正義の刃は折れずとも
どうもどうもお久しぶりです。この番外編を読んでからでも本編は楽しめる内容になってると思いますので!?まぁはい読んでいってくれればうれしいなということでよろしくお願いいたします。
魔王サタンに体を売った者は契約者としての契を永遠に所有する事になる。
また自分の名前もその記憶から抹消され、サタンという名前だけが記憶に刻まれるのだ。
だが、もちろんサタンは力を貸すために体を買った訳では無い。
利用する為…その一択だった。
……………………………
「お腹すいたな…」
齢16の少年はサタンに体を売りサタンの所有者となった。しかし、少年はその事実を受け入れられず、断固拒否。そして二日経った今もこうして鉄の扉に引きこもっているのだ。
本来はサタンもこの少年の精神を乗っ取るつもりだったが長年の闘いで酷く弱っていた。そして、今も少年の体の中で力を温存する為眠っている。
「僕が魔王…サタン…。」
少年は寝そべっていた床から起き上がり机の上にあった鏡を覗く。
「しかし本当にこのまま…サタンになるのなら…」
そう呟いた後、あの玉座を見つめた。
僕はあの玉座に座る勇気なんて…。
ましてや…魔王として魔王群を治めていく自信が無い…。
すると何の予兆もなく扉が開き、見覚えのある顔が現れた。
「…っ…父さんッ!?」
いきなりで驚いたが父さんは二人の魔王郡幹部に連れられ、ここへ案内されたらしい。
「今更…ッ…何戻ってきたんだよ…っ」
「剣…っ…すまなかった…」
剣…一体誰のことだ…?父は泣きながら地面に縋り付くが幹部共に鎖を繋がれ自由を奪われている。
「そうか…。サタンに名前を奪われたんだな…っ…。」
「少しの間、対話する時間を設けてあげましょう。貴方も懺悔する時間が欲しいのでは…?」
第三幹部のベリアルが父の鎖を外し、微笑んだ。
「ッくく…ベリアルは平和ボケしそうで危なっかしいですねぇ…」
もう1人の幹部、第五幹部のサトゥルヌスはケタケタと笑いながら扉の外へ出ていった。それに続いてベリアルがこちらに一礼をする。
そして、この部屋には僕と父さん二人だけになった。少しの沈黙の後、少年の口が開く。
「僕を売った金で何をした…?」
「母さんの病気を…治すための薬を買ったんだ…。魔王群には…最高神であるオーディン家の女を助ける為と言ったら…絶対に力は貸してくれないと思ったんだ…だから」
「だから…?僕を…売ったって訳…っ?」
「それは…ッ…本当に申し訳ないと思っている…っ…」
「申し訳ない…ッて…僕はもう魔王としての契を永遠に所有する事になったんだぞ…っ?…オーディンの血を…魔王サタンの血で…穢したんだ…っ!」
「違う…ッ!!」
「何が違うんだよッ!?何も違わないっ!」
少年は涙を溢れさせ、父を睨む。
「剣…お前は剣だ…サタンなんかじゃない。」
「剣…?」
「お前の本当の名前だ…」
剣…。僕の本当の名前は…つるぎ…。
「…それに俺がここに来たのは謝る為ではない…お前を助けようと思ってここに来たんだ…。」
「助ける…?僕を…助けに…?」
父は剣の手を両手で握ると、優しく微笑み頷く。その瞬間冷たい冷気が一気に僕らを包み込んだ。
「助ける…ですか…それなら話は違いますよ、お父様。」
僕と父さんの後ろには不気味な笑みを浮かべたサトゥルヌスと漆黒の翼を広げたベリアルが立ち、こちらを見下ろしていた。
「このお子ちゃまはサタン様の所有者となったんです…はい、ここまでは理解してますよねぇ…でも…?でもですよ?それを助けに来たとすると…貴方…私達との約束を破ったということになってしまいますよねぇ?えぇ?」
サトゥルヌスは父親の顔を覗き込み、頬をじっくりと舐めった。
「…ゔゥ…ェ…駄目、食えない…。」
「分かっているのなら味見なんてしなければ良いのに。」
二人は素早く後退りをする。そして父さんは頬を腕で力強く脱ぐるとバッと奴らに向かい、僕の前で仁王立ちした。
