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韓半島独立篇 前編 第9章 第1次韓中国境武力衝突事件の終息

 みなさん、おはようございます、こんにちは、こんばんは、お疲れさまです。

 AH-6J[リトルバード]による、12.7ミリ連装機関銃GAU-19の第1次機銃掃射の戦果を確認していた新世界(ニューワルド)連合軍連合陸軍情報コマンド第2グループ・チーム・E(エコー)第2分隊長であるメリッサ・ケッツアーヘル少尉は、部下3人と共にMH-6Jに機乗していた。


 アメリカ陸軍のデジタル迷彩服であるUCP姿の彼女は、情報コマンド第2グループのアメリカ陸軍部隊に配備されているMK17(SCAR-H)に装着しているドットサイトを覗いていた。


 MK17は、7.62ミリNATO共通弾を使用するが、メリッサが所属する第2グループでは、6.8ミリ新ライフル弾仕様に部品を交換している。


 ニューワールド連合軍連合陸軍情報コマンド第2グループは、一般的な情報部隊では無く、実戦部隊である。


 連合陸軍情報コマンドは、傘下に第1グループ(情報管理、各情報グループの支援、情報分析等のデスクワークが主)、第2グループ(戦闘部門、武力による情報収集等)、第3グループ(人的情報収集)、第4グループ(電子機器による情報収集)、第5グループ(情報保全)である。


 メリッサが所属する第2グループは、主に第3グループと第4グループのノウハウも求められるが、特殊戦闘作戦と通常戦闘作戦能力も必須である。


 主に特殊部隊訓練修了者たちが所属し、グリーンベレー帽を被る資格を有する兵士しか所属できない。


「エコー・02・リーダーより、エコー・リーダーへ、[リトルバード]の機銃掃射により、敵勢力無力化。降下戦闘の必要なし」


 メリッサは、無線機でエコー・リーダーである大尉に連絡した。


「エコー・02・リーダー、了解した。周辺空域は連合空軍戦略偵察局の無人偵察機に周辺の警戒監視行動を引継ぎ、我々は帰投する」


「こちら、エコー・02・リーダー。了解」


 メリッサは、指揮官との通信を終えると、手話で帰投する指示を出した。


 MH-6Jは、そのまま帰投するコースに移動して出撃待機ポイント(前線作戦ポイント)に帰投した。


「リーダー。どうですか?デルタの訓練プログラムを終了してから、新しく配属された部隊の感想は?」


 彼女が指揮する分隊で、分隊長付下士官である1等軍曹が陽気に質問する。


「前にいた隊と、変わらないわ」


 メリッサが、短く答える。


「第75レンジャー連隊第1大隊第1中隊所属の小隊長で、初陣はアフリカの紛争地域の中でも最大規模の激戦地でしたね」


 衛生担当の2等軍曹がつぶやく。


「戦場であれば、どこも同じじゃないの?貴方は、アフガンで経験したでしょう?」


 メリッサが、1等軍曹に問いかける。


「それもそうですが、自分がリーダーと同じ歳の時は、戦場と言ってもグリーン・ゾーンの検問部隊勤務でした。しかし、貴女はいきなりレッド・ゾーンどころか、ブラック・ゾーンの小隊長勤務ですよ」


「それは関係ないわ。グリーン・ゾーンの検問部隊も、ブラック・ゾーンの戦闘部隊も死ぬ時は死ぬ」


 22歳の女性が言う台詞とは思えない言葉に、1等軍曹は苦笑した。


 16歳で一流私立高校を卒業後、陸軍士官学校幼年学部に入校し、4年間の下級将校課程と一般大学学部を終了し、20歳で陸軍少尉を拝命する。


 幼年学部での戦闘成績は極めて優秀であり、卒業後陸軍レンジャー学校に入校し、女子レンジャー課程を修了し、レンジャー徽章を身に付ける。


 そこから、アフリカの紛争地域やメキシコの麻薬戦争に従軍し、有能な戦果を納める。


 それが、メリッサ・ケッツァーヘル少尉の軍歴である。





「こちら榴璃軍空軍作戦司令部、榴璃軍司令官からの命令を伝える。国境線を突破した新たなる中国共産党軍勢力に対し、空爆を命令する」


 榴璃軍空軍作戦司令部からの命令を聞いた、Su-25Kのパイロットは、命令を復唱した。


「了解。これより攻撃する」


 パイロットは操縦桿を倒し、機を爆撃コースに移動させる。


 左右の主翼下に搭載されている、500キロの無誘導爆弾を投下するための準備を行った。


「爆撃目標に到達。爆弾投下!」


 パイロットは、爆弾投下のボタンを押す。


 主翼下から、次々と爆弾を切り離す。


 中国領から韓半島の領内に侵入した途端、共産党軍の頭上から、500キロ爆弾の雨が降り注いだ。


 すさまじい爆発が連続で発生し、中国軍お得意の人海戦術のために固まって大部隊で行動していたため、その爆撃をまともに受ける事になった。





 地上では、榴璃軍空軍からの爆撃を確認した、朱蒙軍陸軍第2軍第2歩兵師団第3歩兵連隊の、M113装甲兵員輸送車で編成された1個歩兵中隊は下車し、K2自動小銃やK3軽機関銃を構えて、伏せ撃ちか膝撃ちの射撃態勢をとった。


