彼と彼女らが同期なんですが?
ギリギリセーフ
短め
32
カストロ髭の男の言葉で、もともとうるさくもなかった部屋を完全に静寂が支配した。
もしかしたら老け顔なだけで歳は意外と若いのかもしれない……なんて一瞬考えたが、カストロ髭の男の顔はどう考えても老け顔なんてレベルではない。
目尻の小じわや肌の張りとか、どう見ても40代ぐらいにしか見えない顔だ。
そんな男が自分たちと同じ冒険者に新規登録し、初心者コースの受講までするとは誰が考えるというのか。
「え? ホントに?」
「あぁ……」
信じられない様子で聞き返したショートの子の言葉にカストロ髭の男は言葉少なに頷いて答えた。
カストロ髭の男は肯定しているが、ショートの子はそれでも信じられない様子だ。
その気持ちはよくわかる。
俺だってまったく信じられない。
お茶目心から出た教官なりのジョークだよ絶対。
しかし、カストロ髭の男の言葉は真実だった。
「おう。遅くなって悪いな」
そんなことを言いながら、教官と書かれた腕章をつけた男がまったく悪びれた様子もなく部屋に入ってきたのだ。
でも、まだ信じられない。
だって、どう見てもカストロ髭の男の方が年上で強そうだし、教官っぽいんだ。
「ひぃ、ふぅ、みぃ……よし、全員いるな。俺が今日から1週間お前達の面倒を見る教官のピロシキだ。6級冒険者で、嫁さん募集中。あ、お前らみたいなガキは趣味じゃないから、俺に惚れるなよ」
教官――ピロシキはショートの子とお下げ髪の子を見ながら、そう言って大口を開けて笑った。
さっきお下げ髪の子を責めていた様子から、ショートの子ならピロシキの言葉に何かしら反応しそうなものだが、まったくの無反応だ。
それもそうだろう。
未だにカストロ髭ショックから回復していない俺たちには、ピロシキの言葉は半分ぐらいしか頭に入らなっていなかった。
「とりあえず、1週間はお前達でチームを組んでもらうわけだからな。自己紹介と行こうか。じゃ、お前から」
「はいぃ」
ピロシキに指名されたお下げ髪の子が立ち上がった。
俺とショートの子は未だに衝撃から立ち直れないが、彼女はそもそもカストロ髭ショックを受けているのだろうか?
なんだか、ほんわかしていてそれらしい様子が見られない気がする。
「フィアですぅ。運動は得意じゃないですがぁ、水魔法のアビリティがありますぅ。不束者ですがぁ、今日からよろしくお願いしますぅ」
結婚でもするんでしょうか?
なんか、不束者ですがほにゃらら~って言われると嫁入りだと思ってしまうのは、俺だけじゃないはずだ。
お下げ髪の子――フィアは頭を下げると椅子に座り直した。
「ん? おい、どうした? 続けろよ。次はお前だぞ」
カストロ髭ショックから回復し切れていないらしいショートの子は、俯きながらぶつぶつとなにやら呟いていたが、ピロシキに言われてようやく意識が回復したのか、慌てた様子で顔を上げた。
「あ、はい! すいませんでした教官! リングよ。アビリティはスカウティング系で斥候なら任せてちょうだい。一応、そこのお馬鹿とは幼なじみだけど、だからってこの子の面倒をアタシに押し付けようとするのはやめてよね」
「えぇ~、リンちゃんひどいよぉ」
私面倒なんてかけないもん、とフィアは頬を膨らませた。
そんなフィアを無視して、席に座ったショートの子――リングに続くのはカストロ髭の男だ。
「デンだ」
カストロ髭の男――デンは、名前だけ名乗ると席に着いた。
え? それだけ?
まぁ、見るからに前衛で戦士とかの役回りだって事は分かるけどさぁ……
リングとか、明らかになんでその年齢で冒険者になったんだよって空気を出してるのにそれは無視ですか?
いや、俺だって気になるよ。
だけど、実はちょっと心当たりがある。
そう、彼はきっとギルドの隠れ審査員とかそんな役なのだ。
他の初心者コース参加者に混ざり、教官とは別の視点から俺たちを評価する役目があるに違いない。
ただまぁ、どう考えても不自然さが際だって溶け込めるとは思えないけど……
まぁいい。
とりあえず、次は俺の番だろう。
「柳野 葉太です。諸事情により使い道がかなり微妙な英霊召喚がアビリティです」
「英霊召喚!?」
デン以外の全員が驚きの声を上げた。
デンも、声こそ出さないが驚きに目を丸めている。
王様も知ってたけど、英霊召喚ってそんなに有名なアビリティなんだろうか?
正直、偶然にも武蔵が召喚できなかったら、俺には超微妙なアビリティだったんだけど……
「そりゃあ、すげぇな。伝説のアビリティじゃねぇか」
「伝説……ですか?」
カクトーの書記官も活躍が期待できるみたいなことを言っていたが、そんな大層なアビリティだとは一言も言っていなかった。
まぁでも、その力を知っているだけにその評価も至極真っ当なものだと理解できる。
なにせ、あの武蔵を再現できるのだ。
本人曰く、諸々の事情が重なって100%全盛期の力を再現できているわけではないが、俺が侍学園で見ていた武蔵の能力と比較した場合はほとんど全ての力を再現できているらしい。
作品としての侍学園が終わった後にさらなる成長を遂げると言われて心底驚いたが、作中時点の実力で十分最強と呼べるだけの力を持っていたのだから、作中での実力さえ再現できていれば、全盛期の力を再現できなくても問題はない。
閑話休題。
ほとんど完璧に俺の知っている武蔵を再現できる英霊召喚なのだから、過去に英霊召喚のアビリティを持っていた勇者が活躍できるのも納得だ。
まぁ、その勇者はよほど勉強熱心だったのか、歴史マニアだったのかのどちらかだったのも影響しているだろう。
知識がなかったら板垣さんみたいにまともに再現できずに活躍もなかっただろうからな。
「どんな英雄を召喚できるんですかぁ?」
「いや……まぁ、諸事情でね……俺が名前だけ知ってるような英雄を最初に召喚しちゃって……」
「それだと何か問題でもあるのか?」
「あの……英霊召喚って、その英雄のことを知ってれば知ってるほど英雄の能力を忠実に再現できるんですよ……だから」
俺の言葉で皆が納得したような顔をした。
彼らも、板垣さんは使い物にならないと理解したのだろう。
実際、名前と名言1つしか知らない板垣さんの再現率は武蔵とは雲泥の差だ。
「よし、まぁうん。アビリティの話はここまでにするか。さっそく講義を始めてくぞ」
せっかくの伝説的なアビリティを無駄にして、となんとも微妙な空気になってしまったが、ピロシキが場の空気を無理矢理変えて講義を始めた。
講義が始まるギリギリまでリングは、こいつ使えないんじゃないのか? みたいな目で見ていたが……うん。
まぁ、これからきっと3人目で評価も挽回できるように頑張ろう。
偏頭痛で死にそうな中書いたので、短いのと話が進まないのと遅くなったことは勘弁してください。
あとで修正するかもしれません
2020/03/30 サブタイ間違ってた
彼と彼らが同期なんですが? → 彼と彼女らが同期なんですが?
2020/03/30 後半に加筆




