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次の日。

朝食がとっても美味しくて沢山食べた。

ナターシャの料理は、なんだろう、まったく普通なんだけどビックリするほど美味しい。


「ルミーア、貴女は食べ過ぎよ?」

「だって、美味しいんだもの」

「まぁ、そうだけど、…」

「なあに?」


頭を撫でられる。


「まるで子供だからね、心配になるのよ」

「あら、もう大人だわ!」

「そんな事を言ってる子は、子供よ」


そんなお小言を言いながら、姉様は帰り仕度をしてる。

あんまり遅いとラッザリオさんが心配するからね。


「そろそろ行くわ」

「うん、姉様。私の事は心配要らないからね?」

「ルミーア?」

「なに?」


姉様は何故か苦笑いをした。

私の返事、そんなに変だったのかしら?


「ううん、これ以上は言わないわ。けどね、私が貴女の姉であることは変わらないから」

「なに?何か変よ?姉様は私の姉様じゃない?」

「そう、だからいつでも会いに来ていいのよ?」


姉様は優しい。


「うん、そうする」

「ええ。じゃ、元気でね?」

「うん」


そう言い残して姉様はラッザリオさんの元に帰って行った。

少しは安心してくれたみたいで良かった。




家族と離れた生活が始まる。

新鮮でもあるけど、少しの不安もある。


私はナターシャさんと話して時間を過ごしている。

ナターシャさんの入れるお茶も美味しい。


「こちらの25寮には4名の方が住まわれます」

「4名ね?」

「はい、1名は3年のミリタス・クレメリー様。後3名はルミーア様を含めて新入生となります」

「みんなと仲良くできるといいなぁ」

「そうですね。けれど大丈夫ですわ、ミリタス様は素敵な方ですから」

「ミリタス…、3年生の方ね?」


ケンフリットは3年まで。

だから3年生は最上級なんだ。

シャルも3年生、私はギリギリで間に合った。


「そうです」

「ご挨拶した方がいいのかしら?」

「ここでお会いになった時で大丈夫です」

「そう?教えていただいて助かるわ。ありがとう、ナターシャさん」


で、だ。

後の2人にはいつ会えるんだろう?

もう直ぐお昼になるのに。


「残りの2人方は?」

「お2人とも本日お見えになります」

「どんな方なんだろうね。楽しみなの」

「もう直ぐお着きになられますよ。それでは私は失礼致します」


ナターシャさんはお昼の用意に行ったみたい。

今日はきっと忙しいんだろう。


カップを手にして立ち上がって窓の外を見た。

緑が多いからホッとする。

これが、姉様が言ってた作られた環境なんだろうね。

気持ちがノンビリしちゃう。

何か忘れてる気がするけど、きっと気のせいだわ。

うん、気のせい。


窓の外を良く見ると、所々にこの寮みたいな建物がある。

私達の寮は貴族の令嬢が住まいするには標準的な仕様らしい。

1階には共有スペースである居間、食堂、バスルーム等。

2階はそれぞれの個室になる。

そして、必ずナターシャさんのような人が在住しているそうだ。

寮費もネルソンがいる寮とは全然違うみたい。


ナターシャさんは専属で私達の世話をしてくれる。

彼女の部屋が何処にあるのかを聞いたら、なんと、こことは別にハウスキーパーの為の寮が近くにあるんだそう。

そこから通いなんだって。


なんだろう、新しいことばかりが始まる。




私はまだ窓の外を見てる。

奥の方を見ると、豪華な建物が見える。

ここよりも奥に行くと建物が変わるらしい。

私達なんかよりお金持ちの人達の寮になるそう。

ここみたいにシェアしないで1人で住むんだって。

大きくて広いのに1人で住むんだ、けどそれって、楽しいのかな?

確かに勉強しにケンフリットに来たんだから効率よく勉強できる方がいいんだろうけど…。


とにかくだ。

ケンフリットは授業は平等に学べるけど寮は格差がデカイ。

私の寮の上のクラスの寮費は、幾らなんだろう?

