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シャルが隣で寝ている。


まだ見飽きない。

見てるだけで嬉しいから、飽きない。





一緒に暮らしだしてからもう2週間が過ぎた。



唐突にシャルが言い出したことだけど、皆が賛成してくれた。

お婆様もだ。

城では陛下が待って下さっていた。

ありがたくって、もったいなくて…。

だから、私は全力でシャルを支えるって誓った。

お母様からの手紙には、それでいいのよ、って返事があった。


だから、起こることを受け入れてシャルの隣で生きていこうって決めた。





「起きて?」


シャルの鼻を摘む。

息ができないようにしてみる。


「ああ、」


苦しそうな顔して目を開ける。


「意地悪だな?」

「だって、起きないんだもの」

「起きてた」

「そう?」

「ミアの寝顔を見てたら、また眠たくなってしまったんだ」

「もう」


今度の休息日にエドマイア先輩とミリタス先輩の結婚式が行われる。

その為のドレスが出来上がったとバキャリーから連絡があったから私は今日最後の衣装合わせに出掛ける事にしてる。


初夏の爽やかな日差しが窓から差し込む。

空気まで爽やかな気分になるくらい。


「今日は衣装合わせだから早く起きて支度しないと」

「そうだったな」


私達はキスを交わしてベットから離れる。

シャルはお仕事があるので一緒には行かない。

だから念押しが長くなる。


「バキャリーでの用事が済んだら直ぐに戻って来るんだぞ?」

「それは無理よ」

「どうしてさ」

「ケイト姉様の店に寄らないと、でしょ?」


何故なら、私とシャルからのお祝いを姉様の店で誂えたから。


「そうだったな、でもだぞ?」


仕方ないって顔をしたけど、まぁ、とにかく早く戻れってこと。


「分かってるわ」

「なら、いい」


一緒に朝食を食べてたら、エドマイア先輩が現われた。


「そろそろお出まし下さい」

「うん、もう少し…」

「切りがありませんね」

「分かってるんだがな…」

「お分かりなら、さぁ」

「あ、ああ」


エドマイア先輩はシャルを引き摺る様に仕事へと連れてった。

その姿がなんだかヴァンみたいだって思って笑っちゃった。

段々とシャルの扱いが似てくるみたいだもの。


私達って、傍から見てると痛いカップルなのかな?って思っちゃう。

まぁ、…、間違いないから気にしないでおこう。







そうそう、ヴァンはここ暫くは違う仕事をしてるの。

ルリと一緒にオルタンス家に行ってるんだ。

この行動は全て成り行きなんだとヴァンが力説してくれた。


全ては私が城に入ることが原因だってね。


まず、私が城に入るにあたってはヴァンが厳しい顔をしたんだ。

私が王都に行くとなるとルリのお菓子を食べる機会が減るからだって。

そこは私も同じ懸念だったんだけど、シャルの忠告に従うことにしたの。

だって、絶対にヴァンは解決するから。


シャルの話を聞いたヴァンは即答で「ルリの件は早急に手を打ちます」との返事した。


そうは言ったものの、ルリを城に連れて行くのは無理な話。

まず、ルリとマリを離してしまうのは可哀想でしょ?

ただでさえ私と一緒にタリが城に入ってしまい、お婆様の屋敷には月に2,3度戻るくらいになってしまう。

だからルリとマリは一緒に暮らさせてあげたかった。

それに、アンディが反対した。

お菓子の事もあったけど、修行が中途半端になるのは本人の為にならないって。

本当にその通りだと思う。



そこでヴァンは相当考えたみたい。

数日後、ヴァンはいつものヴァンに戻っていた。

涼しい顔で初めて会う男の子達を連れてきた。


「人を雇いました」

「人?」

「はい、私も体が1つしかないので動いてくれる人間が必要になりましたから」


そう言って紹介されたのはマルメロとボッカだ。


「お、お初にお目にかかります」

「よろしくお願いしまし、します!」


マルメロは赤茶の髪を一つに束ねて可愛い笑顔で笑う。

ボッカはヤンチャそうな顔してる。


「こちらこそね?」


彼等がお婆様の屋敷と城との連絡係になってくれることになった。

「これで当分の分は確保出来ます」と言うヴァンの顔が本当にホッとしてた。


ルリのお菓子は城でも食べられることになって予想外の方向へと向った。


それはルリのお菓子のファンが増えてしまったってこと。

例えば婚礼の報告に現われたエドマイア先輩とミリタス先輩達が、城で食べたプリンの味に感動してこれを自分達の披露パーティに出したいと言い出した。

驚いた私は「でも私の一存では決められないの…」と言葉を濁したんだけど、ミリタス先輩に押し切られてしまったのですのよ。

「ルミーア様、この様に素晴らしい作品を私達の婚礼の際に振舞う事ができたら、それはとても光栄なことになりますわ」と、とっても優雅な圧力で。

けど、私に呼び出されたヴァンは意外に乗り気で直ぐにアンディに話を通してしまったから驚いた。

そしてアンディはだいぶ渋ったけど、ヴァンの説得で1品だけってことで話は落ち着いたんだ。

そこからがアンディの凄いところなんだけど、当日までオルタンス家の調理場での手伝いを許してくれた。

普通は自分の弟子を簡単に他の調理場にやらないんだけど、元々アンディと知り合いの方が調理長だったらしくて話が纏まったらしい。

それで、最近ではヴァンはルリと一緒にオルタンス家で頻繁に打ち合わせをしてる。



ヴァンの仕事って、私のサポートがメインの筈なんだけどね。

ルリのお菓子ってことで大目に見てます。

ええ、もの凄く寛大な私です。



だけど、少しのわだかまりは持ってる。

それは当然のこと。

だって、私はマドレーヌ聞かれたのにルリの存在を誤魔化したんだよ?

マドレーヌに隠した私の苦労はなに?

彼女は、なんだろう、意固地になったみたいに聞いてきたけど誤魔化してしまったんだ。

もし私達の友情にヒビが入ったらどうしてくれるつもりなんだろうか?



なので一度、文句を言ってみた。


「ねぇ、どうしてルリがオルタンスの屋敷に出向くの?」

「それはご説明いたしました筈ですが?」

「分かってはいるんだけど、でも、私はルリの事を3人の約束があるからマドレーヌには言わなかったのに、いつの間にかよ?ヴァンたらルリと一緒にオルタンスの厨房に行く事になってるから」

「成り行きですから。ミリタス様のご意向には逆らえません」

「まぁ、それは分かるから、しかたないんだけど、でもね、納得できないわ」

「いいではないですか。ルリの将来を考えれば今回はいい機会だと思うのですよ?」

「まぁ、そうかもしれないけど。でも、この事は広めないで3人の秘密にするって言ったじゃない?」

「それはルミーア様がエリザベス様のお屋敷に御住まいであるときのこと。城に移られたのですから状況が変わりますよ?」


ヴァンはいつも強気だ。


「なんだか、言いくるめられてる気がする…。じゃ、私もマドレーヌに本当の事言ってもいいのね?」

「い、いいです。何も悪いことをしてる訳じゃありませんから」

「なんか変…」

「勘ぐるのは止めましょう。それよりもルリが新作を作ると言っておりました。ルミーア様に送るように手配しておきます」

「…、お願い」


私から文句が出ないようにと、直ぐにルリのお菓子の詰め合わせが届いた。

さすが、だわ。





けど、あの日のヴァンの饒舌ぶりは変だった。

饒舌はヴァンの得意なところだけど、何かが違う気がした。





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