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13怪盗前の泥棒

「今回はなんで遅かったんだい?」

「え?派閥を作ろうと思ったから。」

「…え?」

「派閥って知らないの?女子高の名物だよ?食べてもたぶん美味しくないけど。」

「いや…派閥自体は知ってるけど…女子高によくあるの?」

「派閥が無かったら女子高とは言えないレベルであるよ?」

「…そ、そうなんだ。それにしても愛が誰かと群れるなんて…」

「意外?」

「うん…まぁ…」


私も好きで群れているんじゃないんだけどな。


「学校は楽しいかい?」

「え?…うーん…」


自分の信者に会えたし…


「楽しいかな。」

「友達いっぱいできるといいね。」

「へ?」


とも…だち…?別に意図的に増やす事ないんじゃないかな?


「友達は別に沢山欲しくない。」

「あれ?じゃあ何の為に派閥を作ったんだい?」

「対外的に飾り立てる言い訳なんていくらでも見つかるけどさ、女子が自分から派閥を作る理由は二つしかないよ。」

「え?…何?」

「身を守る為か戦う為だ。」

「…」

「私はどっちだと思う?」


私はそう言って固まっている乱を置いてドアを閉めた。


「明日は博物館の水の幻石のお守りか…はしゃぐ乱と同じく予告状送って喜んでいる怪盗の相手しなきゃいけないなんて…茶番になりそうだな…リンネ、頼んだよ?」


リンネは私の意図を読み取った後、窓から外に出て行った。今頃猫の会議でも開いてくれているんだろうか。


「そろそろリンネ達の報酬でも用意しておこうかな。」


そしたらドアをノックされた。


「愛!少しいいかい?」

「…何?」

「水の幻石と博物館についておさらいしておこうかと思ってね。」

「そんな必要ないと思うけど。」

「そうかな?意外と相手は手強かったりするんじゃないかい?」


乱に化けた誰かは私の目の前で乱特有の謎のポーズを取った。それにもっとちゃんと決まった腹立たしいポーズだ。そのポーズを取った経験はこっちの方が長いだろう、つまり…


「…そうだねぇ…一つ聞いていいかな?」

「なんだい?」

「乱が変なポーズや踊りをしているのって…まさか、もしかして、間違っても…あなたのせいじゃないよね?」

「…愛?」

「初めまして!乱の踊りの師匠でーす!…とか…言わないよね?」


笑顔で手に持つドアノブを握りつぶした。今迄乱の踊りに対する怒りが…どす黒い感情が…オーラになって体の外に溢れていくのを感じる。


「そういう奴が本当にいたとしたら…」

「し、し、し、失礼するよ!」

「させないよ!」


持っていた金属製のトランプを数十枚乱に化けた誰かが逃げだそうとした方向にあるのドアや窓に向けて投げた。乱のドッペルゲンガーは当たりそうになったトランプを踊る様に避ける。


「ちょ!ここ君の家だよね!いいの?え?マジ?」

「ここで会ったが百年目…」

「いや、僕達初対面だよね?」

「…ねぇ、何で逃げるの?お兄ちゃんは可愛い妹の事がそんなにコワイノカナァ?」


家に仕組んだ対侵入者(主に乱)用の罠を使う。照明にトランプを投げると地面から縄が出てきて乱の偽物を縛った。


「ちょ!」

「だいじょうぶだよ?あいはやさしいからちょっといたいのがまんすればすぐにむこうのせかいにいけるからね?」

「全部ひらが…」


縄で捕まった乱の偽物が消えた…えぇ…幻石能力かな?どちらにしろ逃げられたな…壊した家具はちゃんと直そう。ただ、さっきの奴は明日対峙する怪盗と関係がありそうだ。あいつの事…聞けるなら聞き出そう。


「乱、昨日何処行ってたんだよ?泥棒が来てたの知ってる?何も盗まれなかったと思うけど、逃げられちゃったんだから。」



朝ご飯のパンを食べながら愚痴ってみた。


「…うん、いたみたいだね…」

「ねぇ、幻石探しよりも犯人捜ししようよ!一度逃げられたから舐められてまた盗みに来ちゃうよ?」

「…また来ると本気で思っているのかい?」

「勿論だよ!何かあの泥棒妙に乱と似ていたし!乱の知り合いかもしれないし!ひょっとしたら家に何か用事があったのかもしれないし!…また来るよね?あの人。」


最後は笑顔で言った。そいつ知り合いなんだろ?連れて来いよ。


「…そ、それよりもさ!博物館だよ!博物館の幻石について話そう!」

「うーん…そうだね。あいつ、縄で捕まえたのに消えたし…私の勘からして幻石能力と関係していると思うんだ。だからまずはちゃんと幻石について調べないと…また逃げられちゃうよね。」

「…」

「そういえば昨日の泥棒はカラーコンタクトを付けてたね。カラーコンタクトを付けているとさ、目から感情が読み取りにくくなっちゃうけど、乱はカラーコンタクト付けてなくてよかった。乱が私に隠し事なんてないかもしれないけど…念の為に、ね?」

「は…ははは。愛、あまり人を疑うのはよくないよ?」

「探偵がそれ言う?」

「愛は探偵じゃなくてマジシャンじゃないか。」

「そうだね。人の目を欺く仕事だよね。自分が人を騙しておいて、人を疑わないと思う?」

「…」

「逆に疑っているから騙しているとも言えるけどね。お互いに言いたくない事や隠し事はあると思うけどさ、前にも言った通り、あからさま過ぎるとこっちも反応に困っちゃうな。」


そして私は持っていた水の幻石について書いてある新聞をテーブルに置いた。


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