俺の能力なら俺自身は安全みたいなんですが?
書き忘れてましたが、作中世界において異世界召喚系の物語は、王道が主流です。
クラス召喚系やスローライフ系、追放されたら強くなるような物語はほとんど存在しません。
つまるところ、「なろう系」が存在しない世界です。
02
「力……ですか?」
「はい。皆様の世界にはアビリティはないのでしょう? この世界では、誰もが1つ以上のアビリティを持っています」
能力……ね。
どうやらこの世界で与えられるのは職業とかではないみたいだ。
技能とかとは違うんだろうか?
物語なんかだと勇者を召喚したはずが○○だったとかって展開もけっこう人気だけど、勇者じゃないとかの理由で蔑まれる心配はなさそうだな。
「アビリティは様々なものがあります。勇者様方であれば、この世界で生まれ育った私どもよりも強力な力が使えるのです」
「ちょっといいですか?」
「はい」
お姫様の話を遮って挙手したのは、クラスでも俺と比較的親しい御宅 重雄くんだった。
彼が手を上げてなければ、俺が手を上げるところだった。
俺と同じような知識を持っている彼もたぶん俺と同じ疑問を持ったのだろう。
「アビリティって言うのは、戦いに向いているものだけなんですか? もし違うとしたら、俺たちの中に戦いに不向きなアビリティの人間がいたらどうなるんでしょう?」
そう。
今のところ勇者という肩書きはこの場にいる全員に与えられるようだが、この世界の人間が求めているのは戦うための勇者だ。
アビリティとやらが具体的にどんなものかは分からないが、仮に手に入れたアビリティが調理だったとしたら、どう考えても戦いに向いているわけがない。
戦えないのならばお前は勇者ではないと追い出されてしまう可能性は、クラスメイト全員がまだ同じ立場にあるうちに排除しておかないとな。
「そのような心配はご無用です。たしかに直接的な戦いに不向きなアビリティもありますが、アビリティさえあれば戦う勇者様方をサポートすれば良いのです」
こちらが不安に思うことは予め対策済みなのか、お姫様はまったく考える素振りも見せずに即答した。
どうやら、戦えないということが即ち勇者失格という訳ではないようなので安心――まただ。
どうにも表現が難しい、なんとも言えない違和感に再び襲われる。
なんなんだこの違和感は……
「わかりやすい例ですと、鑑定のアビリティがあります。鑑定のアビリティは戦場において敵を倒すことはできませんが、敵の弱点やどれだけの実力を持つのかといった情報を得ることができます。戦えなくとも十分に有用です。その他にも――」
お姫様は具体的な例を挙げて、戦闘に不向きなアビリティであっても切り捨てることはないと説明していく。
一通りの説明が終わったのか、お姫様は一呼吸置いて部屋の片隅に置かれた水晶を指し示した。
「あちらの鑑定玉にて皆様のアビリティをお調べいたします。順番に並んでアビリティを確認しましたら、書記官にご報告ください」
書記官?
誰かのことかと誰もが疑問に思ったところでお姫様の後ろから1人の男が部屋に入ってきた。
彼が書記官なのだろう。
俺たちは近いやつから順番に水晶に触れていく。
自分に特別な力が与えられたって言うのは、厨二病を発症していなくとも男の子であれば心躍って然るべきだろう。
水晶に触れて自分のアビリティを確認したやつから、書記官に自分のアビリティを伝える。
その時、書記官から軽くアビリティの説明があるようで、説明を受けたクラスメイト達は喜んでいるやつと肩を落としているやつに分かれていた。
「っと、俺の番か……」
前のやつがいなくなったので、水晶に触れると頭の中に情報が流れ込んでくる。
イメージとしては、ゲームのステータス画面だな。
――――――
体力値:240
魔力値:3800
アビリティ:英霊召喚
――――――
情報量は少ないが、こんな感じだ。
数値が多いのか少ないのかは分からないが、物語の定番だと召喚されたんだからけっこう多いんじゃないだろうか?
「アビリティはなんだったでしょうか?」
「あ、英霊召喚ってやつでした」
「なんと!? すばらしい」
お? この反応はもしかして、当りのアビリティなのか?
「英霊召喚は、古の英傑をこの世に顕現させるアビリティです。魔力値はいくつでしたか?」
「3800ですね」
「こちらも素晴らしいですね。一般人の平均は20ほどですし、魔法兵でも500もあればエリートコース一直線ですよ。さすがは勇者様ですね」
やっぱり数値は高かったんだな。
しかし、魔力値が高いとどんな影響があるんだ?
召喚している間、魔力を消費し続けるのか? それとも強いのを召喚するには多くの魔力が必要なのか?
「かつて召喚された勇者様は、そのアビリティで大活躍成されたんですよ。此度の勇者様も期待できますね」
「そうですか? いやぁ、活躍できると良いんですが……ぁ?」
頭が痛い……
違和感を感じたと思ったら、ガンガンと頭が痛み出した。
「どうなさいました? 大丈夫ですか?」
「あ、いえ……大丈夫です」
心配そうに書記官さんがのぞき込んできたが、痛みは一過性だったようですぐに引いた。
この世界に召喚されてからなんか変だ。
「大丈夫なら良いのですが……」
「大丈夫ですよ。説明の続きをお願いできますか?」
「はい。英霊召喚は、召喚した英傑に指示を出して戦わせる戦い方になりますね。戦術を勉強なされば、素晴らしい戦果を出せるでしょう」
「そうですか。わかりました。ありがとうございます」
俺は、書記官さんにお礼を言って次のやつと変わる。
しかし、古の英傑を召喚するアビリティか……
歴史嫌いなんだよな……
まぁでも、俺自身は前線に出ないで済むみたいだし、身の安全はなんとかなりそうだな。