気にしても仕方ないんだけどね。


そして、その1ランク上の寮の奥の奥に、この国の王子の寮という名の屋敷があるんだって。

王子様だ。

そりゃそうだ、この国のたった1人の王子様なんだもの。

豪華な暮らしをするに決まってる。

屋敷だよ、凄いなぁ。

私達と格が違うんだ、住んでる世界が違うんだよね。



会っちゃいたいよ。



けどね、「近づかないほうがいいですよ」と言われた。

警備の人たちに尋問されるかも知れないって…。

やっぱり、違うんだなぁ。

行っちゃいけないんだよね、間違いなく。



急に居間のドアが開いた。


「ここは居間でしょうか?」


誰かが来た。

大柄な人だ。

きっと同居する人に違いない。


「あ、初めまして」

「こんにちわ!」

「貴女もこの寮に住むのですか?」

「あ、はい」

「私も同じです」


その子は真っ赤な髪に青い瞳をしている。

私よりも大きくてシッカリした体つきだ。

肌は日に焼けているから褐色。

何かスポーツでもしてるんだろうな、きっと。


「私はラルディア・ヴェルネッラ、よろしくお願いします」


差し出された手は女性にしては大きい。

私はその手を掴んで握手した。


「ルミーア・ランファイネルです。こちらこそお願いします」

「ルミーア?いい名前です。私は荷物を片付けてきますので、また後で」


ラルディアさんは大きいバックを軽々と持ち上げ階段に向おうとしてる。

あれ?荷物はどこ?


「あの、荷物は?」

「え?これだけですよ?」


ボストンバックが2個だけ…。

私なんか馬車1台分あったのに、ううん、それでも収まりきらなくて諦めたものも沢山あったんだよ。


「少なくないの?」

「これで充分です。それでは」


ラルディアさんは階段を駆け上がる。

は、早い…。

ズンズン上がっていく。


「あ、お待ち下さい!」


とナターシャさんが追いかけていった。


「お止まりになって下さい!あの、」


賑やかになった。

人が増えると楽しそうでいいよね?


私はしばらく居間で本を読んでいた。

入学式までは後3日、それまではノンビリできる。

急に階段の上の方が賑やかになる。


「ですから、お食事の予定は前日までに」

「わかります。けど、その日に変わることもあるんですよ?」

「こちらにも準備があります、お願いします」

「努力はしますが、」


何か揉めてる…。

食事の連絡についてみたい、けど、習慣の違いなんだろうな。


またドアが開く。

新たな住人がやってきた。


「すみません。マドレーヌ・オルタンスと申しますが、25寮はこちらでしょうか?」


鍵を開けて入ってきたんだから間違いないと思うけど…。

ナターシャさんが慌てて飛んできた。


「マドレーヌ様、お待ちしておりました」

「荷物を運び入れますわ」

「どうぞ、こちらになります」


彼女は外に向って声を掛けた。


「こちらへ」


居間へのドアが大きく開かれて5人程の男性が荷物を運び込む。

す、凄い量だ。

すっかり寛いだ感じのラルディアさんが私に話し掛ける。


「お祭りでも始まるのですか?」

「ラルディアさん、新しい方がいらしたみたい」

「そうでしたか…」


戻って来たマドレーヌさんは閉じた日傘を手して、私達に微笑んだ。

私と同じ金髪、けど瞳は濃い緑だ。

着ている服はピンク色のワンピース、フリルが一杯。

きっと誂えたものに違いない。

サイズがピッタリなんですものね。


ラルディアさんはとてもカジュアルな服装をしているから、えらく対象的だわ。

思わず見詰めていた私達に気付いて、微笑んでくれる。

綺麗な人だ。


「皆様、初めまして。マドレーヌ・オルタンスと申しますの」

「初めまして、ルミーア・ランファイネルです」

「ラルディア・ヴェルネッラです、よろしくお願いします」


私達は全然タイプが違う。

なんだか凄い。



けど、気が合いそう。

それはお互いに分かってしまった。




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