「敵が引いたら、射撃はするな!あくまでも攻勢に出た場合だけだぞ!」


 中隊長の少領が、M113の車長席から身体を出して叫ぶ。


 少領は、主武装である12.7ミリ重機関銃のレバーを2回引いて、射撃準備を行う。


 投下された爆弾による炸裂で地面が吹き飛び、煙が発生しているが、それが晴れだした。


 再度、国境に進攻を試みた共産党軍は、圧倒的過ぎる砲爆撃と、火力が断然に異なる朱蒙軍陸軍や榴璃軍陸軍の歩兵部隊の携行火器に恐れをなし、敗走を開始した。


「どうやら引くようですね」


 中隊副長が、つぶやく。


「連隊本部からの命令に従い。防御陣地を構築、監視兵は常に敵の突撃に備えて3時間交代で監視活動をせよ!」


 中隊長の命令で、一部の部隊のみを警戒配置のまま、他の部隊は防御線の構築を行った。





 中国共産党軍司令部でも、ようやく事態を把握し、全軍に指揮系統と通信系統を回復させて、デマ等で勝手な命令が飛び交わないよう、司令部の命令を撤退させた。


 韓半島に攻勢をかけた共産党軍傘下の部隊には、党軍司令部の命令を通信と伝令を送り、軍事行動停止命令を発令した。


 党首脳部は、すぐに大韓市国政府に停戦交渉を、大日本帝国経由で持ちかけた。


 中国共産党としては、党内の秩序が崩れだしただけでは無く、国民党とこれからどのように付き合うか、議論しなくてはならず、満州で発見された大量の油田は、どちらに利権があるか、また、原油等の資源輸出交渉からその利権について大日本帝国とどちらかするべきか、それらの対応に頭を抱えているため、このような状況下でそれらをおじゃんにする余裕はまったくない。


 韓半島を統治している大韓市国に、極めて強力な軍隊が存在している事が未確認ながら把握された(党司令部は、党命令を逸脱した敗残兵からの報告を、ほとんど信じなかった)以上は、無闇に軍事的挑発をするのは危険と判断した。





 早朝に発生した、中国共産党軍(党軍首脳部から逸脱した勢力)による韓半島への軍事的侵攻は、単なる国境での武力衝突として終わった。


 これが、後に建国される大韓共和国での混乱の序曲である事は、誰にも予想できなかった。





 大韓共和国建国前に発生した、大韓市国軍と中国共産党軍造反勢力との間で衝突した国境線での武力衝突は、第1次韓中国境武力事件と名づけられた(第1次という事は、その名が意味する通り、1回だけではすまなかった)。


「やれやれ、大事にならなくて、本当に良かったよ」


 避難民を指定された避難所まで警護した米井は、携帯水筒を持って水を飲もうとした。


「あれ?」


 しかし、水筒の中には水が無い。


(あ、そうだった)


 米井は、避難民を乗せた輸送部隊を護衛している間、避難民の休憩時間の時に、幼い子供や母親たちのために、自分が飲む水をその避難民たちに与えた(主に温かいお茶や紅茶等のために水をポットに淹れたのだ)。


「また、後先の事を考えないから、こうなる、と言われるな・・・」


 米井は、88式鉄帽を脱いで、後頭部を搔いた。


「仕方無い。補給部隊から届いた飲料水を給水するか・・・」


 米井がつぶやき、各地から避難してきた避難民たちを見回す。


 韓半島に派遣された自衛隊と、統合省監督下の民間団体から派遣された、避難民支援団体が、暖かい食事を配給している。


「へぇ~、焼きうどんに、焼きそば・・・おまけに、カレーうどんまである」


 麺類ばかりで、あまりお腹の足しにならないが、それでも出来たての暖かい食事が提供されられるのだから、避難民たちの表情は、柔らかくなっている。


 絶望的状況下だからこそ、苦しむ市民の笑顔はとても大事である、米井が学生時代に読んだ歴代の大統領の名台詞を思い出した。


(そう言えば・・・アメリカ独立戦争時も、イギリス軍からの攻勢で敗北可能性が出た時、ワシントン大統領は祭りを開催した。それにリンカーン大統領も、南北戦争時にアメリカ連合軍の攻勢で勝利は絶望的状況下の時に祭りを開催した)


