なんて、この言葉意外に知らないからどんな逸話があって、どんなことが出来るのかも分からない。

 ただ、俺のアビリティは確かに歴史上の人物を召喚できることは証明できたようだ。


「すごい! 教科書で見たとおりね」

「すげぇ」

「でも、なんで板垣退助なの?」

「もっと強い人いるんじゃない?」

「いや、板垣退助だって幕末の偉人なんだから強いんじゃない?」


 俺がアビリティを使うのを見ていたクラスメイト達が思い思いの感想を述べる。

 まぁ、他に強い人とかいそうだよな。

 でも、俺歴史嫌いだから誰が強いとか全然知らないんだよ。


「これって柳野のアビリティなのか?」

「すげぇじゃん柳野」

「歴史上の人物を呼べるアビリティか」

「なんで板垣退助なんだ?」


 的の順番待ちをしていた連中も後ろで歓声が上がったことに気がついて何人か戻ってきた。

 俺の召喚した板垣退助は、興味津々と言った様子で囲まれても表情を変えないどころか直立のまま微動だにしない。


「板垣退助と言えば、呑敵流小具足術皆伝の腕前らしいじゃないか。誰か戦ってみたら?」


 委員長が委員長らしい博識を披露した。

 何たら流の免許皆伝ってことは板垣退助ってけっこう強いのか?


「小具足術ってなんだ?」

「短刀とか脇差しを使う武術か柔術の一種って感じらしいよ」

「じゃあ、俺戦ってみたい。俺、全身を金属みたいに出来る硬化ってアビリティだから、剣とか関節技は効かないだろうし」


 手を上げたのは、ボクシング部の片井かたい 拳次郎けんじろうくんだ。

 彼は、ボクシングの技術が活かせるアビリティだったようだな。


「よし、行け板垣退助!」

「よっしゃこい!」


 片井くんが硬化を発動したので、準備は完了だ。

 板垣退助は俺の指示に従って片井くんに向かって駆け出した。

 手にはいつの間にやら短刀を握り、間合いに入った瞬間振り下ろす。


「は?」

「あれ?」


 キンッと音がしたかと思えば、短刀は半ばから折れて宙を舞っていた。

 片井くんは斬られた感触がないのか首を傾げている。


「てい」

「ぐぁぁっ」


 板垣退助は片井くんの突き出した拳をくらうと、軽く突き出したとは思えない威力で吹っ飛んだ。


「い、板垣さぁぁぁっん!」

「い、板垣死すとも……自由は……死せ……ず」


 慌てて駆け寄ると板垣退助は倒れ伏したまま空に手を伸ばし、あの名言を口にしてパタリと力尽きた。

 力尽きた板垣退助は、光の粒子となって天へと昇っていく。


「なんか……弱くね?」

「弱いよな?」

「お前もそう思った?」


 消えていく板垣さんを見ながらヒソヒソと見物していたクラスメイト達が話している。


「片井、お前アビリティでそんな強くなったのか?」

「いや、軽く小突いただけのつもりなんだけど……」


 片井くんはそう言って、地面を軽くトントンと叩いている。

 叩かれた地面はひび割れたり陥没するようなことはなく、ただそこに大地として有り続けている。


「つーことは、柳野のアビリティが弱かったのか?」

「あれだろ? 板垣退助なんてのを選んだのが悪かったんじゃないのか?」

「まぁ、歴史上の人物って言っても強さで有名になったんじゃなくて、自由民権運動の主導者だから有名になったんだろ?」

「そうだよ。強いやつ呼べば良いんだって」

「強いのって?」

「やっぱあれじゃね? 宮本武蔵」

「ああ、あれな。二天一流?」

「あれだろ? ヴァガボンド」

「よし、柳野! 次は宮本武蔵だ」


 宮本武蔵? ってのは……刀二本持ったおっさんの浮世絵みたいなの見たことある気がする。

 俺としては宮本武蔵って言ったら、侍学園サムライハイスクールのムサたんなんだけど、みんなが言ってるのは違うよな。

 歴史上の剣豪……えっと……巌流二一流の宮本武蔵だろう。

 とりあえず、板垣退助の汚名返上するためにもまじめにやろう。


「よし……宮本武蔵」


 俺の呼びかけに答えるように目の前の地面に先ほどと同じく紋様が描かれる。

 すごいな。

 板垣退助とは比べものにならいくらい身体の中の何かを持って行かれた感じがする。

 きっとこれが、魔力なんだろう。

 みんなが口を揃えて強いと言うぐらいの剣豪なんだから、きっと強さに応じて消費する魔力も増えるんだな。

 これは、期待が出来そうだ。


 そして、光が収まるとやつが姿を現した。


作中作列伝

【侍学園】

 「私……恋も剣も負けません!」がキャッチコピー。

 恋にバトルに悪戦苦闘する主人公は宮本伊織なのだが、伊織の姉妹スールである武蔵お姉様――読者にはムサたんと呼ばれる――の人気が圧倒的で主人公の影が薄い。

 完結済みで、最終的には恋も剣も伊織の勝利で終わったが、最後の人気投票で主人公のくせにブービーというボロ負けに終わるオチがついた。ある意味伝説の作品。

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