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13/57

思いっきり不審者なんですが?

短め

12

 日が昇った。

 この世界に来て2日目である。

 どこの世界であろうと朝日ってやつは綺麗なもんなのは変わらないらしい。


「おぇ……おえぇぇぇぇ……」


 綺麗な朝日の下、四つん這いになった俺は酷く嘔吐いていた。

 吐き気がヤバいです。

 もうあれだ、なんかこう……武蔵が精神操作を壊してくれた時よりキツい。


「軟弱ね」

「おぇぇぇぇぇ」


 嘔吐く俺の背をさすりながら呆れたように言う武蔵の言葉に返事も出来ない。

 この強烈な吐き気の原因のくせに何を言うのか、嫌みを返す余裕もない。


「だ、大丈夫なのか?」

「大丈夫でしょ」


 心配そうに問いかけてきたのは俺たちを召喚したカクトー王国の人間――ではなく、この門番さん曰くカクトー王国の隣にあるドリンコ王国王都の門番さんだ。

 門番さんもまさか王都の目の前で嘔吐するやつが現れるとは思ってもみなかったのだろう。

 洒落じゃないし、そんなことするやつはシャレにもならない。


「おぇぇ……む、武蔵ぃ……お前ぇ……」


 少しだけ吐き気が収まったので恨みがましい感じで武蔵を見る。

 この吐き気の原因は武蔵なのだ。

 そもそも、俺たちがいるドリンコ王国の王都はわずか数時間で到着できるほどカクトー王国の王都と近いわけではない。

 では、どうやって俺たちがここまで来たかと言えば、走る武蔵に担がれてきたのだ。

 もう、揺れる揺れる。

 首はがっくんがっくんなるし、スピードはヤバいし、川や丘をジャンプで越えるから、武蔵が跳ねる度に上下運動まで加わるのだ。

 武蔵の背中にゲロをぶちまけなかったのを褒めてもらいたい。

 というか、嘔吐いている俺の背中を撫でる優しさがあるなら、なんで移動にはあそこまで容赦がなかったのかと問い詰めたい。


「なにか文句でもあるのかしら?」

「…………ありません」


 睨まれたら何も言えないよ……

 そりゃあ、出来るだけカクトー王国の王都から離れたいと言ったのは俺だよ。

 だけどさ?

 俺は夜のうちに隣の町に移動して、情報を集めるのと同時にゴブリンやオーガの魔石を換金して移動資金にするとか考えてた訳ですよ。

 それがまさか……こんなことになるなんて思わないじゃん。

 いきなり遅いとか言い出して、担がれたと思ったら猛ダッシュとか誰が予想できるんだよ。

 国境越えるとか完全に予想外だって……

 口元をぬぐいながらふらつく足になんとか力を込めて立ち上がる。


「大丈夫なのか?」

「ええ、まぁなんとか……」


 心底心配そうな表情でこちらを気遣ってくれるあたり、この門番さんはお人好しなんだろう。

 門の前にものすごい速さで来たかと思えば、いきなり嘔吐するようなやつは普通気味悪がると思う。


「それで……ああ……お前らは何者だ?」

「不幸な旅人……ですかね?」


 ないな。

 自分で言っててなんだそれはって思う。

 こんな風に門番がいる可能性はあると思っていたが、どうやって説得しようかは歩きながらでも考えようと思っていたのに武蔵コースターのおかげでそんな余裕は微塵もなかった。

 案の定というか、門番さんは訝しげな表情を浮かべている。


「この街に来た目的は?」

「…………か、観光?」


 これも失敗か?

 やっぱり物語の定番で田舎から仕事を探しに来たとかそういう系の方がよかったか?


「賊とかではなさそうだが……」

「ああ、完全に不審者ではあるよな?」


 ああ……

 門番さんたちが完全にこちらを不審者扱いしてコソコソと話している。

 どうするのが正解だったんだろう……


2019/09/28 国名変更 ハイム王国 → ドリンコ王国

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