「私はお前達との約束なんぞ鼻から破るつもりだった。私の大事な息子を…お前達に渡してたまるか…ッ!」
父さんは主神の槍グングニルを腰元から取り出し構えた。
「1度手放した息子を取り返しに来るとは滑稽のコケコッコォ…ッぶフ…今の笑えない?ベリアルゥっ…くけ…っ…」
「少し黙ってなさいサトゥ。」
ベリアルは両手から禍々しい魔力を溢れ出させ、ゆっくりと父に向かって近付いていく。
「父さん…っ…」
「…安心しろ剣…私が必ず…ッ!!」
父さんとベリアルは、ほぼ同時に攻撃に入った。魔力と槍が激しくぶつかり合い、耳を塞ぎたくなるような金属音が響き渡った。
「うるさいぃいッ!!」
「サトゥ貴方が1番煩いですよ…」
「じゃあー…剣君と遊んでまーす。」
「ッ!?」
サトゥルヌスがジリジリと近付いて腰が抜けた僕の足をガッチリと掴む。
「うわぁああッ!!嫌だっ…ァあっ…!」
「剣!!」
父さんが僕の方へと走ってサトゥルヌスの頭をグングニルで貫く。
「ッぎゃあああァ!!!」
恐ろしい叫びをあげ、サトゥルヌスは床をのたうち回った。
「父さんっ…!!」
「剣…大丈夫か…?」
僕の周りに父さんは防御魔法でシールドを張った。しばらくはこれで耐えてくれと優しく僕に言う。
「…はぁ…サトゥルヌス…。お芝居はやめなさい…恥ずかしいですよ…?」
「…ッあぁあ…あァなんちゃってぇ。」
グングニルで貫いた所はすっぽりと穴が空いているが血も吹き出しておらず、脳みそも何もない只の空洞が覗いていた。
「やはり何かしらの闇魔法で防御しているな…。」
「一応…貴方も神の末裔なんですから。この程度の魔法ぐらい後略してもらわないと困りますね…。」
「グングニルが通用しないなんて…」
剣は体の震えを両手で抑え込む。
「そりゃあグングニルは強いですよぉッ!でもねぇ…君のダディがそれをちゃんと使いこなせているかが…問題です、はい。」
「どういう事…父さん…ッ?」
「ッ…お前は何も気にしなくていい…。」
父さんは少し何かを考え、そして僕を抱き締めた。
「父さん…ッどうしたの…」
「…愛している…お前の事を…。これからも…ずっと…ずぅっと…。」
父は涙を一筋流すと槍を額に当て語り掛けた。
「オーディン様…眠っておられるのですか…。」
そして次の瞬間、槍で自身の心臓を突き貫いたのだ。
「父さんっ!?」
「剣…ッ…ごめんな…私にはこうすることしか…ッ…思い付かなかった…」
父の体が神々しい光に包まれ、別の何かへ変化していく。
「愚か者が…。」
ベリアルは眉に皺を寄せ、サトゥルヌスに下がるよう手で合図をする。やがてその光が収まっていき、現れたその姿はもはや人間ではなかった。神…その一言で済んでしまうほどの躍動感…。
「…オーディン…?」
父さんは…どうなったの…?
オーディンは剣に静かに近付くと頬を片手で包んだ。
「剣様…。お父様は私に自らの体を捧げました…。」
別の人物となった父さんは胸に手を当て一礼をする。
「捧げた…?」
「はい…お父様は神である私に心臓を捧げたのです…。」
「死んだのですよ。貴方の父親は。」
ベリアルが冷たく剣に言い放つ。
父さんが…死んだ…?
「…人間はこれだから嫌なのです。だから私は人間を辞め、悪魔に魂を売った。お前の父親は…人間の心を捨てる事が出来なかった…。だから何と言うのです。神になり損ない、力もろくに扱えない人間風情に何が…。」
ベリアルの口調が先程までの礼儀正しさを捨て冷酷なものに変わっていく。拳を握り締め歯を食いしばったその悪魔の姿は苦悩に満ちていた。
「黙りなさい。貴方には到底理解できない物がこの世には溢れているのですよ。」
オーディンはグングニルを力強く持つとベリアルに向けた。
「さぁ…覚悟を決めるのです…ベリアル。」
続く
どうでしたか?これからもちょくちょく番外編も投稿したいと思いますのではい!楽しみにまっていてくれていれば…(いるとありがたいです)次回もよろしくお願いいたします!