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1.始まりは爆発音と共に

鳥の囀りと妙な爆発音と共に目を覚ます。新学期初日から遅刻しない為に一応アラームはセットしておいたけど、この一週間で睡眠時間は調整していたからアラームが鳴る五分前に起きれた。部屋の鏡の前で着替え始める。


「記憶を無くして二年になるのか…」


私の名前は舞愛、今記憶喪失で二年より前の記憶がない。自称友達からは「時が来れば自然に思い出せるよ。」と言われ、兄からは「無理に思い出さなくていい。」と言われた。一つだけはっきりしているのは私の体に邪神が宿っているという事だ。え?何言ってるのかよくわからない?まぁ…いずれわかるよ。


「起きてリンネ、ご飯だよ。」

「フニョ?」


リンネは私の部屋で飼っている猫で、私が記憶を無くす前からこの家にいる。兄曰く昔私が家に持ち帰って飼いたいと強請った猫らしい。記憶を無くした後で狼狽えていた私を支えてくれた心強い子で、同時に私がマジシャンとして活躍し始めた時からのパートナーでもある。


「おは…」


リンネにご飯を出した後部屋を出ると我が兄―舞乱が冷蔵庫の上で頭がずぶ濡れ状態のまま手足を交差して座っていた。私はこれ以上の会話に意味がないと判断し、冷蔵庫を開けて朝食の準備に取り掛かった。中がごみごみしてるな…牛乳と卵が見つからない、食パンにジャムでも塗るか。


「愛、僕に何か言うべき事があるんじゃないかい?」

「冷蔵庫の上に載らないでください、壊れます。」

「そんな些細な問題じゃない!君は冷蔵庫の中に隠しておいた僕のプリンを食べたんじゃないよな?」


兄は冷蔵庫よりもプリンの方が大事らしい。ついでにその発言が嘘だという事も分かった。私は邪神として人の噓を瞬時に見抜く能力を持っている、ちなみに周りには能力の事も私が邪神だという事も言っていない。だって向こうだって私に隠し事があるのに私が周りの誰かを信じて言う義務があるとは思えないから。兄が私の事を何処まで知っているかわからないけど、一応能力やら邪神やらの情報は伏せておこうと思う。


「家にプリンなんてあった?」

「あったよ!カスタードプリン!三つ!」

「…自白と取っていい?」

「…」


昨日作っておいたプリンを三つ冷蔵庫の別々の場所に隠しておいたけど…全部見つけ出して食べたらしい…恐ろしい食い意地だ。


「いや、僕の隠しておいたプリンを探している間に三つプリンを見つけてね…いや、愛が作った物だとは思わなかったよ!うん!」


目が泳いでいるぞ?家では二人暮らしだし、プリンは家にあった器に入れていたからどう見ても分かるだろ…そんな見え透いた嘘、言ってて恥ずかしくないのだろうか…


「でもそれはそれ、これはこれだ。観念して僕が隠しておいたプリンを返して貰おうか?」


凄まじい食い意地だ、もはや溜息も出てこない。トーストを焼いている間に台所を片付ける。あ…ジャム缶がない…


「乱、ジャム缶返せ。」

「は?返せは僕の台詞だよ、僕のプリンを何処に隠したんだい?」

「一から説明するのがめんどくさいけど…さっき乱がやっていた事を推理してみるね?」

「え?」

「まず、乱は冷蔵庫の中から偶然私が作ったプリンを見つけて食べた。食べ足りなかったから冷蔵庫の中を漁って他の二つも見つけ出して食べた。それ以上見つからなかったから今度は自分で作ってみようとした、そして失敗して爆発した。」

「…」

「その後私がリンネを呼ぶ声が聞こえて別の方法でプリンを手に入れようと思った。まず爆発で飛んだ自分が作ったプリンの残骸を台所で洗い流し、私がプリンをもっと作っている可能性に賭けてプリンを要求してきた。朝から面倒事はごめんと思う私なら冷蔵庫の中で見つけられなかったプリンを差し出してくれるのを期待して。わざわざプリンが三つあったと言ったのも反応を見て残りがあるか確認したかっただけなんじゃない?」

「で…どうしてそれがジャム缶と繫がるのかな?」

「どうせプリンを作る時にアレンジしようとでも考えたんでしょ?私が予定より早めに起きた分色々急いでいて戻す時間もない筈なのに無意味に冷蔵庫に上ったと。」

「それが君の推理かい?」

「そうだけど?」

「まだまだ甘いね…80点だ。」

「及第点じゃん。とっととジャム缶出せ。」

「そうだけどね…僕も推理しているんだよ?訳もなく冷蔵庫に上ると思うかい?」

「思う。」

「まぁ…ちゃんと聞いてくれ、君は二つ推理を間違えている。一つ目、ジャムを持ち出したのは戻す時間がなかったからではなく、時間稼ぎであわよくば君がお腹を空かせて耐え切れずにジャムと交換を条件に冷蔵庫からプリンを持ち出して僕に渡してくれればと思ったのだよ。そして二つ目、冷蔵庫に登ったのはあくまで君の面倒だから早く終わらせたいという気持ちを強くするためだ、面倒事の嫌いな君ならば僕の魂胆を知った上で折れてプリンを差し出してくれると思ったからだよ。」


そう言いながら袖の下に隠していたジャム缶を取り出して乱が謎の踊りを始めた。


「ちなみに今答えを言ったのは君がプリンを差し出すのを待ちくたびれたからさ、さぁ!残ったプリンをくれ!」

「だからないって。」


途端にがっくりしてしまった乱の手からジャム缶を取り上げた。ジャムパンを食べている間に兄はずっとがっくりしっぱなしだった。


「…そんなにプリン食べたいなら帰りに買っておくよ。」

「僕の分の朝食は?」

「自分で用意しろ。」

「…」


そのまま私は学校に向かった。


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