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力のない自分が恨めしいのですが?

前話の終盤を変更しました。

協力の見返りに武蔵の力を提供するという方向性は変えていないものの、切り出し方などが変わっています。

お時間のある方は再読いただけると幸いです。

27

 俺たちは会議室を出て練兵場へとやって来た。

 俺たちとドリンコ王国が協力するに当たって、俺たちの提供できるものが武蔵の力であると宣言したことで、具体的にどれほどの力があるのかを示せという話になったのだ。

 ジーナさんの報告では、敵対するのは無謀だという話らしいが彼女も武蔵と実際に戦ったわけでもなく、武蔵の力を疑問視する声もあるらしい。

 そもそも、一国と協力関係を築けるほどの武力を一個人が有しているなどと言われて、誰がすぐに信じられるというのか?

 侍学園という作品を知っている人間であれば、武蔵なら当然だと考えられるだろうが、あいにくとこの世界には漫画やアニメと言った文化は存在せず、侍学園という作品を知っている人間も存在しない。


「さて、実際の所彼女はどれくらい強いのかな?」


 練兵場の外壁に立つ俺の横に来たプラムさんがそう言った。

 彼曰く、王様をはじめとしたあの会議に出席していた面々は、武蔵の力をかなりのレベルで認めているらしい。

 そんな彼らでも武蔵の力が実際にどれほどのものなのかはわかっていない。


「たぶん、一対一なら勝てる人間はいないと思いますよ。多対一でも、よっぽど強い人間を集めないと傷一つ負わせられないでしょうね」

「そんなにかい?」

「えぇ、まぁ……」


 思わずため息をこぼしてしまう。

 プラムさんだけでなく、王様や他の会議に出ていた面々もジッと興味深げに練兵場の中央に立つ武蔵へと視線を向けている。

 武蔵の正面に立つのは、近衛騎士でも反武蔵派とでも言うべき人間だそうだ。

 この反武蔵派とはなんなのか?

 そもそも、王様達が武蔵の力を認めているのにもジーナさんの報告以外の理由がある。

 俺たちが昨日ギルドに魔石を売ったことで、ギルドから情報が来たんだそうだ。

 昨日俺が話した15メートルのオーガが実際に倒されたことを魔石という物証が事実だと証明している。

 ギルドで起こした騒動の件でもギルドの責任者からも報告があったらしく、普通の冒険者ではまったく相手にはならないのも分かっているらしい。

 話を聞くまで知らなかったが、15メートルのオーガというのは国が総力を挙げて対処するレベルの魔物であり、個人が討伐することなどほとんどありえない話で、勇者やこの国の最高戦力であるクロノスナイツという厨二心溢れる名前の騎士団でも多数の被害を出しながらようやく倒せるレベルらしい。