 米井は、そんな事を思い出した。


 確かにアメリカやヨーロッパ等では、絶望的状況下に置かれた場合、今まで以上に大規模な祭りを開催した。


 その度に、絶望的災厄を乗り越えてきた。


 最悪の状況下だからこそ、楽しい行事はとても意味がある、これも歴代のアメリカ大統領の言葉だ。


 米井は、避難民たちの顔を見てそう思った。


「やっぱり、アメリカは怖い国だな。人間の精神を、1から10までを知り尽くしているのだから・・・」


 米井は、つぶやく。


「小隊長。ここにおられましたか?」


 小隊陸曹が、米井に声をかける。


「どうしたの?」


「差し入れです」


 小隊陸曹が、アルミ製のコップを渡した。


「スープ?」


「ええ。何でも身体が温まり、疲れも癒やせるとか」


 米井が、コップの中に淹れられているスープを眺めていると、小隊陸曹が捕捉した。


「そうか、いただこう」


 米井はそうつぶやき、一口飲む。


「小隊長。警邏隊長から、帰投後は報告書の受刑者になるから覚悟するように、との事です」


 小隊陸曹の言葉に、米井は「げっ!」と叫んだ。


「あ~あ、空は青いな・・・」


「小隊長。空は、灰色です」


 現実逃避している上官を、小隊陸曹は無理やり現実世界に引き戻す。


 再び、空から雪が降り出した。


「たまには、書類整理から解放されたい」


 米井は、つぶやく。


 幹部自衛官である以上、ほとんど書類作成に時間をとられるのは仕方の無い事だ。


 戦闘部隊の指揮官だからと言って、訓練や部隊の練度向上に時間を費やしているだけでは無い。


 それは単なる1つの公務であり、そこから、書類作成の公務がある。





 ソウル市近辺にある飛行場に、大日本帝国に拠点を置く、統合省防衛局自衛隊破軍集団航空自衛隊第2特別航空輸送隊に所属するOD色に塗装されたCH-46E[シーナイト]が着陸した。


 統合省防衛局自衛隊は、3つ指揮系統で編成された陸海空自衛隊の統合運用部隊が編成されている。


 最も人員や装備が多いのが菊水総隊、その次が破軍集団、そして防衛局長官直轄部隊である。


 3つの統合運用部隊の航空自衛隊には、3つの特別航空輸送隊が存在し、防衛局長官直轄部隊航空自衛隊が、第1特別航空輸送隊(任務は統合大臣、副大臣及び各庁局長官や副長官の輸送や防衛局統合幕僚本部に所属する幕僚自衛官の輸送も担当する)、破軍集団航空自衛隊第2特別航空輸送隊(破軍集団統合運用司令官や幕僚クラスの空輸を担当する)、菊水総隊航空自衛隊第3特別航空輸送隊(破軍集団と任務は同じ)である。


 それぞれの3個特別航空輸送隊は、塗装で所属部隊が判別できるようにしている。


 第1特空隊は、白色で塗装されている。


 第2特空隊は、OD色で塗装されている。


 第3特空隊は、迷彩塗装である。


 CH-46Eが着陸すると、機内から濃い緑色の制服姿である破軍集団司令官付高級副官兼特別監察監の石垣達彦1等陸佐が姿を現した。


 出迎えに来ていた姜が、声をかける。


「弟さんが、大日本帝国軍部で人望を獲得したそうじゃないか。聯合艦隊司令長官である山本五十六(やまもといそろく)中将から、かなり気に入られているようだな」


 姜は、三義兄弟とも言える同志の1人である石垣の弟を褒めた。


「丸め込まれた。の、間違いだろう」


 石垣は、短く答えた。


 姜は、韓国陸軍准將ではあるが、石垣は1等陸佐1等に区分されるため、准将に相当する。


「ソウル市の治安は維持されているが、安全とは言えない。ソウル市を散策する時は俺に声をかけてくれ」


 姜の言葉に、石垣は承諾する。


「わかった。俺としては断りたかったが、防衛局のお偉方は俺に身辺警護のために警務官を寄越した」


 石垣は、背後に控えている白色塗装された66式鉄帽を被った、警務腕章をつけた統合省防衛局長官直轄部隊統合警務隊陸上自衛隊警務隊の警務官2人が姿勢を正し、挙手の敬礼をした。


「防衛局長官直轄部隊統合警務隊陸上自衛隊警務隊保安警務隊身辺警護隊の本多(ほんだ)(あい)()3等陸尉です」


()須木(すき)(けん)2等陸曹です」


 2人の警務官は、韓国語で名乗った。


 姜は、答礼した。


「准將。ニューワールド連合軍連合支援軍から派遣される、上級士官がまもなく到着します」


「そうか。この時代にタイムスリップしてから、俺たち3人が初めて顔を合わせるな」


 副官からの報告に、姜がつぶやいた。


 石垣が到着してから数10分後に、H225が着陸した。


 濃い緑色の中華人民共和国(元)人民解放軍陸軍の制服を着た、背の高い男が地面に足を付けた。


「久しぶりだな、劉炎(リュウイェン)(フゥイ)大校(准将)」


「ああ、久しぶりだ」


 韓国語で声をかける姜に、劉は素っ気ない中国語で答える。


 3人とも、日本語、中国語、韓国語は堪能であるから特に問題は無い。


 ただし、それぞれの母国語で会話をされると、当人たちはともかく、周囲にいる者は奇異な感じを受けるだろう。


「間を取って、ロシア語で会話するか?」


 冗談交じりの姜の提案に、石垣と劉は屈託のない微笑を浮かべた。

 韓半島独立篇前篇 第9章をお読みいただきありがとうございます。

 誤字脱字があったとご了承ください。

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