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2.騒がしい朝

私の通っている学校は青薔薇女子高といって他の学校と少し違い、特別な才能がある子を集めているクラスがある、成績よりも個人の技能を重視しているクラスだ。普段は普通の授業を受けているんだけど、そのクラスの生徒には個人の研究室があって、制服も個人の技能に合わせて作られている。


青薔薇女子高、普通科クラスの学生はどの子も全国試験の成績でトップを争う程優秀で全然普通でもなんでもない。普通科の他にも芸能科とスポーツ科のクラスがある、私はその中でもマジシャンをやっている芸能科の生徒だ。芸能科の制服は白い上着と個人の気に入った色のリボン、チェック柄のスカート、ガーターリングと長い靴下という何とも派手なデザインだ、そしてこのデザインをベースにして生徒それぞれの個性を出す為、デザイナーと生徒を呼んで個別の衣装を相談しながら色々付け加えたりしてようやく個人の制服が完成する。衣装にあまり気にしてなかったからそんな面倒な事はパスしてお任せでって言ったのがまずかった…私の制服はうさ耳の付いたシルクハットを被り、黒い花飾りで片方の髪に小さく三つ編みをして、黒い芸能科の制服の上にタキシードを羽織り、白い手袋をつけるのが私の制服となった…うさ耳シルクハットも辛いけど髪型まで決めて来るとはいやはや本当に恐れ入ったよ…これ着て外出しなきゃいけないと知った時は本当に参ったよ、自分の事はもっとしっかりするべきだったな。


「…」


私には人の死相が見える、通学路でバスから降りた目の前の少女の頭上に黒く10sと書いてあった。それは私にしか見えない字で所謂いつ死ぬかわかる死相だ。後三日内に死ぬ場合表示されて、私が何もしなければ表示された時間通りに死ぬが、私がその前にこれから起きる事を予測して動けばその人は死なずに済む。例えば、目の前の少女は後十秒で死ぬ、その場合どう死ぬのか?車道側で歩いているから上から物が落ちて来る心配はないな。どちらかというとポーチに付いているアクセサリーが車道側に向いていて危ない…すると私の後ろから頭上で黒く4sと書いてあった少年が早歩きで私の横を通り抜けた。同時に少女は歩くのを止めて向きを変え、向こう側の建物の表札を観察した後ポーチから何かを探そうと下を向いた。あ、これは…


「きゃ!」


後ろで動き出したバスが少女の頭に当たりそうな距離を横切った。驚いた少女は反射的に後ろに一歩引こうとて、少女の後ろを通ろうといた少年にぶつかる、少女のバランスが崩れて今度は前のめりに転びそうになった所を片手で抱き留め、もう片方の手で少年の襟首を掴み、思いっ切り後ろにジャンプした。さっき少年が転びかけた場所に鉄骨が落ちた。


「大丈夫ですか?」

「え…あ!はい!あ…ありがとうございます!」

「え…ええっと…」

「?」

「あ、ありがとうございます!」

「間に合ってよかった。ごめんね、突然襟首掴んじゃって。じゃあそういう事で。」


新学期早々とんでもない朝になったな…まぁいいや、早く学校行こ。


「おはよう、リリン。夏休みはどうだった?」


リリンは私が記憶を無くす前からの友達らしい…私が記憶を無くしても「時が来れば自然に思い出せるよ。」なんて事を言ってる時点で怪しさ満点なのだけれども…


「ヨーロッパと中国とアメリカで踊りの披露。中国では二回パーティーに参加したけどパーティー中に那由他と会ったんだよ。ヨーロッパでは野良犬に噛まれかけて大変だったな…」


リリンはダンサーでどんな踊りもある程度マスターしているけど自分が主に訓練している踊りはステージでは踊らない。リリンが普段訓練している踊りはステージの上で人に見せたり娯楽の為にある踊りではなく、リリンは練習をあまりしていない踊りを他人に見せたくはないのでそもそもあまりステージに立ちたがらない。余程重要な仕事でもない限り基本的に踊りの依頼は辞退している。つまりこの夏休みに世界を飛び回る程にステージで踊る事になったのはそれだけ重大な仕事も多かった訳だ。それに野良犬か…ヨーロッパにもいたんだな…


「ヨーロッパで野良犬に?珍しいね。」

「うん、最近ヨーロッパでも見かける様になったんだよね。」

「ふーん…一応気を付けてね?」

「はいはい、那由他の事は気にならないの?」


那由他は国際警察をしている友人だ。正義感の強い堅物で私の周りでも特に真面目で誠実で裏がない奴だが…関わっちゃいけない事件にまで避けずに追及して自爆しそうなタイプなんだよな…しっかりしているんだけど見ていて不安になる奴だ。


「うーん…那由他も正義感が強すぎる面があるからね、惨い死に方しなければいいんだけど…どうせあいつも海外飛び回って会う機会少ないし、次会ったらあまり無茶しない様にとだけ伝えてくれない?」

「別にいいけど、すぐに日本に帰って来るから必要ないと思う。あんたに手伝って欲しい仕事があるみたいだから、友人として気のない心配より実際に手伝ってあげたら?」

「え…」


いやだ。めんどくさい。


「まぁ、そう言わずに…」

「ご機嫌よう!愛!リリン!」

「あ、花宮さん、おはようございます。」

「おはよ!香織!元気してた?」


細マッチョなボディーガードを四人連れ歩き、黒いフェラーリを校内にまで乗り回すファッションアイドル花宮香織さんは一応同じクラスの人だ。大抵の人には呼ばれても無視するか「頭が高い!」と言って蹴り飛ばすというとんでも行動を起こす嫌われ者だが、困った事に私とリリンは花宮さんに気に入られてしまったらしい。私もリリンもあまりクラスで目立ちたくなかったんだけど花宮さんのせいで目立つ目立つ…


「どうですか?私達で派閥を作ってみませんか?」


青薔薇が共学ではなく女子高なのは生徒に恋愛なんかしてないで学業や自分を磨くのを優先して欲しいからだそうだ。同じ理由で赤薔薇男子高がある、ちなみに赤薔薇男子高と青薔薇女子高の理事長は同じ人だ。しかし男子高の方は知らないけど男子の目がないと女子は醜い争いを平気で行える訳で…まぁ、女子高にも派閥がある訳だ。あまり目立つと大変な目に会いそうなのでそれが派閥に興味を持たない私とリリンの目立ちたくない理由だ。


「ごめんね、派閥に興味がないんだ。」

「私も、偶に友達と遊ぶのはいいけど派閥はパスかな。」

「そう、残念ね…気が変わったら何時でも言ってくださいませ。お待ちしておりますわ。」


別れの挨拶を済ませてフェラーリで颯爽とすっ飛んでいった花宮さんを見送り、私達は教室に向かった。


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