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4.あなたの後ろに黒い影!

放課後、リリンと共に神崎さんの研究室に来た。頑丈そうな建物だけど…大丈夫かな…


「お待たせしました、神崎さん。」

「あぁ、来たか…」

「スポーツ科のビルは特別に固く作られているんだね、初めて知ったよ。」

「壊れやすい事に変わりはないがな…」

「ふーん…まぁいいや、とっとと始めちゃってよ、一応この後私と愛も組手するんだから。」

「そうなのか…?」

「模擬戦は私とリリンの日課になっています。」

「そうか…まぁいい、準備はできたか?」

「はい、どこからでも掛ってください。」

「では…行かせてもらう!」


思った以上に早いし…力強いな。ボーリングの球を投げた力はまだ本気ではなかったのか、これは受け流した方が良さそうだ…それでも命を賭けた戦闘経験が少ないみたいだ、まぁ当たり前か。素早さも思った以上にあるだけで私より遅いのに変わりはない。確かに強い…が、何より狂気も狡さも足りない。負ける事はないだろう。


「隙あり。」

「ぐっ!」

「愛…容赦ないね。」


隙ありと言って動揺した瞬間を狙って関節技出してみたけど…うん、これ喰らって意識が飛んでないって…神崎さんは化け物だな。


「愛、私と直に戦ったお前に問いたい…私には何が足りない?」

「狂気ですね。」

「!…」

「あなたは命を賭けて戦った事はありますか?」

「…お前にはあるのか?」

「さぁ?あるんじゃないかな?」

「憶えてないのか?」

「思い出せないんだよ。」


ちらっとリリンの方を見た、リリンは相変わらず感情の読めない笑顔を浮かべているだけだった。


「私の師匠も私には狂気が足りないと言っていた…狂気のない私ではこれ以上の成長は見込めないと言っていた…それでも私はわからない…その狂気が如何程に大事な物なのかを。」

「…桜、そんな物持たない方が人は楽しく生きていけると思うよ?」

「それはなんとなく知っている…私は今迄努力を惜しまず高みを目指してきたが…その狂気だけは望んでいいものかわからないんだ…たぶん求めたら後悔すると思い、足を止めてしまう。」

「何でそんなに強さを望んでいるんですか?」

「自分を高めていくためだ。」

「…守りたい人がいるならそれ以上は薦めませんが、ただ高みを目指したいだけなら止めませんよ。」

「あ、それに賛成。大事な人がいるならまだ止まれる内に止まった方がいいよ?」

「どちらの結論を出すにせよ、また練習相手が欲しかったら言ってください。神崎さんは友達だから何時でも相手しますよ。じゃあ私達はこれで。」

「…待ってくれ。」

「何?」

「お前達の模擬戦を見せてくれ。」

「「…」」


山奥で幾つものクレーターが出来ている場所が私達の模擬戦戦場だ。神崎さんには充分離れて見て貰う事にした。


「桜、これから見た事は絶対に誰にも言わないでね?言ったら後が怖いって思って?」

「神崎さん、リリンの言った通り絶対に言わないでくださいね?後、私達の強さも秘密にしてください。」

「わかった、約束しよう。」

「だそうだよ、腐れ腹黒。」

「これで一安心だね、猫被り狂人。」

「…お前達は友達じゃなかったのか?」

「「んな訳ねぇだろうが!腐れ縁だ!」」

「...そうか。」


その後二時間程の模擬戦という名の殺し合いが始まった。日頃の互いに対する鬱憤は毎日ここで晴らす。リリンの奴絶対に私を利用しようとしている…なんとなく私の勘がそう叫んでいる。友達のふりしているけど私の記憶喪失の理由は間違いなくこいつが関わっている。もう何もかもが怪しい…そんな奴と友達のふりをするなんて冗談じゃない!ストレス溜まるわ!


「…あ、プリンの材料買わないと。」

「何?何か忘れたの?」

「家でプリン作ろうかなーって思ってね。もう乱と約束していたんだよ。」

「そう?じゃあ今日はもうこの辺で終わりにしようか。」

「あれ?神崎さん、どうしたんですか?」

「お前達は何処でその技を学んだ?」

「うーん…こればかりは答えられないなー。」

「私は記憶にないけど何故か使えるんだよね…身体が憶えているのかも。」

「…私もここで修行していいか?」

「どうぞどうぞ。」

「感謝する。」


そして私達はそこで別れた。およそ校門を抜けてから知らない生徒に付けられてる…面倒だけど悪い子ではなさそうだし、刺激しないで話し掛けよう。


「あの…何をしているんですか?」

「…え!?あれ!?ま、まま…舞さん!」

「その呼び方はやめてくれるかな?愛でいいよ。」

「え…いや…でも…」

「兄と同じ呼び方されるのが嫌なんです。」

「は、はい!じゃあ…愛様…」


うーん…舞さんよりましだけど…まぁいいや。


「初対面ですよね?私は舞愛、あなたの名前は?」

「えっと…普通科の朝比奈レンです。」

「はじめまして朝比奈さん。何か私に用事があるの?」

「実は…その…ファンなんです!」

「え?」

「私…愛様のファンなんです。」

「そうなんですか、自分のファンに会えてうれしいな。それで…用事は何でしょうか?」

「えっと…取引に…来ました…」


まさかの。初対面の人に…しかもファンに取引って…


「何の取引ですか?」

「あの…私…ハッカーなんです!だからテレビの広告塔にハッキングして、愛様の素晴らしさをCMで流して…あ、バレても大丈夫です!責任は全部私が取ります!」

「…」


正気だろうか…?聞いてるこっちが目眩がする。え?引き受けてもらえると思ったの?


「だから!あの…決めポーズとか、マジックとか…映像に流したいのですが…協力して貰えませんか?あの…うまくいったら…褒めてくれると嬉しいというか…」

「…ねぇ、朝比奈さん。」

「何でしょうか?」

「それ、朝比奈さんが考えた案じゃないよね?誰が考えたの?」

「秋月カイっていう人で、愛様と同じクラスなんですけど…カイさんには先に広告塔で流した方がサプライスな感じがしていいって言ってたんですけど…やっぱり愛様に先に許可を取った方がいいと思って。」

「そうなんだ。先に聞いてくれてありがとう、朝比奈さん。でも私、あまり目立つのは好きじゃないんだ。」

「あ、そうなんですか?先に聞いておいてよかった…」

「朝比奈さん、私とあのクズ…カイとはとても仲が悪いの。冷静になってもう一回カイとの会話を思い出してみて?なんだか私とあなたを嵌めようとしているようにも聞こえるでしょ?」

「へ?…」


朝比奈さんの目から光が徐々に奪われていき、足に力がなくなって立つ事もままならなくなった。その場で倒れそうになった朝比奈さんを支えてそっと道の端に座らせた。催眠と思考誘導どっちも受けていたな…カイと私の仲が悪いと知らせてまず催眠が解けた。思考誘導の方は自分で会話の内容をゆっくり分析して嵌められた事に気付いて貰おう。


「あ…愛さん…」

「落ち着いてきた?もっと人の事を疑った方がいいよ?」

「そうですね…」

「まだ少し混乱していると思うし、家までエスコートしますね?」

「ありがとうございます…」


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