今後のことを話したら雲行きが怪しいんですが?
前の話をスキップした方へのあらすじ(箇条書き)
・葉太の母親は飯ウマ
・葉太のマザコン疑惑
・葉太お家へ帰りたいと号泣
26
異世界生活3日目の朝を迎えた。
昨夜は、武蔵の前で号泣するという恥ずかしい一幕もあったが、もう大丈夫だ。
一頻り泣いた後には、武蔵が受け取ってきてくれた夕食を食べて、少し前まで眠っていたのにそんなことはなかったように泥のように眠り、気がついたら朝になっていた。
なんでも、王様達ドリンコ王国側の会議もなかなか終わらなかったらしい。
俺が起きていようとも話の続きはどうせ今日になっていたと聞いて少しだけ安心した。
メイドさんが運んできてくれた朝食をゆっくりと食べ終えたところで、案内されたのは昨日と同じ会議室だった。
扉を開けた先には、昨日と同じ顔が同じ場所に並んでいる。
「さて、体調はもう大丈夫かな?」
「はい。心配ありがとうございます」
部屋に入ってすぐインテリさんは昨日と変わらずこちらのことを思いやった一言をくれたので、お礼を言いながらもう大丈夫だと答える。
ドリンコ王国側の人たちはほとんど徹夜みたいな状況だったらしいのにそれが表に出ないのは人生経験の差だろうか?
そんな益体もないことを俺が考えていると、咳払いを1つした王様が口を開いた。
「まず最初にお前が気になっているだろうことを言っておこう。お前の言葉を全面的に信用はできぬが、事実という前提で我が国はお前に協力していこうと考えている」
「…………ありがとうございます」
初っぱなから王様は俺が一番気にかけていたことを宣言してくれた。
立場的に偉そうな物言いしかできないけど、本当は優しい人なんじゃないだろうか?
「さて、基本的にヨータくんと国のやり取りは僕が窓口になるから。よろしくね?」
「はい。よろしくお願いします……えっと」
インテリさんなら優しそうだし安心だな。
他の人だと、めっちゃ強面だから緊張しちゃうし、助かった。
しかし、よくよく考えれば俺はインテリさんの名前も知らない。
「そう言えば、こちらは自己紹介もしてなかったね。僕はプラム・ヨロシ、この国で外務局の副局長を務めてます」
「ガイムキョク?」
外務局という言葉に俺が首を傾げると、プラムさんは苦笑してから簡単に説明してくれた。
要約すると外務局は、他国とのやり取り全般を一手に引き受ける日本で言うならそのまんま外務省のことらしい。
すると副局長ってことは日本で言う副大臣ってことだよな?
インテリさんまだ30ぐらいにしか見えないけど若いのにめっちゃ偉くない?
「近衛騎士団団長のオラン・ジーナだ」
強面だけど渋い感じのダンディおじ様が簡単に名乗った。
ジーナさんの……お父さんかな?
歳は50近そうだけど、プロレスラーみたいな体つきで強そうだ。
「宰相のカートン・ドー・モーリスだ」
宰相ってあれじゃないの?
文官のトップとかそんな感じだと思ってたんだけど……歳はオランさんより上に見えるのに、体つきと威圧感が半端ないんですけど?
見た目は絶対に文官とは思えない。
「フィリップ・ドー・モーリス将軍だ」
親子だ。
絶対カートンさんの子どもだ。
名前じゃなくて、顔がそっくりだ。
体つきもそっくりだし、フィリップさんを見た限りではカートンさんも昔は将軍だったんだろうな……
「さて、自己紹介はここまででいいな。話の続きだ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「協力はするが、まずお前達の話が真実だと調べる必要がある」
それはまぁ、当然だろう。
俺は自分がスパイじゃないと知っているが、それを証明することは出来ない。
あちらだって証拠もなしに話を全て受け入れるなんて当たり前だ。
「こちらもヨータくんの話はほとんど信用してるけど、裏取りはどうしても必要だからね。疑うのが仕事の人を納得させる必要があるんだ」
「ミヤモトには気づかれるだろうから先に言っておこう。お前達には監視もつける」
オランさんの言葉に、あくまでも形式的にだけどね。とプラムさんが付け足した。
「この国におけるお前達の身分は我の名において保証しよう。拠点には城の部屋も提供する」
「ありがとうございます」
かなりトントン拍子に話が進んでいくな。
ありがたいことだけど、なにか裏があるのか?
チラリと武蔵に目を向けるが、当の彼女は薄く笑みを浮かべるだけで何も言おうとはしない。
「しかし……」
「え?」
「これらはあくまでも、お前達がカクトー王国の行いの被害者であり、我が国に敵対する意志がないことを理由とした人道的な支援だ。長くこの国に留まるようであれば、徐々に支援は減らしていくことになるだろう」
「でも……協力するって……」
最初に協力すると言ってくれたはずだ。
それなのに減らすと言われたら困ってしまう。
「どのような協力関係を築いていくのかはこれから話すことだ。我が国の提供できるものは人手とこの世界の情報の提供などだな。それで、お前達は何を提供できる?」
「提供って……」
「自分たちが被害者であるからと無条件に我らの手を借りるというのはいささか虫の良すぎる話ではないか?」
「ヨータくん、キミは元の世界でただの学生だったというからわからないかもしれないけど、僕らは慈善事業で国を動かすわけにはいかないんだ」
そんなことを言われても……
どうすればいい?
俺が提供できるものなど元の世界の情報ぐらいしか思いつかない。
ちらりと武蔵に目を向ける。
俺が召喚した彼女は俺の力と言えるかもしれない。
しかし、一個の人格を持っている彼女を道具のように自分の力だとは言い難いものがある。
「はぁ……言ったでしょう?」
俺がチラチラと見ていることなど最初から分かっていた武蔵は呆れたようにため息を吐きながらそう言った。
彼女と何を話した?
俺は彼女になんと言われた?
お膳立てはしたから後は自分で頑張れと言われたのだ。
でも、俺はどう頑張ればいいのかも分からない。
よほど情けない顔をしていたのか、武蔵は苦笑しながら俺の額を指で軽く弾いた。
「私はあなたの剣なのよ? 上手く使いなさい」
「あ……あぁ……」
そうだ。
武蔵に初めて救われた夜に彼女は確かにそう言った。
自分は俺の剣だと、彼女は俺の力なのだと。
「こちらが提供できるのは圧倒的な力よ。なにか問題あるかしら?」
自信に満ちあふれる笑みを浮かべた武蔵は、王様達に向かってはっきりとそう言った。
超難産だった。
2020/03/25 微修正 + 後半部分書き直し




