どうにも釈然としないまま解放されてしまったんですが?
またエタったと思ったか?
俺もだ。
だが、エタってはいなかったのだ!
14
「ヤナギノ! お前はまた嘘をついたのか!?」
椅子に座り直したジーナさんがそう叫ぶけど、またって何だ!?
またもなにも、誤魔化そうとはしてるけどさっきから嘘はついてな――ん? いや、ついてないはずだたぶん。
「いや、ですから嘘はついてないです」
「そうなのか? 嘘はついていないと言っているぞ?」
ジーナさんは扉の前に陣取る男の方へ振り返りながら非難の声をあげる。
素直かっ!?
チョロすぎるぞジーナさん。
「ですから、それが嘘かも知れないのです。黒髪でありながらジャポネを知らないと言うのですから、彼らはきっとまたぞろ馬鹿なカクトー王国の王族が召喚した勇者なのではないですか? 彼らが来た方角も南ですし」
あ、ジーナさんの見張りさん大正解。
俺は、そのお馬鹿なお姫様の被害者です。
それにしても、馬鹿扱いしてるしこの国はカクトー王国とは敵対してるのか?
そうだとすれば保護を求めたりもしたいけど、本当に敵対しているという保証はない。
実は同盟関係にあって、脱走した俺を探すための罠とかだったら目も当てられない結果になるだろう。
「ふむ……だが、それをどうやって確かめるのだ?」
ジーナさんは顎に手を当て思案顔でそう言った。
「どう、とは?」
「言葉の通りだ。カクトー王国にこんな人間が我が国に来たが、彼らはお前達が召喚した勇者をスパイとして送り込んだのか? と聞くのか?」
そりゃ無理だな。
本当にスパイだとすれば、馬鹿正直に答えるはずがない。
「いえ、そうではなく……彼らを尋問し、本当のことを調べるためにこうしているわけですから……」
見張りさんは、思いもかけなかった返しをジーナさんにされているのか、しどろもどろになっている。
それとも、あまりにも馬鹿なこと言われてどう説得するのか戸惑ってるのか?
「だから、どうやって本当のことを調べるのだ? 嘘をついていると決めてかかり、何を言っても嘘だと言うのか? もしかしたら、彼らの両親はジャポネからどこかに移住したんじゃないのか? ジャポネのことを何も教えないことだってあり得るだろう?」
「っう……」
「お前は彼らが黒髪でありながら、ジャポネを知らず、南から来た。それだけで彼らが嘘をついていると言うが、十分にありえる偶然ではないのか?」
「それは……そうです……ですが!」
「もういい。話はこれまでだ。ヤナギノ、ミヤモト、悪かったな。存分に観光を楽しむといい」
ピシャリと見張りさんを押し留めたジーナさんはそう言って席を立った。
疑わしきは罰せず、というのは日本では常識だが、これでいいんだろうか?
王族とか貴族がいる世界なんだから、もっと法律関係は進んでないと思うけど……
まぁいい。
行っていいと言うんだから、下手にこちらか蒸し返す必要はない。
「それじゃあ……失礼します」
俺は一応、2人に頭を下げると武蔵と2人で詰め所を後にした。
年内最後……だと思う。
飯食った後に興が乗ったら、もう一話行くかも知れないし、完成したら年を越してるかも知れない。
とりあえず、「よいお年を」と言っておきます