名探偵邪神

11白河音さんの見た目は幻石能力じゃなかったみたいです

「那由他は赤薔薇の生徒だったんだね。」

「まぁな、探偵の仕事が忙しくて殆ど行ってないけど。あと、マジックダンスショーだっけ？凄かったよ。リリンと本当に仲いいんだな。」

「よくはない。」

「そうなのか？」

「似た者同士お互い利用し合ってるだけだよ。」

「まぁ、深くは追及しないけどさ。あれで結構お前達も赤薔薇の生徒にいい印象残したみたいだな。ファンもできたんじゃないか？」

「そう？楽しんでもらえてよかったよ、それより…」

「白河音さんの事か？」

「うん…どう思う？」

「悪い奴かどうかは知らんが、あいつ…結構噓つくぞ？大丈夫なのか？」

「大丈夫って何が？」

「いや…お前、あいつに惚れたんじゃないのか？」

「え？そうなの？」

「違うのなら何で聞いたんだ？」

「うーん…知り合いだったって言われたけど知っての通り私今記憶喪失でさ。本当に知り合いだったのかな？」

「お前は昔から色々隠していたし、あいつも意味もなく嘘をつくからな…お前達が知り合いだったかどうかは知らないとしか。」

「そうなんだ。」

「あいつの事が気になったのはそれだけが理由か？」

「いや…雰囲気が気になるんだ。只者じゃないのはたしかだと思う。」

「そうか？ただの嘘つきにしか見えないけど…」

「身長以外ではあらゆる面で負けてそうな気がするんだ。」

那由他は驚きのあまり目を丸くして固まり、数秒後ようやく口が動いた。

「誰が？」

「私が。那由他もあれくらいの実力があればもう少しは事件の黒幕についても言えるし、もっと協力してもいいんだけどな…」

「あいつの合気道は確かに凄いが、それ程か？」

「…わからないの？」

「は？」

「まぁいいか、それより白河音さんについて教えて欲しいな。仲いい人とか。」

「そうだな…嘘を平気でついて場を乱すからあまり仲がいい人はいないな。どちらかというと人の群れに勝手に入っていって勝手に場を乱している時が多いな。」

「いつもどんな嘘をついているの？」

「確か…自分が巨大組織のボスだと言ったり、身分証明書は偽造しているとか、自分は王族出身だとか、組織に問題があったから学校休んだとか、空飛ぶペンギンを見つけたから授業に遅れたとか…」

「…ふーん。」

「お前は白河音さんの何処が好きなんだ？」

「え？何で突然？」

「いや、あいつが手を振った時に振り返していたじゃないか。お前が白河音さんにべた甘だったって皆言ってたぞ？」

「ベタ甘って…皆私が白河音さんと話していたの知ってたの？」

「まぁ…実際に白河音さんが集合時間に集まらなかったりして玄貴が探しに行って、何していたのか玄貴に聞かれたら『うさ耳のお姉さんをナンパしていた。』って笑顔で答えて、玄貴も見たって言ってたからな。それに、偶に白河音さんがステージでお前に笑い掛けたらお前も笑い返していたじゃないか…自分のショーでは無表情だったくせに。」

「う…でも白河音さんの笑顔を見ると本当に表情が緩んじゃうんだから仕方ないじゃん…」

「来た赤薔薇の生徒の中でももっと美形な奴はいっぱいいただろ？現役ホストとかアクションスターとか…」

「え？あぁ…そんなのもいたね。」

「…」

「でもやっぱり白河音さんには見劣りしちゃう気がする。あ、それこそもしかして白河音さんは幻石能力者だったのかな？」

「は？なんで？」

「人の見た目でこんなに動揺したのは初めてだし…ひょっとしたら能力かも。」

「それこそ考え過ぎじゃないか？白河音さんの見た目は悪くないと思うが、今日周りの話を聞く限り芸能科の生徒と比べるとやっぱり芸能科の生徒の方がいいって言われている場合が多いらしいぞ？」

「そうかな…」

「でも、よかったよ…」

「何が？」

「お前からそんな素直な笑顔が出て来るなんてな。」

「えぇ…」

「最初はお前の事を胡散臭さの塊だと思っていたけど、そんな笑顔が出来る奴は根っからの悪人じゃないからな。悪い奴じゃないと改めて確認できてよかった。」

「…」

一応邪神なんですけど…反応に困るな。

「でもあんまり白河音さんの言う事を鵜呑みにしない方がいいぞ？少ししか話してないけどあいつ…かなり噓つくから。」

「それは知ってるけど、悪い人ではないと思うんだ。」

「お前は勘が鋭いからな…お前が言うならそうなんだろう。」

「まぁ、いい人だとも言えないけどね。なんか裏で色々とやってるだろうし…普通なら警戒していたんだけどあの笑顔を思い出すだけで心が揺らいでしまいそうで怖いな…」

「…」

那由他が呆れた目でこっちを見ているけど表情が元に戻らない…笑ってるだけなんだけど恥ずかしいな…

「でも白河音さんについては本当に深く関わらない方がいいと思う、悪い人ではないけど甘い人ではないと思う、変に探りを入れたら国際警察もただじゃすまないんじゃないかな？」

「そんなに怖い人なのか？」

「絶対に裏で色々している思うし、実力も相当あるよ。あとあの見た目はやっぱり幻石能力かな…」

「見た目がよくなったり人を魅了する幻石能力なんて聞いたこともないんだが…」

「え？じゃああの見た目が素なの？」

「だろうな。」

「お…驚いたな…」

私…邪神なのに人間の見た目で動揺するんだ…器の感性が残ってるのかな？それとも昔白河音さんと何かあったのかな？

「じゃあ、ここまででいいよ。エスコートありがと。」

「あ、待って！最後に一つ。」

「なん…」

那由他の洗脳を解こうとした瞬間、那由他が両手を私の首に伸ばした。伸ばされた手を片手で弾き、洗脳を無事に解いた。

「あんたも偶には気を付けてね。あいつの部下はどこにでも潜んでいるから。」

「…」