 少なくともそんな化け物を倒せる力を持つというのだから、ドリンコ王国としても友好的な関係を築こうと考えるのは当然だと言う判断なんだそうだ。

 それだけであれば、武蔵という武力を提供すると一言言えば、それでいいとも思える。

 しかしながら、どこにでも異を唱える人間はいるそうで、武蔵の力を信じようとしない派閥があるのだ。

 15メートルのオーガから取れた魔石は、二級魔石と呼ばれるレベルのものだったそうで、それを用意することは不可能ではないらしい。

 勇者を召喚したとは言え、正攻法の戦争では歯が立たないカクトー王国が、ドリンコ王国を内部から崩すための策略で俺たちが来たのだと主張する人間。

 純粋に個人で二級魔石を持つような魔物を倒せる人間がいるわけがないと主張する人間。

 そんな人間たちがけっこういたおかげで、昨日の会議はなかなか終わらなかったんだそうだ。

 そこで、王様達が考えたのは、武蔵の力を証明することを条件に俺たちへの協力をするという方向で話をつけたらしい。

 そう、先ほどの会議で俺たちが提供できるものを尋ねてきたが、そもそもドリンコ王国は武蔵の力だけが目当てだったし、そう言い出すと分かっていたのだ。

 俺は掌の上で踊らされていた哀れなピエロなのである。

 俺みたいな人生経験も少ない劣等生が、海千山千の宮廷闘争を経験しているような人間に勝てるはずもないが、なんとも情けない話だ。


「始まるようだね」

「おぉ!?」

「終わりか?」

「何が起きた!?」

「オラン殿、見えたか?」

「むぅ……」


 プラムさんが始まると言った次の瞬間には勝負がついていた。

 武蔵は全く動いたように見えないが、正面に立っていた騎士は地面に倒れている。

 ざわざわと周りは戸惑っているが、何が起きたのか分からないのだろう。

 武蔵の力を知っているので、武蔵が何かしたのはわかるが、俺にだって何をしたのかはまったくわからない。

 達人と言われる人間にだって武蔵の剣閃は見ることすら敵わないのだ。

 オランさんでも何が起きたのか分からないだろう。

 さすがに手加減しているようで、ダメージらしいダメージがなかった騎士はすぐに立ち上がって武蔵になにやら叫んでいる。

 武蔵達の立つ場所からここまでけっこうな距離があるので、何を言っているのかはまったくわからないが、騎士の方が文句を言っているようだ。


「またやるのか?」

「彼女は何を持っているんだ?」

「棒か?」

「ずいぶんと短いようだが……」


 周りが言っているように武蔵が何かを手に持っている。

 おおかた、剣で相手をするには相手が未熟すぎると手加減としていつも持ち歩いている簪を手にしたのだろう。

 侍学園でも何度か見た光景だ。


「始まるようだ」

「おぉ!」

「むぅ?」


 今度は誰にでも見えるよう武蔵にしてはゆっくりと動いている。

 相手に剣を振らせ、それをすべて紙一重で避けるのだ。


「防戦一方ではないか」

「やはり、先ほどは何かの拍子に倒れただけだったのだろう」

「ふん。見てくれは良いが、剣の腕は近衛に勝てるはずがなかろうよ」

「奴のアビリティで陛下達を洗脳しているのではないのかね?」

「身体を使っているかもしれませんな」

「それはありえる。はっはっは」

「陛下達を溺れさせるとは、ぜひとも私も味見してみたいものだ」


 武蔵なら、相手に剣を振らせることなく簪一本で相手を制圧することすら赤子の手をひねるよりも簡単な話なのはわかりきっている。

 それをあえて剣を避け続けているのは、先ほどのように一瞬で勝負をつけては自分の力を常人に理解させることが出来ないとわかっているからだろう。

 しかし、それをわからない人間には武蔵が防戦一方に見えるのだろう。

 プラムさんがこっそりと反対派だと言っていた男達が声高に武蔵を罵っている。


「どうした小僧?」

「あの女と一緒に来たらしいが、あの女の男か?」

「ふん。カクトーの犬がそのような目で見るとは生意気だな」


 武蔵の力を知らないで馬鹿にする人間など無視すればいいのだ。

 彼女は無知な人間の言葉で汚されるほど弱くない。

 武蔵だったら、こんな連中は取るに足らない人間だと無視することだろう。

 しかし、俺は自分でも気づかないうちに手をギュッと握りしめ、反対派の連中を睨み付けていた。

 これはあれだ。

 アニメや自分の好きな作品を無神経に馬鹿にされた時に似ている。

 こんな都合のいい話はありえない。

 こんな人間いるわけがない。

 アニメや漫画なんて下らない。

 あの時もまったく同じ反応をしてしまったが、言い返すことができなかった。


「武蔵を馬鹿にするような言葉は取り消せ」


 しかし、今回は状況が違う。

 武蔵は存在する。

 俺の好きな作品の、俺の好きな女性が実在しているのだ。

 そして、その彼女が自分は俺の剣だと言ってくれた。

 一時的なことなのだろう。

 義理堅い彼女のことだから、自分を召喚した――自分を生み出したことを恩と考えて、そこまで興味のない俺の力になってくれているだけだろう。

 俺程度では、伊織のように無条件に力を貸そうと考えるほど評価している人間ではないだろう。

 だが、それでも彼女は俺に手を貸してくれた。

 自分は俺の剣だと言ってくれたのだ。

 そんな彼女を何も知らないからと言う理由で馬鹿にする人間を許せない。

 すぐに自分たちの間違いを思い知るとしても――武蔵が許すとしても、俺は許せない。


「小僧が何か言っているな」

「自分たちの計画が思う通りに行かずに焦っているのでは?」

「そうかもしれませんな。はっはっは…………は?」


 俺が彼らをどうにかする前に武蔵は自分の力を証明してしまったようだ。

 一方的に攻めていたはずの騎士は地面に倒れ、その背中を踏みつけた武蔵がこちらを見ている。

 その顔は、何かを慈しむ――伊織を見るような表情だと一瞬思ったが、武蔵の表情などまったく見えない距離なので、ただの俺の勘違いだろう。


この作品はコメディメインです……コメディメインのはずなんです……


なんかシリアス?

なんでだ!?

なんとか軌道修正せねば……


ちなみに、質問ですが読者的には今回の武蔵視点とか見たいですかね?

武蔵視点にするか、そのまま話を続けるか迷ってます。

感想などでご意見いただければ、参考にさせていただきます。

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