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お城に行くことになったんですが?

行くことになったというか、すでに着いている件。

中途半端に終わったし、中途半端なところから始めるより時間を飛ばさせてもらいました。

20

 何がどうしてこうなったのか全く分からないが、俺たちは城のテラスでお茶をしていた。

 ティーカップを傾ける武蔵と美少女――改め、ドリンコ王国第二王女のラミ・ドー・ドリンコの2人は優雅で品のある所作であるが、俺だけ場違いじゃないですか?


「ねぇ、私に仕えないというならどうするつもりなの?」

「さぁ? 彼に聞いてもらえるかしら」


 武蔵は紅茶を口にしながらも質問には素っ気ない態度で返し、ラミの矛先を全て俺へと押し付けてくる。

 ラミの方は恨みがましい目で俺を睨む……というのをワンセットにして、先ほどからこれの繰り返しだ。

 なんでこんな状況になっているのか。

 どうにもラミが武蔵を気に入ってしまったのが原因のようだ。

 なんでも、武蔵に斬りかかった騎士は年若いながら近衛騎士でも有数の使い手だったらしい。

 その彼が手も足も出せずに負けるなんてことは今までに見たことがないのだそうだ。

 そんな実力者である武蔵を見つけてしまったのだから、これはもう自分に仕えさせるしかない。と言うのがラミの言である。

 思いついたら即行動とばかりに勧誘したが、即座に断られたというわけだ。

 しかし、それで諦めることはない。

 だが、あまりしつこく誘い続ける勇気はなかったのか懐柔策に出ようとしたようで、俺たちを城に招待したのである。

 それにはラミを追ってきた騎士達が猛反対したのだが、ラミ自身はそれで折れるようなことはなく、お姫様の強権を持って俺たち――というか武蔵の招待を強行した。

 お茶をしているすぐ側で、武蔵を警戒していることを隠そうともしない騎士さん方の視線が痛い……

 しかしまぁ、俺にとってはチャンスと言っていいだろう。

 絶対にそうだとは言い切れないものの、詰め所でジーナさんの監視をしていた男の人の反応を見る限り、この国はカクトー王国とは友好的ではない。

 そうであるならば、このドリンコ王国の王族と直接会話できるのは情報を集めるだけでなく協力を取り付けられるチャンスにも恵まれたと言うことである。


「そう言えば、なんでラミ……様は騎士の皆さんに追われてたんだ?」


 何の気はない、本題をキリ指す前にラミと友好を深めるようと軽い世間話をふったつもりだったのだが、ピシリと空気が凍り付いたようだった。


「あんた……馬鹿なの?」


 ラミは心底から呆れたという表情でそう言った。

 武蔵でもないのに出会ってすぐ馬鹿とか言わないでくれ。

 自覚はしてるんだ。


「普通聞く? 私が騎士に追われてたんだから状況なんて想像つくでしょ?」


 ん?

 あぁ、なるほど……城から抜け出して、それに気づいた騎士さん方に追われてたわけだ。

 たしかに少し考えれば分かることかもしれないけど、馬鹿扱いするのは酷くないか?

 俺と武蔵で態度が違いすぎるだろ。


「でも、なんで逃げ出したんだ?」

「…………あなたには人の気持ちを考える脳みそがないの?」

「いや、人の首筋にナイフ押し当ててくるお姫様には言われたくない」

「うっ……」


 俺の返しにラミは苦い顔をする。

 武蔵に剣を向けられたことで、自分の命が危険にさらされる恐怖を知り、自分のやったことを後悔しているのだろう。


「…………退屈だったのよ」

「退屈?」

「あんたみたいな庶民にはわからないでしょうけど、高貴な血筋に生まれた者は相応の義務があるのよ」


 そう言ってテラスから庭園を見下ろすラミの横顔には哀愁のようなものが感じられる。

 お姫様に生まれるってのも楽じゃないんだろうな。


「姫……嘘はいけませんよ」

「っげ!? ラッテ」


 突然お茶会に乱入してきたのは鎧に身を包んだ女性だった。

 ラミは彼女の乱入で、どうにも気まずい表情を浮かべている。


高貴なる者の義務ノブレスオブリージュなどあなたが実践しているところは見たことがありません」

「み、見てないところでやってるわ」

「そうですか。それは、昨夜ジーナを買収して城から抜け出してから城に戻るまでにやったことですか?」

「…………」


 いったいなにをやったんだ?

 ものすごく目が泳いでるし、冷や汗がすごい。


「きゃ、客人の前よ! 控えなさい」

「客人? 被害者の間違いでしょう?」


 どうやら彼女は俺たちの事情を知っているようだ。

 明らかに悪いことをしたのに王族に剣を向けたからと武蔵に剣を向けた彼らと違い、俺たちを被害者としてお姫様を責めているんだな。

 どう考えても俺にナイフを向けるのは、お姫様に生まれた義務とはかけ離れてるよ。


「あなたたちは姫を連れて行きなさい。部屋の前には常に2人で待機、窓から脱出することもありえますから窓の下にも2人はつけておきなさい」


 窓から逃げ出すって……本当にお姫様のやることか?

 ちょっとお転婆が過ぎるだろう。


「お、覚えてなさいよラッテ!」


 そんな捨て台詞を残してラミはメイド服の女性方に引きずられていった。

 あれが、お姫様に対する行動として正しいんだろうか?


「さて、お見苦しいところをお目にかけました。私はラッテ・ドー・ブレンド。近衛の中隊長を拝命しています」

「はぁ……」


 中隊長ってのは当然、大中小で小隊長のジーナさんより偉いんだろう。


「お二方には姫がご迷惑をおかけして申し訳ありません。そのことも含め、陛下がお二人とお話がしたいと仰っております。ご足労おかけしますが、ご同行いただけますか?」

「えぇ、いいわよ」

「武蔵!?」


 まさかの即答である。

 ちょっと武蔵さん? 俺、マナーとかぜんぜんわかんないんですよ?

 ラミはお姫様ってのよりもラミという迷惑をかけてきた生物だと思って接したからよかったけど、王様と対面する自信なんてない。


「話があるのはこちらも同じよ。さ、行きましょ」


 ティーカップを置いて席を立った武蔵は颯爽と歩き出した。

 幾分早足になって前に出たラッテさんの後に続いてテラスを後にする。


「あの……俺も行かないとダメなの?」


 立ち上がる間もなくテラスから2人が消え、唯一人残された俺はポツリとそうこぼす他なかった。


ちなみにラッテは公爵の娘でラミの従姉妹。


2020/03/19 名前の訂正

ラッテ・ダイ・ドー・ドリンコ → ラッテ・ドー・ドリンコ


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