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精神操作をされていたらしいんですが?

設定吐き出し回

後日修正するかも知れません

10

 パリンと何かが割れる音がした。

 次いで襲いかかってきたのは強烈な頭痛と堪えようのない吐き気だ。


「おえ、おぇぇぇっ」

「どう? 少しは気分がよくなったかしら?」


 蹲って嘔吐いている俺を見下ろしながら、剣を振り下ろしたムサたんがそう問いかけてきた。

 最悪だ。


「ぐ……最高に最悪の気分だよ。どうもありがとう」


 精一杯やせ我慢して立ち上がりながら、笑みを浮かべて皮肉ってやる。

 彼女の言う通りだな。

 気持ち悪い。

 ついさっきまでの俺は確かに心底気持ち悪かっただろう。

 何がお姫様の役に立つ、だ。

 何がこの世界を救う、だ。

 お姫様が俺たちを駒扱いしていた発言を耳にしたって、自分の身を犠牲にしてでもこの世界を救わないといけないなんて、気持ちの悪いことを本気で考えていた今までの俺はどうかしていた。

 精神操作ってやつだろう。

 元の世界に帰りたいだとか、自分の命を危険にさらすことを忌避するなんて考えをさせず、お姫様やこの世界のことを第一に考えるような細工が召喚された時になされていたようだ。


「あら、いいのよお礼なんて。その代わり教えてもらえるかしら? ここはどこであなたは誰?」

「俺は柳野やなぎの 葉太ようた、平和な日本からここラグヘンズとかいう異世界に召喚された哀れな被害者ってやつかな」

「ラグヘンズ……異世界召喚……ね。私はなぜその異世界とやらにいるのかしら? あなたと同じで召喚されたの?」

「俺は、この世界に来たことで英霊召喚って能力を手に入れたんだ。過去に実在した英雄や英傑を召喚する能力らしい」

「つまり、あなたは私にとっては未来の人間って事かしら?」

「いや、俺にとってキミは漫画のキャラクターだ。どういうわけか、実在していない漫画のキャラクターが召喚できたんだ。もともと、俺が召喚できたのは、俺の世界の歴史に実在した宮本武蔵って男の剣豪を召喚したんだけど、なぜかキミが召喚できた」


 俺がそう言うと、ムサたんはそれ以上質問を続けず、顎に手を当ててなにやら考え込んでいる。

 しかし、一番好きな漫画の一番好きなキャラクターが目の前にいるってのはすごいな。

 感動する。


「あなたの能力にはどんな制限があるのかしら?」

「制限? ああ……今の俺が召喚できるのは2人、板垣退助と宮本武蔵だけだ。召喚するには魔力を使うらしくて、召喚する相手によって消費も変わるらしい。あとは、召喚する相手のことを詳しく知っていれば知っているだけ強くなるし、知らなければ知らないほど弱くなる……ってぐらいかな?」

「なるほど……つまり、あなたは実験世界群記録情報アカシックレコードにアクセスして、人間を作り出す能力を持っているのね」

「え? なにそれ?」


 アカシックレコードってあれだろ?

 物語によく登場する世界の記録とかで、過去から未来まであらゆる情報が記録されている何かだ。

 そんなものが実在するのか?


「あなた、物語ってなんだかわかるかしら?」

「そりゃあ……抽象的すぎて説明が難しいな」

「だったら、どうやって作られるかはわかる?」

「え? そんなん、作家が自分の思いついたものを書いてるんだろ?」

「そこが少し違うのよ。作家は物語を思いついているんじゃない、別の世界の記録をのぞき見ているの」

「は? え? 意味分からん」

「世界はいくつも存在する。世界はいくつも並んでいて、世界の狭間という世界によって全てがつながっている。

 作家は別の世界の情報を受信して、それをあたかも自分が思いついたものだと勘違いして物語として描いているのよ。

 実際は、別の世界の歴史を文章に興しているだけね」

「いやいや、それはおかしいだろ?

「なぜ?」

「だって、世界がつながってるとか情報を受信とかそんなんあるわけない……」

「だったら、あなたはこの世界がなんだと思っているのかしら? 世界は壁のようなもので遮られているけれど、それに穴を空けたことであなたたちはこの世界に連れ込まれたのでしょう?

 別の世界の歴史を垣間見るのは、霊能力や超能力の一種だと思えば理解できるんじゃないかしら?」


 …………言われてみれば納得できる部分もある。

 だけど、情報がなんか理解の範疇から外れすぎていて意味が分からない。

 漫画やアニメの世界が俺たちのいる世界とは別の世界として実在している?

 行ってみたい。

 なんで俺は、この世界に召喚されたんだ? どうせならアニメや漫画の世界に行きたかったよ。


「話が逸れたわね。アカシックレコードは、そんなあらゆる世界の情報を記録しているわ。

 そのアカシックレコードにアクセスして、自分の知っている英雄を構築する、そのためのキーになるのがあなたの持つ知識であり、知っていれば知っているほど再現性が増す」

「構築とか再現って……つまり、キミは俺の知っている漫画のムサたん自身じゃないってことか?」

「ムサたんって……まぁいいわ。そうよ。私はあなたの言うところの本物の宮本武蔵じゃないわ。あなたがアカシックレコードにある宮本武蔵の情報から私を作り出した・・・・・存在と言うことになるわね」


 人間を作った?

 俺のアビリティは人間を作り出す能力ってことか……

 なんて言えばいいのか……

 ムサたんの言っていることの全てが理解できたわけじゃないけど、すごい能力なんだろうな。


「伊織のために元の世界に帰る必要もないようだし、私は私の人生を歩まないとダメね。伊織には会いたいけど、私が伊織のいる世界に行ったら、私が2人いることになってしまうから伊織が混乱してしまうもの」


 あ、やっぱり伊織が中心の考えなんですね。

 さすがはムサたんです。


ちなみにこの実験世界群の設定(世界はつながっている、作家は別の世界の情報を受信して物語を書いている等)は、ししだの書く作品全てに共通する設定です。

本編に関係ないので詳しくは書きませんが、実験世界郡内での設定であるため、私たちのいるこの世界が実験世界群の中にある世界でない限りは他の作者様の作品がこの設定の中にあるものとは見なしておりません。


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