最期の日
天気は快晴。
「安静にしてなきゃだめだよ」
アイリスさんに言われた言葉を思い返しながらアイリスさんに心の中で謝る。
今日は箱の男との決戦から二日目の朝。まだ本調子ではないもののだいぶ動けるようになった俺はアルマさんに会いにギルドに向かっていた。アルマさんからの申し出を断るためだ。
アルマさんやザイードさんたちとパーティーを組むのも楽しそうだが、俺はフレインとそして時々ソフィと一緒に気楽に依頼をこなしていくのが性に合っている気がする。
ギルドまであと五十メートルくらいのところでギルドに入っていこうとするアルマさんをみかけた。俺は声をかけようと、
「おーい、アルマさ――」
ドンッ
背中に衝撃と妙な痛みを感じた。
「っ!?」
よろめいて足がもつれ地面に倒れてしまう。
なんだ? 苦しい。息が出来ない。
「お、お前が悪いんだぞ! お前がオレを……」
声のする方を見上げると、そこには震えた手で血だらけのナイフを握るコンラッドの姿があった。
俺は背中に手をやる。粘着質の液体が流れ出ている感触がある。その手を見るとどす黒い血液がべっとりとついていた。
「カイルくんっ!」
異変に気付き駆けつけたアルマさんが俺を抱き起こす。コンラッドは通行人に取り押さえられていた。
「大丈夫っ! すぐ回復してあげるからね!」
……油断していた。まさか街中で魔物ならまだしも……人間に……襲われる……なんて……。
「カイルくんっ! カイルくんっ! しっかりして……」
アルマ……さんの声……届か…………ない…………。
「これ、いつまで寝ておる」
ごつんと頭を杖で殴られた。
「……え。ここは?」
俺の目の前には神様が立っていた。
「お主と会うのは十七年ぶりくらいかのう。ふぉっふぉっ」
立派な白い髭を撫でながら言う。
神様がいるってことは。
「……俺、やっぱり死んだんですか?」
おそるおそる訊く。
「ふぉっふぉっ、死んだ死んだ。あっけなく死におったわい」
神様が笑い飛ばす。
「あの、じゃあここは天国……ですか?」
周りは真っ白い空間で何もない。
「それがのうお主はまたも天国にも地獄にも行けんのじゃ」
「え!? どうしてですか? 俺今回の人生では結構いいことしたと思いますよ!」
自分で言うのもなんだがそれなりに人助けをしてきたはずだ。
「それらはすべて己の為じゃろ。見返りを求めず自ら率先して良いことを為す、それが善行というものじゃ」
ばっさりと斬って捨てられる。
「お主は今回もまた良いことも悪いこともなんにもしておらぬ。よって再転生じゃ」
「はぁ!? ちょっ、ちょっと待ってください。俺にはまだやり残したことが――」
「ほい」
神様が杖を振ると俺はまばゆい光に包まれた。
嘘だろこのくそじじいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぉぉぉぉぉおんぎゃあおんぎゃあおんぎゃあ。
俺はまた赤ん坊になっていた。




